キューイングについて
アスリートが運動指導者として活躍する為に必要な学びを提供しているメディアです。
今回お届けする内容は指導の際の「キューイング」についてです。
基本的な内容ですから既に聞いたことのある話になるかも知れませんが、その場合は復習の為にこちらの記事を活用してください。
この手の話は初めて!という方はじっくり読み進みて下さい。
いずれにしても、ご自身の指導等と照らし合わせながらお読み頂くとよいかと思います。
キューイング
「キューイング」とは英語の「cue」から来ている言葉で、「cue」自体は「合図」とか「きっかけ」という意味があります。
指導の際の「キューイング」は英語では「coaching cue」と呼ばれることが多いかと思いますが、いずれにしてもこちらは日本人向けのメディアなので「キューイング」という言葉で統一して記事を書き進めます。
要は指導者が指導対象者に対して「こうしてくださいね」「ああしてくださいね」ということを伝えるのが「キューイング」ということです。
さて「キューイング」は「指導の際の声掛け」と理解されがちですが、それは適切な解釈ではありません。
先述の通り「cue」という「合図」とか「きっかけ」が元となっている言葉ですから、それは「声掛け」つまり「言語」に限った話ではないのです。
ビジュアルキューイング
言語に頼らないキューイングを「ビジュアルキューイング」とか「ノンバーバル(非言語)キューイング)などと呼びます。
運動指導の際、身振り手振りによって相手に何かを伝えることは非常に有効です。
シチュエーションにもよりますが、「右!」というよりも、右を指さす方が上手く伝わることはよくあります。
特にグループレッスンなんかでは「右を向いて!」と言っているのに左を向く人も少なくありません。
また言葉でごちゃごちゃ説明するよりも「見て!」といって手本を見せる方が早いです。
指導の手順でよく言われる「まず手本を見せよ」とは、ビジュアルキューイングの有効性を活用しましょうということです。
バーバルキューイング
言語によるキューイングを「言語キューイング」とか「バーバルキューイング」などと言います。
こちらはつまるところ「声掛け」ということですね。
後述しますがただ「声掛け」と言っても非常に奥が深く、適切な「声掛け」をする為には様々な工夫が必要です。
またビジュアルキューイングとの組み合わせも考えておくとよいでしょう。
単純に「深くしゃがんで」と言うのと、指導者自身も深くしゃがみながら言うのでは、後者の方が圧倒的に伝わりやすいものです。
また声のトーンにも注意が配れると更に良い声掛けができます。
「ちょっと」というのか「ちょ~っと」と言うのではニュアンスが違いますし、それを大きな声で言うのか少し小さな声で言うのかでも伝わり方が違ってきますね。
こう言った微妙な声の出し方の違いは聴覚情報として処理されますが、それは言語情報よりも届きやすいと言われています。
またオノマトペを用いた「声掛け」もあります。
「ドンッ!」と言うのか「トンッ。」と言うのかみたいな、そういう話です。
動きを修正するにあたっては、指導者と指導対象者の中で言葉の定義やオノマトペに対する認識を共有する必要がありますが、そうったコミュニケーションが取れるかどうかも、いい指導が出来るかどうかの分かれ目になるかもしれませんね。
インターナルとエクスターナル
さて「声掛け」は更に二つの手法に分ける事が出来ると言われています。
それはインターナルキューイングとエクスターナルキューイングです。
インターナルキューイングは例えば「もっと膝を曲げて」みたいに、自分の身体に対して意識を向けさせるための声掛けです。
それに対してエクスターナルキューイングは身体の外側に意識を向けさせる声掛けを指します。
例えば「あの的を目掛けて投げましょう」とか「バーベルを真っすぐコントロールしましょう」みたいな声掛けです。
より良い動きに導く為には?
インターナルとエクスターナルは場面によって使い分ける必要がありますが、多くの場合エクスターナルを用いた方が上手く行くと言われています。
特に運動初心者であれば身体への意識は不要な緊張を生んでしまい、上手く身体が動かなくなってしまうという弊害があるとされています。
身体の緊張を取る為には身体の外側へ意識を向けるというのは、至極真っ当な手段ですね。
しかし、変に知識があったり感覚が優れている指導者はインターナルキューイングを多用しがちです。
指導者自身の感覚として落とし込むならそれは勝手なのですが、大切なことは指導対象者が上手く動ける様になるかどうかですから、ここは注意が必要ですね。
はっきり言って、自分の身体に意識を向けて適切な動きを導ける人なんてほとんどいません。
また説明を聞いただけで出来るようになる人も殆どいません。
ということは指導で大切になるのは以下の様なキューイングの使い分けです。
①ビジュアルキューイングで「まず見せる」
②エクスターナルキューイングで「動きの精度を高める」
③インターナルキューイングで「細かい修正をする」
手順が逆になるとどうなるか。
「先に見せてくれよ」とか、「それ最初に言うてよ」なんて思われるわけですね。
指導時間と言うのは有限です。
これはすなわち指導対象者が指導を受けられる時間に限りがあるということです。
なるべく短い時間で適切に物事が伝わるように工夫したいですね。
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