見出し画像

Review#18:Handcrafted Card Magic volume 3 (Denis Behr)

Conjuring Archive設立ニキことベアニキの(一部ネットの手品民が勝手に呼んでいる)愛称でおなじみ、Denis Behrの著作、Handcrafted Card Magicの3巻です。なんとこの本が日本語で読めるようになりました。

ベアニキの本、というだけで買って間違いないわけですが、いやはや、すげぇ本でした。読んでて「賢いな」と何度も思わされます。

個別の現象については、訳者さんのブログをご覧ください。

どうやら今回は印刷部数が他の訳本より少ないとのことで、お早めに手に入れたほうがよいかと。

今回発売されたものが第3巻ということで、1~2巻も出ているわけですが、それらと比較するとより実戦的な作品という印象を受けました。センターディールのデモンストレーションとか、混ぜられたデックでのACAANなどのように、習作の印象を受ける作品が1・2巻には多かったのも事実。いやまぁ実戦的といっても、おいそれと演じられるようなものではないんですが。

この本のここが良い!&良くない!

良いところが多すぎるので、良くないところを先に書きますと、解説がまぁまぁ淡白です。創作のプロセスや作品の進化プロセス、演技の意図みたいなところはそこまで詳細に語られません。(当然ながらクレジットは充実)
個人的にはPhotographic Memoryとか、どうしてこの現象に落ち着き、このようなプレゼンテーションになったのか?みたいな部分は気になるところではあります。でもまぁ、これくらいです。普通に解説される分には十二分に書いてくれています。

さて、良いところをいくつか厳選してみると以下の2つですかね。

スタック変換Tipsがヤバい

複数のトリックにおいて、固有のスタックを用いるのですが、タマリッツスタックからの変換についてのコメントがあります。「え、これタマリッツスタックから変換できるの?」と思ったら超カンタンに変換できる説明になっていて、読みながら手元でいじってたら本当に変換できたのでビビリました。いかに自分がタマリッツスタックの特性を理解していないか、ということと、Denis Behrの賢さとが同時に押し寄せてきて鳥肌が経ちました。

トリック構造と追えなくなるディテールの詰めっぷりがヤバい

特にMating Seasonという作品の解説を読んでて鳥肌が立ったのですが「これスタックなんじゃ?」と観客が思いそうなタイミングとかでしっかりバラバラであることが示せたり、重めのスライトやらないといけないところはカバーが十分に効いていたり、と、トリックの構造がよく考えられていると共に詳細まで詰まっていて、作品としての質が高すぎます。
勿論、不可能性をあげていくような作品構成にもなっていて、それもすごい。
果たして自分のよく演じる作品がここまで練られているだろうか、と自問自答したくなります。

忙しいあなたのためにおすすめPickup

買ったけど積んでるアナタ。薄めだし全作品おすすめなのでさっさと読んでしまいなさい、と言いたいところですが、そんな時間もないアナタに私のおすすめ紹介します。

  • Routined Arith-Mate-ic:ヤバい。難易度の割に現象すごい。

  • Mating Season:ヤバい。トリックの構成に舌を巻く。

  • Onthe Bottomo Deal:確かにちょっとできるようになる(私はボトムディールできないので)

  • Photographic Memory::ヤバい。なんで成立するのか最初よくわからないし、しかもこれを実際に演じているベアニキの処理能力ヤバい。

とにかくDenis Behrの凄みと天才っぷりを見せつけられる本です。いやはや創作プロセスがとにかく知りたいですね。ホント、どういう発想で着手し、ここまで仕上げられるんだろうか、気になりすぎます。
どなたか、ぜひ彼を日本に呼んでください。

いいなと思ったら応援しよう!