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「なぁ」
「なんでしょか」
「お前って門限とかある?」
「門限? いや、特に。心配されないうちに帰ればいい」
「だよな〜」
「なに、門限生まれたの?」
「生まれそう」
「それはまた……なんでや」
「弟が最近遊びから帰ってくるの遅くなってきて、親父がそれ心配しててさ」
「あー、それであれだ、弟だけじゃ示しつかないからってことか」
「理解がはや〜い。ま、なんか昨日そんな感じの話出てたから気を付けろよって弟に話したんだけどさ」
「はい」
「楽しくてつい、の一点張りなんだよね。スマホ手に入れて遊びの幅広がってんだわ」
「あ〜、中学生は楽しくなっちゃうよな」
「まぁ俺らも高校生だから楽しくあるべきだとは思うんだけど。分別つかなくなってマジで門限生まれる前にどうにかしたいんだよね」
「それはあれでしょ、物で釣る作戦」
「して、その物とは?」
「んー、それはあれよ。弟が欲しい物とか」
「おーい詳細決まってないのかい。ていうか毎度それでやってたら俺の財布がもたないわ」
「んー、遊び盛りを安全な時間に帰らせる策ねぇ」
「まぁ別に俺そんなに遊び歩いたりしないし門限ぐらいはどうでもいいんだけど、いざ生まれるとなると防ぎたい気持ちがあるわけで」
「じゃあさ、めちゃめちゃリアルな不審者情報を流すとかは?」
「なにそれ、その思考に至る時点でお前のことが怖いんだけど」
「引かんといて。例えばさ、6時とか暗くなってきた頃に男子中学生に話しかけてくる男が最近よくいるとか」
「こわ。こっわ」
「リアル感たっぷりに伝えれば少なくとも6時より前に帰るようになるんじゃないの」
「お前まさか……」
「だぁれが6時ごろに男子中学生に話しかける男だよ」
「ですよね〜お前ずっと彼女いないし」
「うんうん俺が話しかけるのは女子中学生……ってバカ!」
「センシティブなノリツッコミだな、多分数人に聞かれてる」
「穴があったら住みたい気持ちです。聞き流してくれ」