【Genii 2023.11.】The Passion of Michael Vincent: Genii 2023 Nov.を読んで
世界最大規模のマジック雑誌Genii Magazineの11月号の感想です。私は電子版を購読していますが、これまでパラパラめくり続けていたのがもったいないくらい、毎回素晴らしい記事が続いています。特にやはり表紙を飾るメインの特集記事の読み応え、内容が素晴らしい。今月号はイギリスのマジシャン、マイケル・ヴィンセント(Michale Vincent)氏の特集でしたが、彼の人生を振り返りつつ、彼の作品の解説もあり、まさに雑誌ならではの読み物となっていました。
Podcastではより詳細な感想を話しています。
2023年9月号、10月号については過去のnoteやpodcastをお聞きください。
2023年11月号の内容は…
表紙は、イギリスのマジシャン、マイケル・ヴィンセント氏。特集記事は「The Passion of Michael Vincent」と題されています。
その他の注目記事には、日本のマジックメーカー「テンヨー」の2024年新製品紹介や、リチャード・カウフマン編集長の名著再販情報、Jon Racherbaumerによるカードトリックの解説、テキサスでのマジックセンター建設のニュースなどなど、盛りだくさんです。
ニューヨーク拠点のキッズマジシャン David KayeことSilly Billyのキッズショーに関するコラムでは、キッズショーを真摯にやる若いマジシャン減ってきてる!という危機感が述べられていました。そうなんですね~
David BritlandのThe Expert at the Card Table とAIに関するコラムです。面白い。
スペインのマジシャンRobert Mansillaの理論に関するコラム。
購読おすすめですよ
特集: "Passion of Michael Vincent"
ヴィンセント氏は、イギリス生まれで、人種差別やシングルマザーの家庭での生い立ちなどからはじまりますが、ロンドンのマジックショップの店主アラン・アランによりその才能を見出された、というストーリーから始まります。彼のクラシックマジックのスタイルは、アラン・アランにニューヨークに連れて行ってもらったことが大きな影響を与えていることを知りました。スライディーニ(Slydini)やデレック・ディングル(Derek Dingle)と出会ったそうです。スライディーニは4日間みっちりと。
彼の人生ストーリーの上では、黒人であることはやはり無視できないものでした。私はこの記事を読んで、マジックの世界におけるマイノリティについて考えるきっかけとなりました。
マジック界は成立した歴史から鑑みても、男性、特に白人男性が中心のカルチャーであるのは事実でしょう。ですが、昨今、女性はもちろん、ヴィンセント氏のような黒人マジシャン、アジア系マジシャンも世界で活躍(韓国や台湾が顕著)してきてはいるものの、マイノリティなのは事実だと思います。マイノリティのパフォーマーが持つユニークな視点や表現は、マジックの世界に新しい風を吹き込んでいくはずで、今後もより多様な担い手がマジックに関わってくれたら嬉しいですね。
ヴィンセント氏のYouTubeチャンネルでは彼のショー映像が公式にアップされています。彼の素敵なイギリス英語、紳士的でエレガントな演技を見たことがない方は是非見てみてください!
Robert Mansilla氏のコラムはとても良い!
今月の私のイチオシは、Robert Mansilla氏のコラムです。ここは、ページを開いただけで"The Magic of Ascanio vol.1"の表紙、Henning Nelmsの本の表紙、Tellerの"Shadows"の写真が掲載されていて、まずこの時点で期待値が上がります。
内容としては、Magical Impactとは何で定義されるのか?という議論です。Mansilla氏の結論は敢えてここでは提示しませんが、Ascanioの"Contrast"や"Magical Atmosphere"の概念をはじめとして、Tellerの演技などを参照しながら、議論を展開していきます。おすすめ。
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