【詩】露営のともしび
生きる屍と化したその人体は
生きる希望を捨てたその戦場で
求めるものは何もないと思っていた
あの時までは。
月のない真っ暗闇の中
ひっそりと潜む人の影
そこに新たなともしびを植え付けた
すると
小さなともしびは
ほんのりと照らし
傷ついたこころは
少しだけ和らいだ
人間のこころを捨てたのに
あの人に会いたいと願ってしまった
今だけは許してくれるはず
風に揺らぐともしび
雨に濡れるともしび
けれど
そのともしびは
どれほど小さくなっても
この先も消えることはないだろう
永遠の想いを込めたから、
〈参考詩〉
G.アポリネール 詩
堀口大學 訳詩
露営のともしびが
幻のすがたを照らし
わが思いしずしずと
樹間にのぼる
苺のように傷ついた
悔恨をさげすむ心
思い出と秘密と
その燠のみはなおも残る
アポリネールの詩を参考にして作りました。この詩に出会ったのは高校生のときです。私がまず最初に思ったのは「露営って何?」でした。簡単に言えば、「外で夜を過ごすこと」ですね。
この詩は、兵隊に駆り出されたある青年が物思いに耽る夜を表現した場面です。アポリネールは志願兵でした。だから彼自身が体験したことを、きっとそのまま表現したのだと思います。
この時期になると「平和」とか「戦争」とか、そんな言葉に敏感になる人が多いと思います。
8月15日は「終戦の日」でもありますが、当時は「戦争に負けた日」でした。もっと細かく言えば「戦争に負けたことを認めた日」です。戦争が終わってから、まだ79年しか経っていないんですね。
私は8月が特に嫌いでした。「原爆」がセットに付いてくるから。テレビで原爆や戦争についてのドキュメンタリーが放送されるたびに胸が苦しくなりました。けれど、これからはきちんと目を向けていこうと思い、この詩を作りました。