胸を張るという話
アスリートが運動指導者として活躍する為に必要な学びを提供するメディアです。
今回は、運動指導中に言いがちな「胸を張りましょう」という言葉についてです。
少し回りくどい記事かも知れませんが、こういった思考が大切だと考えていますので是非お読みください。
胸を張るとはどういうことか?
例えば過度に猫背であって、あまりにもだらしない姿勢であることはアスリートにしても一般人にしても、よくない姿勢です。
その姿勢を正す為に、
「はい胸を張って!」
という指導をする方は少なくないと思いますが、この「胸を張る」という表現は、実は正しいとは言えないのです。
確かに胸を張って、シャキッとした姿勢になれば、猫背よりは見栄えも良いですし、なんとなく感覚的にいい姿勢だと感じます。
では、何故「胸を張る」ことが本当に正しいとは言えないのでしょうか?
胸を張ると力む
「胸を張る」ということは、無理矢理肩を引いて少し息を止めているような感じになりがちです。
この時、腰は反りやすくなりますし、膝は伸び切っているかもしれません。
要は、胸を張るという意識が緊張を生んでいるのです。
猫背は猫背で不自然な緊張を生みますが、逆に胸を張るという意識が別の緊張を身体に与えているとしたら、胸は張らない方がいいかもしれません。
肩甲骨について正しい認識を
「胸を張る」と、「肩甲骨を寄せる」ようにする人が多いと思います。
肩甲骨は鎖骨からぶら下がっているのですが、その肩甲骨から腕がぶら下がっています。
肩甲骨と腕(上腕)の接続部分(関節)を、上腕肩甲関節と呼びますが、この関節は真横のラインよりも30度ほど前方に向いているのが一般的です。
ですから、腕というのはそもそも前方に位置しているのが自然なポジションということです。
これを、「胸を張る」ことによって肩甲骨が不自然なポジション(過度に内旋し、やや挙上)へと移動し、腕が身体の真横にぶら下がる様になります。
つまり、力んでいます。
良かれと思って指導した「胸を張って」は力ませているだけなのですね。
他にもある誤った言葉がけ
こちらのメディアではあまり細かい話には言及しない様にしていますので、関節の角度がどうのこうのと言うことはやめておきましょう。
しかし、例えば他にも、「背筋を伸ばして」と言って過度に腰が反るパターンや、「気を付け!」といって膝が伸びすぎるパターンなど、良かれと思って掛けた言葉で、不要な緊張を与えているケースは散見されます。
※腰椎はそもそも前弯(反っている)しているのが自然ですが、一般的にそれ以上反らす必要はなく、膝もリラックスしていれば少し緩んでいるのが自然です。
こう言った事例を参考に、今一度、当たり前と思って使っている言葉掛けを見直してみてはいかがでしょうか。
言葉のチョイス1つで劇的に動きや身体の状態が善くなることもありますので、試してみる価値はありますね。
※この記事のサムネイルにもなっている私の写真は、調子に乗ってちょっと「胸を張って」いますね。笑
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