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ジョナサン・キャロル『月の骨』
2024/03/05
【ネタバレを含む感想です】
むかし読んでよく分かんなかった本を読み直そうシリーズ。
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ジョナサン・キャロル『月の骨』を読んだ。
以前読んだのはいつだったかも覚えていない。書評やあらすじなどを読むと絶対に面白そうだし、自分の趣味にも合ってるはずなのに、何冊か読んでみてどれもピンとこなかったジョナサン・キャロル。
先日シャーリイ・ジャクスン『ずっとお城で暮らしてる』を読んだ時、巻末の広告にキャロル作品が載っているのを見て、また読み直してみたくなった。
再読してみて、前回は捉えられなかった本書の魅力も、以前の自分には読み取れなかった理由もわかった。前半、かなりのページ数を使って、語り手であるカレンと夫ダニーのなれそめが語られる。ここで物語の重要な要素になる体験や、ロンデュアの世界と対比される現実の世界の幸福な日常が、じっくりと丹念に描かれるのだが、かつての自分は物語の筋を追うことばかり求めていて、各キャラクターの人間性などは読み飛ばしていてしまったのだろう。それこそペーターの自分本位で忙しないセックスのように。
改めて読んでみると、ゲイの親友・エリオットの存在など、40年近くも前に書かれたとは思えないほど、現代的な感覚、価値観で描かれていることに驚かされる。
正直、ロンデュアを舞台にしたファンタジーパートはあまり好みに合わなかったけれど、終盤で押し寄せる不穏な展開と、平穏な日常を塗りつぶすようなホラー描写の連続はかなり引き込まれた。
全体の9割くらいを読むまで、あらすじを完全に忘れていたので、ほぼ初読のような感覚で読めた。特にラスト、ちょっと作為的に感じて手放しで誉められないところもあるものの、じゅうぶん面白く読めた。
そういえば、大好きな映画『パンズ・ラビリンス』とストーリー構造の一部が似通っているように感じた。ダーク・ファンタジーと相性の良いテーマなのかもしれない。
次は『死者の書』『我らが影の声』あたりも読み直してみよう。