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レジスタンストレーニングのレベル分け(レベル1~3)

アスリートが運動指導者として活躍する為に必要な学びを提供しているメディアです。

前回は、「筋トレ」とは「レジスタンストレーニング」である、という辛気臭い言葉の定義に関する記事を更新しました。

今回はその「レジスタンストレーニング」を実施する際に留意すべき、レベル分けについてご紹介します。


※今回の記事では全5段階のうち最初の3段階とそれに関わるお話をします。


レベル分けとは?

例えば、スクワットというレジスタンストレーニングの代表種目がありますが、自重で行うものから、ダンベルを持って行う方法やバーベルを背中に担ぐ方法など、細かく分類するとそのスクワットにも「〇〇スクワット」と細かく手法があります。

この分類の仕方は、例えば重りの種類だったり、足幅だったりといった分類になりますが、今回ご紹介するレベル分けはこういった話ではありません。

こちらの記事でご紹介しているレベル分けとは、重量と回数によって定義するものとなります。

つまり、種目そのもののレベルではなく、同じ手法でも重量が変化すると(あるいは回数が変化すると)すると、得られる効果はどう変わってくるのか?といったところにフォーカスしたものとなっていますので、まずはこの点を理解しておいてください。


重量と回数とセット

レジスタンストレーニングの世界では、実際に準備する重量物の重さを記録していきます。これは当たり前の話なので特に説明不要かと思いますが、日本であれば「キログラム(kg)」という尺度が用いられます。

海外では「ポンド(lbs)」が用いられることもあります。


次に、回数は専門用語で「レップ(rep)」もしくは「レップス(reps)」と言います。単純に「〇回」と数えても全く差し支えありませんが、専門書などでは専門用語で書かれていることがあります。

この「rep」とは「repetition」という「反復」「繰り返し」からきている用語です。


さて、この重量と回数によって規定されたものが、「セット(set)」と呼ばれるものです。

例えば「スクワットを50kgで10repを5set」という言い方をします。

これは「スクワットを50kgの重量で10回繰り返し、休憩(レスト)を挟みながらそれを合計5セット実施する」という意味です。


この重量や回数やセット数を、目的によって上手く調整することで、的確な運動指導が出来るようになります。


レベル1 神経筋促通

これはすなわちフォームづくりの段階です。

脳の命令が神経を介して筋に伝えられる、その神経回路を正しく構築する段階ということで、神経筋促通と呼ばれています。

基本的には20回以上繰り返すことのできる軽い重量で行います。

レベルとしては「低い」と思われがちですが、フォームが間違っていてはそもそも何のために鍛えているのか分かったものではありませんから、このレベルの習熟が最も重要であることは言うまでもありません。

かなり神経を使う作業になりますし、この段階にいるということはそのエクササイズの習熟度が低いことが多いので、セット数は2から3で十分でしょう。

エクササイズの習熟度(経験値)が高ければ高いほど、フォームの修正が必要な場合はその修正に時間が掛かります。

私も経験がありますが、その修正作業にはかなり集中力を要しますし、時として非常にストレスフルなものですが、何とか乗り越えないとレベルアップは図れません。


レベル2 筋持久力

フォームが安定してきたら、徐々に重量を増やしていきます。

このレベルは、重さを持つことに慣れていく段階ですから、筋持久力の向上が主な目的となります。

概ね、12回~15回程度できる重量で、3セットから5セットほど行うとよいでしょう。

重量が上がってきたところでフォームが崩れるのであれば、また重量を少し落として、出来たらまた少し上げて……という作業を繰り返します。

重さに慣れていかないと、この次のレベルには進めません。

ただ、このレベルでのレジスタンストレーニングは、骨格筋のコンディションを整えるのに適していると考えられていますので、この領域で立ち止まることは決して悪いことではありません。

特に、「ある程度の重量で」しっかり筋を伸ばして縮めるという作業は、現代人にとって非常に重要ですし、単純に運動不足の解消になります。


この次のレベルが、一般的には「THE 筋トレ」みたいに思われていますが、このレベル1から2の重量や回数の組み方も立派な「レジスタンストレーニング」だということを頭に入れておきましょう。

この世間の一般論と「ホントのトコロ」を分かりやすく説明して、理解して頂くのも運動指導者の大切な仕事です。


レベル3 筋肥大

骨格筋量を増やす為の領域ですから、一般人の方のニーズとしてはこちらが目的となる方が多いです。

「10回ギリギリ出来るぐらいの重量で3セット」という有名な(?)セリフがありますが、これはまさに筋肥大を狙う為の設定です。

覚えやすいので浸透したと思われますが、もう少しちゃんとした言い方をすると、「8から12回程度繰り返すことのできる重量で、3セットから5セット程度」ということになります。

恐らくフィットネスクラブ等では、12回で5セットやられるとマシンが占領されるので、「10回3セットでレストは1分」という(いい意味で)適当な数値を一般化したのでしょうが、果たしてこれが正しいかどうかは微妙ということですね。

経験したことのある方は分かるかもしれませんが、「10回ギリギリ繰り返す事が出来る」ということは、11回目はどう足掻いても動かない状況になります。

それが8回であれば9回目には動かなくなります。

この領域の重量となると、ハッキリ言って1回目からもう既に繰り返すのがしんどいです。笑

そんなものを1分のレストで繰り返す事が出来るかと言われれば、答えは否です。


レストはどれだけ確保する?

最近では、「レストはしっかり確保する」が常識です。

1セット1セットしっかりやりきることが、筋肥大への近道ということですね。

ただ、あまり休みすぎると(極端に言えば10分以上)、気持ちがだれてしまいます。

種目や個人によって異なりますが、私が指導する際はレストタイムは参考程度に計測して、「はい今〇分経過しました、どうですか?」などとレスト中に疲労の度合いを観察します。

その上で「そろそろ行けそうだな」と思ったら、「はい、では30秒後に始めます。心の準備をしましょう」と予告します。

この後30秒以上経過することは大きな問題ではなく、大切なのは次のセットに向けて集中力を高めることです。


科学的根拠と個人の間で……

レジスタンストレーニングをレベルアップさせるプロセスにおいて重要なのは、フォームを確実に習得しておくことと、重たいものに負けないメンタルを獲得しておくことです。

また科学的根拠に基づいてトレーニングするということは、筋肥大レベルにもなってくると相当重たい重量で回数とセットをこなさねばならないということになってきます。

しかし、一般人がその領域でトレーニングする必要があるかというとそうでもありませんし、厳密に言えば「ちょっと無理」だと思います。

指導する際は、科学的根拠(エビデンス)はもちろん大切です。

ただ、そのエビデンスを武器に「ここまでやらなあきませんよ」というのは、少々乱暴です。

お客様の性格を含めたメンタルの状態も加味する必要がありますし、何より「そこまでやる必要があるのか?」をよく考えるべきです。


「筋トレ=筋肥大」となってしまったのは、何か色々な事情があるのでしょうが、私たち運動指導者は筋肥大の専門家ではなく、運動指導の専門家ですから、お客様に必要な手法を的確に選択できるようになりましょう。

※もちろん筋肥大のことについて理解があるのは当然です。






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