介護事業所の4分の1に「10年後を担う中核人材」がいない現実。約80万人超のベテラン介護福祉士はどこへ?
今回はこの記事を見ていきます。
【記事の概要】
【10年後のリーダーがいない?】
この話を簡単にまとめると、「10年後のリーダーがいないかも😨」という話です。
そしてその理由として「募集しても介護人材が集まらない、ままならない」ことが挙げられており、切羽詰まった状況に陥っていることがうかがえます。
[日本の人口動態]
ここで日本の人口動態を見ると
・2020年以降になると高齢者人口は約3,600~3,800万人の間でほぼ横ばいで推移するが、総人口の減少が進むため、高齢比率は長期にわたって上昇を続ける。
・高齢化率は2024年に30.1%となる予測。
・生産年齢人口は2013年から2020年までには約50万人、更に2030年までは約100万人も減ると推計。
・合計特殊出生率は2024年の1.33に至るまで緩やかに低下し、その後もほぼ横ばいで推移されるとみられ、人口置換水準の2.07にはかなりのかい離がある。
といった状況となっており、「高齢者が相対的に増える一方で、生産年齢人口は減る一方」だと言えます😱
[優秀な人材(ベテラン介護福祉士)が施設にどれだけいるかを概算]
生産年齢人口が減少傾向にあるとは言え、優秀な人材が育っていないとは考えにくいです。
令和5年度の介護福祉士国家試験合格発表によれば、介護福祉士の合格者数は61,747人であり、合格率は82.8%と高水準となっています。
また受験者・合格者数の推移を見ても、一時のピークは過ぎても合格者数は年間6万人ほどを維持しています。
加えて2005年から2015年までの「一時のピーク」に介護福祉士となったおよそ80万の人々は『10年以上の介護歴があるベテラン』になっている可能性が高い訳です。
この人数と、介護施設数をざっくり照らし合わせてみても
「80万(10年以上の歴があるベテラン介護福祉士の概数)÷6万5千(おおよその介護施設数)≒12.3人(一施設あたりのベテラン介護福祉士数)」
となる訳ですが、このようなどんぶり勘定でも「そこそこ居そう」な気配はするわけです🤔
にも関わらず、実際の介護現場では全体の4分の1を超える27.0%が「10年後のリーダーとなる人材がいない」という調査結果になった訳です。
ここには、どのような理由が考えられるでしょうか?
【見えてくる介護人材不足の課題】
こうして「ざっくりとした数」が見えてくると「介護福祉士は『いるのにいない』」というナゾナゾのような現実が浮き彫りになります👀
そうなると、中核となる介護人材がいない理由としては
①介護福祉業界から別業界へと移った
②定年を迎えて現役から退いた
③歴の長い介護福祉士が施設長や施設経営者など「中核以上の立場」となった
④介護福祉士が一部の施設に偏っている
⑤介護福祉士にはなったが、資質向上の責務を果たしていない
といったものが予想されます。
[⑴介護福祉士としては働かなくなった?]
上の①〜③は「介護福祉士としては働かなくなった」状況です。
施設長や施設経営者、役員などになれば現場で中核を担う人材とは別軸の人材となりますし、それぞれの事情で介護福祉業界から離れていったのなら、介護人材が減少することも十分考えられます。
しかし、マイナビキャリアリサーチによれば2021年6月から2022年7月に転職した人について、前職の業界と現在の業界を比べたところ
「前職が医療・福祉・介護だった人は80.0%が同業界に転職していた」
とのことで、介護人材の他業種への流出が中核介護人材不足の大きな要因とは言い難い状況です。
それよりも転職を繰り返し「全体の介護歴は長いが『その施設』での歴は短い」ことで、中核を担う介護人材に「していない」施設の方が多いのではないか、と考えられます。
[②介護福祉士が一部の施設に偏っている?]
次に考えられるのが④の、介護福祉士の一極集中化です。
先のマイナビキャリアリサーチでは医療・介護・福祉業界の転職理由として
・仕事内容に不満があった
・給与が低かった
・職場の人間関係が悪かった
といった要因が多いと挙げられており、また転職時の応募要件としては
・アットホームな職場
・副業可能
・福利厚生が整っている
ことが転職に影響を及ぼしている、とのことです。
上記の条件を満たすとなると、大企業や法人などが候補に上がりやすいことが考えられます。
「安定した職場で働きたい」というニーズに応えられる資金力・組織力のあるところへ優秀な人材が集中し、そこからグラデーションのように中規模企業・施設へ人材が少数広がっていくのだとしたら、中核を担える介護人材が不足する事態にも納得がいきます。
実際の求人情報を見れば、大手企業や医療法人、社会福祉法人の雇用条件は他と比べて充実していることがわかります。
給与だけでなく昇給、賞与、年間休日数や保険の充実、ここに加えて独自の福利厚生や副業可能を公言していているところもあり、そうした組織と中小企業が雇用条件で競うのはかなり厳しい状況だと言えます😥
[③資質向上の責務を果たしていない?]
