ていねいな保育【遊び編】
前回、園での1日の生活、その中で身につけていく生活習慣について書きました。
今回のテーマは「遊び」!
「遊び」は子どもの成長にとって必要不可欠なものです。安全の確保を絶対条件として、ていねいな保育では、どのような点にポイントを置き、どのような取り組みをしているのか書いていきたいと思います。
お散歩マニュアルを各園でカスタマイズ
遊び場には「園外」と「園内」があり、ぞれぞれに目的や注意すべき点も違います。まず園外の遊びではどのように安全を確保し、どのような目的を持っているのでしょうか。
Mafficeが運営する3施設は、共に園庭を持たない施設のため、屋外での遊びは園外がメインとなります。いずれも車の往来もある周辺環境のため、念には念を入れた安全対策をしています。
例えば、「お散歩マニュアル」は会社で共通項目について定めていますが、それに施設ごとの必要項目を追加して使用しています。
公園や道路等の状況は日々変化するため、会議等で情報共有や改善点の話し合いなどを行い、必要に応じてアップデートしています。
反面、安全確保には有効な手立てとはいえ、ロープ等を使って子どもたちを一様に歩かせることはせず、保育者との手の繋ぎ方を工夫するなどして、安全かつ子どもたちの自由度を妨げない方法をとっています。
安全を確保した上で、少しチャレンジングなことをしながら、外の世界を知り、そこでの気付きや感動を園に持ち帰るなど、園内では体験できないことを重視しています。
都市部でも自然との触れ合いを大切に
都市部といえども、外に出ることで植物や生き物、水や砂・土といった自然と触れ合うことができ、五感を刺激することでさまざまな感覚や感情を養うきっかけとなります。
例えば、砂場遊びの定番は山づくりやお団子づくりですが、これらは運動機能の発達が期待できると同時に、創造力や社会性も育みます。また砂場遊びからの発展で行うことが多い泥んこ遊びも、視覚や触覚を刺激する屋外ならではの遊びです。
小さな生き物や身近な植物から「命」について考えたり、数や高さに興味を持ったり、年齢が進むにつれて匂いや色に興味を持ち学ぶこともできます。
また、咲いている草花や気候・気象から四季を感じることもできるでしょう。
お散歩の行き帰りの過程で、子どもの興味がどこに向くのか、その子が持っている興味に合うものはあるか?など、子どもと周囲を観察をしながら、その都度立ち止まっては子どもの見たい、触りたいを大切にしています。
園内ではやりづらい「走る」「飛ぶ」といった体を動かす運動機能の発達にも園外の遊びは重要ですが、運動を促進するような遊具の利用も含め、無理にさせることはありません。
あくまでも主体は子ども。基本的には「どこへいくか」も子どもの意見を尊重しています。
乳幼児も社会の一員。子どもにも社会にも認識してもらう
園外へ遊びにいく一つの大きな目的として、先に書いた「自然資源」とのふれあいに加え「社会・地域資源に触れる」というのがあります。
道ですれ違う人々とのふれあい、お花屋さんや魚屋さんといったお店・人とのふれあい、隣を走っていく救急車や信号機が変わる様など子どもにとって興味を引かれているものたちで園外は溢れています。
同時に、地域の方達にも、子どもたちとのふれあいを持っていただくことで、社会の一員であることを理解してもらう目的もあります。
屋内遊びは保育者の創意工夫の見せどころ
「屋外」は自然環境に委ねる部分も多いですが、屋内は環境設定を含め、保育者が多いに考え、工夫できる空間でもあります。
マフィスでは特に発達段階によって遊ぶ場所をしっかり区切るようにしています。それは、発達段階によって「床に寝そべる」「床に座る」「ソファに座る」「椅子に座る」「椅子+机」など遊ぶ際の姿勢が変化するからです。
その違いによって素材だったり、広さだったり、棚の有無・高さだったりを決めています。
園外同様、園内でも主体は子ども。おもちゃや絵本、お絵描き道具類など基本的には自分で選んで取れるような位置(高さ)に配置されています。
好きなものを自分が心地よいと感じる場所で遊ぶ。環境が適切であれば、保育者は遊びに没頭する姿を観察し、求められた時にサポートをすれば良いのです。
逆に子どもたちからの求めが多い場合は、環境が適切であるかどうかを今一度検証する必要があると言えるでしょう。
定番の遊びも「ていねいな保育」視点で見ると?
