飯島理彰「顔」
ようやく新生山梨学院の「顔」が見えてきたかな……。そんなことを感じる駅伝となった。2年連続シード権を逃すだけでなく、主力選手の故障が相次いでベストな布陣を組むことも叶わず繰り上げスタートに終わっていたこれまでとは打って変わって、シードを目指し走る山梨学院の選手たちの活躍には驚きを覚えた。
それと同時に見えてきた飯島監督の「顔」もまた、徐々に見えてくるような。そういう大会になってきたと思うのだ。それはある意味で「前任者が偉大過ぎた」という苦しみからによるものかもしれないが……。
20年間支え続けた上田監督の「右腕」
飯島監督を語るうえで忘れてはいけないのは、前任監督の上田誠仁さんだろう。現在も精力的に活躍されている上田さんの一方で、飯島監督は必ずしも表立った存在ではなかった。
しかし、各校のマークが厳しくなり留学生起用も1名となった箱根駅伝においてシードを確保することは決して容易ではない。その中でシード10回獲得の立役者となっていることは言うまでもないだろう。
しかし、しかしだ。もっと評価されるべきであろう飯島監督がここまでも影が薄いのが気になっていた。いうなれば、上田さんからすべてを引き継いだばかりに「上田色」が強いままこの数年箱根駅伝を戦っていたようにも見えるのだ。
決して上田さんが悪いわけではない。飯島監督もできる限りのことをしていただろう。しかし、この数年山梨学院が駅伝ファンの中でも話題となった機会は決して多いものではなかった。加えて「飯島色」と言い切れるものもあまり感じることができなかったのも個人的な感想だ。
そのチーム状況が「山学バズらせてもろて」というスローガンにまで影響をしていたのかな……と今となっては邪推してしまうほど、ポジティブな要素は少なかった。
昨年の関東インカレでも2部降格寸前まで行ってしまうほどのチーム状況であったが、一方で夏になるとチーム状況も大きく改善していった。
初めて「万全の状態」を見ることができた
秋口より選手が急成長し、木山くんだけでなく北村くんという日本人エースが出てきて、留学生もムトゥクくんとムルワくんが競い合うなど過去2年とは大きく異なる布陣で臨むこととなった本大会。
結果は言うまでもなく序盤から1区2区上位に行くも、その後は徐々に差が付き最終的には総合14位でのゴールとなった。しかしながら、過去2年とは異なり繰り上げスタートがなかったことと、シード権へと向けて食らいつくことができたことのは収穫だろう。
何よりも本来走るべき選手が走れば、少なくともシード権を争うだけの能力があることは今大会ハッキリしたことは、山梨学院大学の面々や飯島監督にとっても大きなモチベーションになるに違いない。
どうしても「上田さんの影」に隠れて見えなかった飯島監督がようやくはっきりと、その輪郭が見えてきそうな雰囲気を感じている。良いチームは輪郭がはっきりしているし、またそれがチームカラーにもつながっている。駒澤大学の大八木前監督にしてもそうだし、青山学院大学の原監督にしてもそうだ。上田さんの色からいよいよ、飯島監督の色に塗り替えていく。そういう時がいよいよ来ようとしているのではないだろうか。
本当の「バズ」は結果で示すもの
これまで見えてこなかった顔がようやく見えてきた今。もう少し時間はかかるだろうが飯島監督のチームに変貌を遂げたときに、まずシードという目標にたどり着くだろう。
近年は山梨学院大学に入学してくる生徒たちも、青山学院大学や駒澤大学に入学するような優れた選手たちばかりとは言えない。だが、留学生という大きな存在と競い合いながらもチーム力を高めていくことはできる。当然そこには個の力をつけていく、という重要なこともミッションとなるわけだが……。
留学生がいる。これこそ山梨学院大学だからこそのアドバンテージだろう。絶対的な力のある日本人選手がいないからこそ、留学生ランナーに負けないあるいは留学生ランナーを助けることができるクラスの選手が出てくるようにするためにも、飯島監督をはじめとしたコーチのサポート、選手たちの努力が不可欠と言える。
おそらく北村くんが次の日本人エースとなるだろうが、彼に次ぐあるいは彼以上の選手が出てくれば……。山梨学院大学は再びバズることができるはずだ。飯島監督もまたそれによって「バズる」ことだろう。
さわやかな色のユニフォームに変った今……。それを「飯島カラー」にして再びバズることができるかどうか、その1年に今年はなりそうな気がしている。