北村惇生「憮然」
わずか3秒差の13位予選通過。その結果を受けた北村くんの顔に笑顔はなかった。個人成績は18位、留学生のムトゥクくんと二人で稼ぎ出したタイムで薄氷の通過となった。
もしエティーリくんが転倒せずに走り切っていれば。おそらく山梨学院は今年テレビから中継を見ることとなっていたはずだ。勝負にたらればは不要でも、それが山梨学院の今の実力だ。
憮然とした顔がテレビ中継で映された中、それに対して周囲からも注目を浴びることとなる。
憮然とした顔の真意
チームが歓喜に揺れた中、北村くんの表情が晴れなかったのは「本来であれば予選敗退をしていた」という現実を誰よりもかみしめていたからに他ならない。
実際問題、山梨学院大学は93回大会からシードを逃し96回大会は予選敗退まで喫してしまっている。飯島監督に代わり箱根駅伝は出場を継続している者の、その結果は決して芳しいものとは言えない。
決してそれは飯島監督の手腕が無いと言っているのではなく、単純に良い選手が他大学に進学を決断してしまった結果でもあるし、大学側が予算を割かなくなってしまった。そういった可能性だってある。
いずれにせよ、かつて留学生を擁してあれだけ強かった山梨学院大学の面影はない。
その中でも北村くんはチームにとって欠かせないエースとして奮闘している。「一番成長した」と語る3年時には4区区間10位と及第点の成績を残し、今回の予選会でもチーム2番手の成績を残している。彼がタイムを大きく稼いだことはアドバンテージとなったことは言うまでもないだろう。
今シーズンは5000メートル走とハーフマラソンにて自己ベストを大幅に更新しその点については「すごく嬉しい」と語った北村くん。着実に選手としての実力を付けつつある中、最後の箱根は「楽しみたい」と感じているようだ。
緊張して走れないなんて……
最後の大会を自然体で臨みたいと感じている北村くんにいささかの気負いも感じられない。もとより13番手。最後に名前を呼ばれたという点からも開き直って攻めていくのが今回の作戦なのだろう。
昨日発表されたエントリーでも1区。留学生のキピエゴくんかムトゥクくんが走ると考えれば、序盤からのロケットスタートは必須。そのままの勢いで一気に攻めていくしか方法はない。
だからこそ。彼が最上級生として思い切った攻めていく走りを見せていくことができれば、番狂わせは何も不思議ではない。
確かに現状、山梨学院大学のチーム力でシードというのは率直に言えば難しいと言わざるを得ないからこそ。その大番狂わせは北村くんの快走が何よりも不可欠と言える。憮然とした表情を最後大手町から鶴見までの間に。そして最後仲間を待つまでの間に。笑顔へと変えることができるだろうか。
山梨学院で着々と成長を遂げてきた「もう一人のエース」が最後の箱根路で見せる姿と表情はいったいどのようなものになっているのだろう。