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佐藤圭汰「課題」

彼は日本陸上界にとって重要な存在となる。これに間違いはないだろう。非常に高い意識に裏打ちされた圧倒的な才能と既に20歳以下の5000メートル日本記録保持者となった実力。そしてまだまだ底知れぬ高いポテンシャル。そして、目指す先はどんな選手なのだろうか?

怪物の神髄

駅伝や大会での実績は中学時代からの折り紙付き。当時からライバルであった吉居駿恭くんなどを始めとしてハイレベルな争いを繰り広げていた彼は名門・洛南高校でその才能を急激に開花させていく。

都大路では区間賞こそ1年時の2区のみだったが、2年・3年生の時には留学生が多く集まる区間で真っ向勝負を繰り広げなんとそれぞれ5位と4位、チームも優勝こそ逃すもののそれぞれ3位と2位に入賞した。しかも、日本人選手に限れば歴代最高のタイムを記録したことも驚異的だ。

だが、彼が取り上げられるのは駅伝のトピックでは無い事を既に駅伝好きならば知っているはず。彼の驚異的な才能はトラックレースに集約されていると言ってもいい。

彼が持っていた記録を整理すると、1500メートル・3000メートル・5000メートルの高校生記録をすべて塗り替え、駒澤大学進学前に20歳以下の世界陸上日本代表選手に内定を決めてしまった事。歴代の選手を見ても、ハイペースでしっかりと押し込め続けるパワーは極めて図抜けていると言ってもいい。

駒澤大学入学後はコンディション管理などで苦しんだ時期こそあったものの、駅伝シーズンでは絶好調。その才能の高さを改めて周囲に示して見せた。

まだまだ距離には不安が残るがそれでも今後が楽しみになってくる選手であることに変わりはない。

怪物の課題

身長184センチという長身を生かしたパワフルな走りが持ち味の佐藤くんは、既に高校生離れした高いスピードが持ち味であることが分かる。そしてそれらを継続できるだけのパワーがある。

しかし、ラストの切れ味という面でもいささか難があるように思える。例えば全日本大学駅伝でラスト創価大学の葛西潤くんに競り負けた場面でのことだ。5000のスピード感で言えば当然葛西くんよりも分があるにもかかわらず、最後葛西くんに競り負けたのはまだまだ彼にはスピードランナーとしてあるべき「キレ」が不足しているからに他ならない。

それでも出雲と全日本では区間記録更新を打ち立て、特に前者での活躍は憧れの田澤廉くんから「妥当」と言われる程彼は素晴らしい練習を積んでいるのだ。

当然ながらまだ18歳である彼にすべてを求めることは酷。大八木弘明監督を始め駒澤大学のスタッフたちも頭を巡らせながら佐藤くんの強化にいそしんでいることだろう。
田澤くんと練習をとことん積み重ねていくことにより、その課題も解決へと導かれていくはずだ。

彼は最終的にどうなるのだろうか?

佐藤くんの走っている「様」を見て真っ先に目に付くのは筋肉の不足。
身長184センチながら66キロしかない体重だと作れる部分も限られてくるだろうが、それにしては体重も筋肉量も少ない。

田澤くんも体つきはがっちりしている。それが彼の弾丸のような走りを生み出しているわけだが、佐藤くんがもしそこにしっかりと筋肉をつけることが出来たならば……。

強くパワフルな走りをし、かつそれを維持できるのは才能なだけに、そこでよりタイムを向上させることにもつながりそうだ。
既に練習では田澤くんについて行くこともできるくらいのハイレベルな練習を積み重ねているのは周知の事実。スピードの強化については何も心配要らないだろう。寮生活の中でも体についてはビルドアップをしていけるはずだ。

そんな彼が辿り着く先を考えてみると、当然それは田澤くんということにはなるかもしれない。身体の使い方のダイナミックさとストライドの広さ。
速いペースで押しながらもラストでしっかりと押し込めるランナーとして、世界レベルで戦うことができるランナーの条件を満たしている。

田澤くんは4年生で世界陸上を経験し10000メートルで20位だった。では、佐藤くんは?実はもう来年には世界を経験できる絶好の機会が待っている。
ブタペストへの切符を手にするために必要なのは5000メートルで13分7秒0。日本記録を更新しなくてはならない。現状自己ベストが13分22秒91の彼が出場するのは現実的では無いのだろう。

だが、いち早くその環境・空気に触れることができるかどうか。それはこれからの成長にかかっている。そして、同じJAPANのユニフォームを身に纏った田澤くんと佐藤くんの姿を今から夢見るというのも、中々楽しいものだ。

何とかパリ辺りで間に合わせていただきたいなぁとも思う今日この頃である。

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