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レジスタンストレーニングのレベル分け(レベル4、5)

アスリートが運動指導者として活躍する為に必要な学びを提供するメディアです。

前回記事では、今回記事の前編となりうるレジスタンストレーニングのレベルを1から3までご紹介しました。

今回は後編の4と5、そしてそれぞれのレベルに対する考え方についてご紹介します。


復習

レジスタンストレーニングは、同じ種目でも目的に応じて重量や回数、そしてセット数をコントロールします。

レベル1にあたるのが、「神経筋促通」と呼ばれる領域で、いわゆるフォームづくりに重点を置きます。

20回以上繰り返すことのできる重量で実施し、2セットから3セット程度実施するのが基本と言われています。


レベル2では「筋持久力」を向上させ、筋のコンディションを整えます。

反復回数は15回程度出来る重量を選択し、3セットから5セット程度行うのが基本となります。


レベル3は「筋肥大」を目指す領域となります。

多くのトレーニーにとって目的とされ、「10回ギリギリ出来る重量で3セット」という決まり文句のもととなっている領域です。

ここまでくると実質的にかなりの重量となっていますので、一般の方が本気でこの領域でトレーニングするには、それなりの時間を有することになります。


レベル4 筋力

さて、ここまで学んでくると、レベルが高くなるたびに、扱う重量が増え、反復回数が減り、セット数も増えていく傾向にあることが分かるでしょう。

つまり、筋肥大を狙うのであれば重すぎて5回ぐらいしか反復できないのであれば、あまり効果は期待できないということになります。

では、レベル3を超えるレベルとなるとどうなるのかというと、まずは「筋力」を高めることが出来ると考えられています。

筋力とは、筋が発揮する力そのものです。

もう少し簡単に言うと、「どれだけ重たいものが持ち上がるか」と考えてもよいでしょう。

扱える重量を高める為には、レベル3を超える領域でトレーニングすることが理想です。

しかしそうなると当然反復できる回数が減ってきます。

筋力を高める為には、概ね5回程度出来る重量で、数セット行うことが有効とされています。

この数セットというのは、実施者の持久力や集中力によるところが大きいので、一般論として説明するのが難しいので、この様な表現をしました。

というのも、5回程度しか反復できない重量とは、気を抜くと1回も出来ない重量に相当します。

ハッキリ言ってかなり重たく感じます。

そんなものを、疲労困憊で集中力がない状態で取り組んだら、大きな事故に繋がる可能性が高いのです。

ですから、この領域のトレーニングを実施する際は、実施前の体調確認や、取り組む際の精神状態などをしっかり確認しておき、慎重に実施の可否を判断する必要があります。


レベル5 パワー

さて、では1回から3回程度しか反復できない、とても重たいレベルになると、どの様な効果が期待できるか、これがレベル5に相当する「パワー」の向上です。

パワーとは物理の用語で「仕事率」を意味します。

レベル4までには登場しなかった仕事率に関わる重要な要素が、速度です。

要は「重たいものをどれだけ速いスピードで持ち上げられるか」を鍛えるのが、この領域です。


例えばレベル4で扱える重量をどんどん増やしていって、ベンチプレスが100kg挙げられるようになった人がAさんとBさんの2人いたとしましょう。

Aさんはベンチプレスを100kgの重量で1回挙上する事が出来ますが、ボトムポジションからトップポジションに持ち挙げるのに1秒掛かります。

Bさんは同じ重量を扱えますが、持ち挙げるのに0.5秒だったとします。

AさんとBさんの腕の長さが同じであれば、Bさんの挙上速度はAさんの倍も速いということになります。


さて、仕事率、すなわちパワーを現わす計算式として、

F = ma

という有名なものがあります(聞いたことありますかね?)

簡単に言いますと、

パワー = 重さ × 加速度(速さ)

ということです。

つまり、

同じ重さでも、加速度(速さ)が低ければ(遅ければ)パワーは下がってしまうということです。

速い方が時間が短くなるので計算式を間違えそうになりますが、速い方が数値は高くなりますので、文系思考の人は落ち着いて計算してくださいね。


AさんとBさんの話に戻ります。

AさんはBさんと同じ100kgを扱えましたが、速度がBさんの半分なので、AさんのパワーはBさんの半分ということになります。

また、もしAさんが50㎏の重量で0.5秒の速さで挙上することができれば、それはAさんが100㎏を扱った時と同じパワーになるとも言えます。

この速度が重要な意味を持ってくる領域がパワーなのです。


スポーツの場面ではパワーが大切

少し視点を変えて、100㎏の体重の人を想像してみましょう。

大柄な人ですね。

その人が正面からゆっくり歩いていて来て、肩にドンっと当たりました。

少々驚くかもしれませんが、「あ、すみません」ぐらいの話で済みますね。


しかしこの人が正面から100mを10秒台で走るようなスピードで突っ込んできたとしましょう。

この状態で肩にドンっと当たったら、たちまちあなたは吹っ飛んでしまうでしょう。

これが、パワーが大切だと言われる理由です。


スポーツの場面では殆どの局面で、反動や勢いを使いますし、走ったり跳んだりと動いています。

ゆっくりモノをコントロールする局面もありますが、多くの場合は一気に出力してしまうものです。

ここで大切なのが、パワーを高める為に、重量を高めるのかスピードを高めるのかどちらに重点を置くかということです。

初心者や、筋量が不足していたり、そもそも力の出力(筋力)が低い選手は、まず筋量を増やす(筋肥大)ことや、筋力の向上を目指す期間が設けられて然りですが、それでも最終的にはスピードを高めなくてはいけません。

例えば重たいものが挙がるようになって、しかもムキムキマッチョになっても、動きがのそのそしていたら、スポーツの場面ではあまり役に立たないからです。

力もスピードもどちらも大切ですから、よいバランスで向上させるように取り組まなければなりません。


レジスタンストレーニングがダメだという人の多くは、この速度が失われてしまうことを懸念しています。

ただ、この懸念はレベル3やレベル4の重量や回数でレジスタンストレーニングを行う印象が強いからなのかもしれませんね。

クイックに挙げるという意識が持てれば、無下にレジスタンストレーニングがダメだとは思わなくなるはずです。


ただ、競技スポーツにおいては、その競技の練習が大切であることは言うまでもありませんから、レジスタンストレーニングは全てを解決する魔法でもないことは理解しておく必要があります。


以上がレジスタンストレーニングのレベル分けに関するお話です。

どのレベルが優れているとか劣っているとかではなく、目的や対象者の習熟度に応じて、的確にプログラムが作成できるようになる為に、こういった学びが必要なのです。

やや長文となりましたが、最後までお読み頂きありがとうございます。


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