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イタトマのかぼちゃプリン。

🇮🇹イタリアントマト🍅を覚えていますでしょうか?

通称・イタトマ。

ウチは両親は共働き、6人家族で生活に余裕はなく、遊びに行くことも外食することもほとんどなかった。

「昨日の夜、家族でレストランに行った。」「お父さんがケーキを買ってきてくれた。」そんなクラスメイトたちが羨ましくてたまらなかった。

私には9歳と7歳、の離れた姉が2人いる。私が小学4年の頃に長姉が、6年の頃に次姉が就職した。

それから私は、世の中のありとあらゆる最新の情報に触れ、とてもマセた小学生になっていった。

姉がマイケルジャクソンにハマり、友達から借りてきたのかピットインで借りてきたのか(※由利本荘市の30代以上の人には通じるレンタル屋さん)休みの日の我が家のテレビではずーーーーーーーっとマイケルが「ファオッ!」「ンダッ!ンダッ!」言ってる。

ちっとも良さがわからない。私は録画してたドラゴンボールが観たい。

でもバカな私はそれを友達の前で自慢げに話す。

「今一番好きなのはまいけるじゃくそん!」

と、ドヤ顔で。

そんな、大人な姉のおかげで我が家には文化が輸入され、時々ではあるけど外食に連れてってもらったり、私では知り得る事ができないお店の美味しいものを姉が買ってきてくれたりした。

ある日のこと。姉が、「イタトマのカボチャのプリン、おいしいんだよ。」と言い出した。

いた、、、とま?(゚ω゚)

初めてのキーワードに耳がキンチョーしてる。マイケルジャクソンを覚えたり、LIBERTA VILLAやCIVIC(姉たちの車)を覚えるのに必死な私に、また急にそんな、、、板苫さん?そんな人知らないよ?

イタトマは、正式名称がイタリアントマト。パスタがメインのレストランでテイクアウトのケーキもある当時は最先端のファミレスだった。

加えてカボチャが?プリン?何を言うかと思えば。。これだから大人は信用できない。野菜をプリンにするって?ご冗談を。絶対マズいに決まっている。誰か食うんだそんなもの。

である。

カボチャは煮物。煮てくれ。醤油で。それ以上でもそれ以下でも無い。なんでデザートにするねん。

絶対に信用しなかった。
姉は頭がおかしい。

大人になると野菜をデザートにしてそれを「美味しい。」などと言うようになる。世間にかぶれ、迎合した。そんな大人になんかなるもんか。


あたしゃイヤだね。

ほら。心の中で浅香光代が叫んでる。

そしてついに。我が家にイタトマのカボチャプリンがやってきた。

てっきりカップに入ってるかと思ったら、ケーキみたいな三角にカットされてるビジュアルだ。


おもてたんとちがーう!

思っていたプリンのビジュアルじゃない。なんなんだ。なんで大人はこんな事するんだ。プリンは器に入ってるもの。そうと決まってる。だって見てみろ、スーパーで買ってくるプリンはカップに入って3つにまとまってるぢゃないかっ!

大人のやることにいちいちついていけない。

プリンを食べるつもりが、見た目がケーキみたいな三角のやつが来たもんだから胸の高鳴りが抑えきれない。

このワクワクを気取られないように。「カボチャプリンなんて給食で食べてますし。。」とでも言うような態度で、初めて私はイタトマのカボチャプリンを食べた。

第九。
歓喜の歌。
神の祝福が口中に溢れ出す。

「ぬぁぁぁぁぁぁぁんだ!この!
ねっっっっっトリとしたやらかさ!」

母が気まぐれに作る、すの立ったプリンが一番好きだった。況んやカボチャプリンをや。

"況んや" を使いたくなるほどに、カボチャプリンが美味しかった。美味しくて美味しくてバカになった。(嘘。前からバカ。)

カボチャの味はほんのりと。そこはかとなく。慎ましやかに。ねっとりとした舌触りが特徴のプリンというかなんだ?なんだろうね。なんだかわかんないけど、


イタトマのカボチャプリン
だいすきーーーーーーー!

になったのだった。それ以来、父が遅く帰ってくるときや機嫌のいいときには、「イタトマのカボチャプリンが食べたい。」と、正当な私の欲求を満たす人(つまり、親。)におねだりしていた。

しかし、いつしかイタトマのカボチャプリンは忘れ去られた。

2年に一回くらいは思い出して、「イタトマのカボチャプリン食べたいな。」なんてうっすら感じながら、あれから随分と月日が経った。

昨日は夫の車で町田に向かっていた。なんでかわからないけど私は夫に、イタトマのカボチャプリンの話をした。

話しながらなんとなくGoogleマップに、"イタリアントマト"と入力した。

地図上ではこの先5分のところにイタトマがある。

・:*+.\(( °ω° ))/.:+

ひ。引き寄せ?

イタトマのカボチャプリンが食べたいなーから早30年。イタトマが近くにある。え?行くの?行く?イタトマに?カボチャプリン食べに?行く?どーする?

まずはメニューにあるかどうかだ。30年前のメニューがまだあるのか。

ググる。
えーと。
メニュー。
メニュー。

あっッッッッッッた!
あったよ!
若干ビジュアルは変わってだけどあった!嗚呼、あったのねー!

ナビをイタトマに変更。腹が減った。ワシはカボチャプリンを所望じゃあ!

住宅街の中にあるショッピングモールの中にそれはあった。

何年かに一回、思い出しては食べたくなるあのカボチャプリンに。ついに再開できるとは。

イタトマも、こんなにも長い間、営業していてくれたとは。そして見た目は変われどもカボチャプリンを存続させていてくれたとは。

生き別れの兄弟がいると知ったらこんな気持ちになるんだろうな。。

私にとってイタトマのカボチャプリンは生き別れの身内のような存在だったのだな。。

初めてイタトマのカボチャプリンを食べた時の、あの感動から35年。あの時とはまた違う、懐かしさと恋しさを携えて、お店に入る。

入り口の正面、ショーケースの中にはクリームがたっぷりのった新しいビジュアルのカボチャプリンが、確かに存在してた。

「今からアレを食べる。」

ちょっとよからぬ妄想とリンクしそうになった。レジに並びながら、イキリたった財布を出して、、、(おっと。。

私がバカなばっかりに懐かしい思い出が汚されそうになった。

ついでに頼んだトマトのパスタも載せておこう。

本日のランチ。みたいなやつ。

このパスタも懐かしい味だった。昔のデパートの中にある、いろーんなメニューがあるファミレスにおいてあるパスタの味。ジャスコとか。そーゆーところに入ってたファミレスの。ファミレス味のトマトパスタ。

さあ、いよいよ、懐かしくてたまらない、イタトマのカボチャプリンの登場。

これがイタトマのカボチャプリン。

この上のクリームの部分は、昔はなかったと思う。

先にパスタを食べ終えていた夫がカボチャプリンを食す。

夫「甘いな。」

なんの思い出もへったくれもない男の感想がコレだ。稚拙で幼稚。味の感想しか言えない低脳なヤツめ。お前のようなヤツは砂糖でできてるサンタクロースでも舐めてろ。

私は違う。35年前に初めてイタトマのカボチャプリンに出会ってから、カボチャの概念もプリンのビジュアルもひっくり返り、神の祝福を与えられたこの、唯一無二のデザートに、再び出会えたこの私の溢れんばかりの感動が今ここに!!!!!!!!!








私「甘いな。」







35年ぶりに食べたカボチャプリンは甘かった。

〜fin〜

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