・手遊び(スキンシップ)
くすぐりなどのスキンシップや「いないいないばあ」などの手遊びは、子どもの注目を集めるために使われがちですが、本来は子どもとのコミュニケーションの手段です。不思議なことに「くすぐり」を「楽しい」と感じるのは知っている人にくすぐられたときだけなのだとか。人との関係性を深めるために備わった機能なのかもしれません。
また、手遊びは同じ身振り手振りを楽しむことで、人(保育者だけでなくお友達とも)との距離を縮める効用があります。
・ごっこ遊び
単なる段ボールを家や車などに見立てて、状況や物語を想像するごっこ遊びは子どもの創造力を育てます。小さい子には、例えば「ままごと」に遊びが限定されるレンジ台といった具体性のある遊具を使ってもいいかもしれませんが、さまざまな経験を重ねた月齢の子どもたちには、より自由度の高いもの(前述の段ボールのような)を用意してごっこ遊びの広がりを楽しんでもらいます。
また、絵本を題材としたごっこ遊びも、「その物語が頭に浮かんでいるな」と思った時などいつでも子どもの興味に沿って展開します。
・音楽
園での音楽は「歌う」技術的なことより、コミュニケーションや感情を共鳴させる手段として捉えます。そのため、「さあ歌いましょう」と歌の時間を作るというより、生活や遊びの中で、その時々に会う歌が自然と出てきます。
歌だけでなく、楽器もきちんとした楽器を演奏するより、缶など音の出るもので、まずは「音」を楽しむことが大事だと考えています。
・アート(造型・描画)
ごっこ遊び同様、子どもの創造を広げるために有用なのがお絵描き(描画)や工作(造形)です。3歳くらいにもなると「これを作ろう」と目標を決めて、完成した時の達成感を味わうことも多くなりますが、それ以前では、素材(クレヨンや粘土など)をまずは感じ、触っている、描いているうちに何かしらの形に見えてきて、そこからごっこ遊びに繋がったりします。ていねいな保育では、完成品より「過程を楽しめたか」「その過程でどのような学びがあったか」が重要です。
・絵本
物の名前を覚えたり、生活習慣を学んだり、絵本は子どもに一番近い「文化」です。また、興味や経験と絵本との共通点に気づいた時、子どもの心はより動きます。そのため、保育者は子どもの興味に合わせた絵本を選び、その興味が深まるようにしていきます。
子どもたちは時にストーリーより保育者とのやりとりや、絵、言葉を楽しみ、ページをあっちこっちめくったりします。そんな時は「読み聞かせること」より「読み遊び」のように一緒に楽しむことを心がけています。
保育の延長として保護者と成長を分かち合う
遊びを通して得られる学びは、生活習慣などよりも個性が見られます。その成長は是非とも保護者と共有したいもの。しかし、昔ながらの学芸会的なものは子どもにとっても保育者にとっても負担になってしまうことがあるので、マフィスはあくまでも「保育の延長」として個々の成長を保護者と共有できる方法を工夫しています。
常に保育参観を受け入れ、保護者が見たい時に自由に見にきていただける体制をとっているのも、作り込んだ成長ではなく、ありのままの成長を見てもらいたいからです。また、別の機会にこの保育コラムにて詳しく書きたいと思いますが、 写真を交え個々の子どもの成長を1つの物語として観察・記録する「Learning Story」もそれを叶える方法の一つです。
▼ラーニングストーリーについて簡単に紹介しています!
マフィスでは「遊び」に関して、特段変わったことを行っているわけではありません。しかし、安全面については当たり前のことを当たり前以上に徹底し、内容については子ども主体を貫く。簡単なようで努力も情熱も必要なことを保育者は粛々と行っているのです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに!
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