就活とはアイドルオーディションである
面 :「ここまで熱心に研究してきたのになんで大学院に進まないの?」
(想定質問だ。1ヶ月前くらいから練りに練った文章をあたかも今考えたかのようにぺらぺら話す僕)
面 :「君、ずっと笑顔だから最近イライラしたことない?」
(よし、あのエピソードに自分の考えを加えれば)
こんな具合に嘘ではないけれど、どこか理想の自分を演じながらありのままの自分を出さずに志望する企業の新卒採用を受けていた。
そんな僕が唯一面接での返答に困り、5秒ほど固まってしまったその企業は紛れもなくマガジンハウスである。
面: 「今、夢中になっていることは何ですか。」
シンプルな質問だが僕が黙ってしまったポイントは『今』ということである。
実はこの質問、ES(約2ヶ月前に提出)で触れており、僕は熟考の末に最適解を惜しげもなく記していた。そのため今リアルタイムで思っていることを即興で答えなければならなかったのだ。(本来面接はそういうものだと思うのだが)
年齢層高めの面接室A、僕は勇気を振り絞って少し早口でひとこと。
僕:「produce101Japan the girlsというアイドルのオーディション番組です。」
沈黙10秒 (いろんな種類の“んっ?”という顔の大人)
僕:「あ、あの選ばれた11人がME:Iというグループで先週発売のananの表紙で」
(矢継ぎ早に情報を付け加え、僕は変なスイッチが入ってしまい)
僕:「アイドルオーディションと就職活動って似てるなって思ったんです。オーディションのテーマソングに『LEAP HIGH!』という曲があって、私を見つけたこと絶対に後悔させないわという歌詞が......何百通何千通のESの中からこうして私を見つけてくださり、こうやって面接に呼んでくださって、アイドル候補生と今自分が置かれている環境が重なって、絶対に後悔させたくないんです。私を見つけてくれた人に対して。」
面:「……」
(面接終了後、受かったわけではないのに原因不明の幸福感に満ちていた)
このとき合否関係なく自分のありのままを面接官に必死に伝えようとしていた。僕の本音が出た瞬間であった。いや本音を引き出してもらったのだと思う。
本音を真剣に受け止めてくれる人と環境の存在は当たり前ではなくありがたいと感じた。
もし面接で緊張したら、見ず知らずの採用担当が自分のことを推してくれたから今面接会場にいることを思い出してほしい。そしてありのままで挑んでほしい。