社会福祉士および介護福祉士法第四十七条の二「資質向上の責務」において、介護福祉士は
という努力義務が課せられています。
努力義務に法的拘束力はありませんが、介護福祉士の資格を持つ以上「資質向上」することが社会から求められているわけですから、10年以上の歴を持つ介護福祉士には中核メンバーとなる資質が備わっていることが望ましい訳ですね。
ところが現実には「中核を担う人材がいない」ということですから、資質向上の責務を果たしていない介護福祉士が一定数いることが見えてきます🔍
とはいえ。
介護福祉士が資質向上の責務を果たそうとしても、社会がその責務に対して評価をしないのであれば「やってもやらなくても同じ」となり、『勉強しない介護士』が生まれてしまうのも致し方ないことなのかもしれません。
【まとめ】社会福祉は「みんな」で実現させるもの
こうして整理してみると、中核を担う介護人材の課題には
①介護福祉士の定着率
②雇用条件による競争から生まれる人材の過疎・過密
③社会を構成する一人ひとりの関心不足
といった要因が挙げられるのではないでしょうか。
「勉強に励んで介護福祉士の国家資格を取得した介護人材をどれだけ大切にできるか」というのは、一施設だけの課題ではなく社会全体の課題です。
介護福祉士をはじめとした介護人材が各地域に点在する施設で介護業務にあたるからこそ、多くの家族は親や伴侶、子どもの介助をせずに自分の仕事に注力することができます💪🏻
その介護人材も年々不足しており、2025年(来年!)には30万人、2040年には69万人の介護人材が不足することが予想されています。
介護人材が不足すれば、一般企業での役職に就く40〜50代が親の介護を理由に養殖から離れたり、介護離職をせざるを得ない状況になります。
あるいは10〜20代の子どもが親の介護をせざるを得なくなるヤングケアラーの問題も昨今注目を浴びるようになりました。
これらの事態を「他人事」として捉えられるうちは介護人材不足は解決しません😔
社会全体、その社会を作る一人ひとり、何より『あなた』が興味・関心を持って介護のことを調べ、考え、自分のできる範囲で行動していくことが求められているのです。
そうしても、しなくとも。
遅かれ早かれ「親の介護を無料でするか、他の親の介護を有料でするか」という二択を迫られる『一億総介護職時代』は訪れるのだと思います😶
その過渡期として介護施設での介護職員による不祥事や虐待事件が起きていると考えると、これから訪れる社会がより解像度高く見えるでしょう。
介護福祉士をはじめとした介護人材が長く施設で働く内外の環境を整えること。
そして介護職は資質向上を志し、介護福祉士はその責務を思い起こして社会福祉の実現に向けて励むこと。
これらが合わさった時初めて、その地域・社会において『生命の価値』が守られ、高まっていきます。
『生命の価値』の高まりは、インターネットやSNSの普及によって情報複製・情報拡散が起きた結果
『自分と他人が分けられない時代』
を生きることになった私たちにとって「わたし」が今を生きる意味、その実感を与えるものとなります✨
僕はこの『生命の価値』を守り、次世代へと紡いでいくことが介護の本質であり、その実践としてすべての介護職にとって必要な心構えを
・ありのまま(個人の尊重)
・お互い様(相互自立支援)
・想い紡ぐ(世代を紡ぐ社会福祉の実現)
と提唱しております😊
介護の本質である『生命の価値』を守るために介護職が長く施設で働くようになれば、自ずと中核を担う介護人材へと育ちます。
社会・地域に住む人々の課題を「自分事」として捉え、課題解決への一助として日々の介護業務を行なっていると考え、感じられる介護職が一人でも増えたなら。
そうした介護職が誠心誠意働き、満たされながら暮らしていける職場や地域の環境が整っていたら。
そこに住む人々は自分の家族や伴侶、子どもを大切にしてもらった時に感じた『人のぬくもり(人情)』をまた別の場所で、別の方へ広げて、別の生命を「介け護る(たすけまもる)」ことでしょう☺️
そしてそれこそが社会にとっての幸せや豊かさ、すなわち『社会福祉』なのだと思います。
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