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大志田秀次「惜しむ」

惜しい。本当に惜しいと思った。東京国際大学において彼の退任はあまりにも勿体無いとすら感じる。2011年に監督就任してから早くも10年以上。彼の手腕と人柄を知っていれば、この1度のシード落ちで退任というのがどうしても納得がいかないのである。

多くの人から慕われていた彼が残した功績はとてつもなく大きなものだということはわかっているはず。それは「戦術・ヴィンセント」だけでない、ダークホースとしてかき回したこの4年間に表れている。

3人から始まった東京国際大学

「このチームをスタートさせた当時、中大でコーチをした時の練習を応用していたのですが、選手たちは半分もできなかったんです」

https://the-ans.jp/coaching/coaching-coaching/209813/2/

中央大学で箱根駅伝を総合優勝に導き、社会人ではHONDAのコーチとしても活躍していた大志田さんが東京国際大学初期のメンバーはたったの3人だった。しかし、当然ながら力のあるランナーが来るわけもなく、校内放送で勧誘するなどのことも行っていたほどだった。

距離走でも抜け道を使う選手も多くおり、選手強化としては決して順調に行っていたわけではない。そうした中で強豪校の合宿に参加させるなどして種を蒔き、着実に成長していった2016年。

渡邊和也さんが入学してから一気に風向きも変化した。すでに実業団で実績のあるランナーだった彼が入学したことも後押しとなったのか箱根駅伝を勝ち取ると、2017年シーズンからは連続出場を続け、今大会で6年連続となっている。

「一方通行にならないように話を聞く」指導を重視する大志田さんにとって、しかし必ずしも彼は強い芯をもって接し続け、東京オリンピック代表に伊藤達彦選手を送り込むなど指導者としても高い評価を得ることとなった。

3年連続シード権も決してフロックではない。日本人エースであった丹所健くんもまた、3年時には3区区間賞を獲得するなどレベルが低いわけでもなかったのだ。だからこそ、ここまで立ち上げから積み重ねてきた彼がここで退任するということがどうしても腑に落ちないのである。

難しいシーズンだった2022年

今シーズンは極めて難しいシーズンだった。ヴィンちゃんことヴィンセントくんはケガに苦しみ、日本人エースの丹所くんもまた不調に苦しんだ。ほかにも主力選手たちの駅伝での成績も芳しくなく、出雲では8位で全日本は11位だった。

多くの選手たちが不調に苦しむ中でもなんとか活路を見出したかったのだろうが、結果としてなかなかハマることなくシードにもあと一歩届かない11位という箱根の結果に終わってしまった。

苦しいシーズンとなった東京国際大学だったが、それでも「将来のエースに」と期待を寄せていた白井勇佑くんをはじめとして次の世代への芽吹きは出ていた大会でもあったわけだ。その中での退任はいささか疑問を覚えているのだが……。

大志田さん自身がそこまでこだわりなく、本来交代するということが既定路線だったのならば総監督となる横溝三郎さんが新たに就任されたが、現場でどれだけ指導ができるのかということを考えたときに難しいものがある(ましてや83歳というのがより難しくさせている)。

また、大学側からの解任であるならばいささか安易かなぁとも思わないでもないのだが……現状ではそうと絶えられてもおかしくはない。いずれにしても初期から携わってきた人物がこのような形でひっそりと退任されるのは違和感を覚える。

真相を知りたいとは思わない。ただ……

正式に古巣であるHONDAにヴィンセントくんと丹所くんを引き連れて出戻った形になった……ということも考えても解任というのが想像できてしまうのが悲しいところではある。こちらに関して私は真相を知りたいとは考えていない。

学生スポーツと呼ぶにはあまりにも広告塔として大きくなりすぎた箱根駅伝という競技は、間違いなく東京国際大学という大学にとっても「看板」だったと言っていい。しかし、大学側という大きな事情で退任をするという結果になったというのなら、それはとても残念なことだし、また本来あってはならないことでもある。

また、大志田さんご自身の意思も働いたのかもしれない。だとするならば、彼の退任はあまりにも惜しい。彼の優しく選手を諭すような指導に穏やかな語り口。また、その中だからこそまた「第二の伊藤選手」が出てきたかもしれないというのに……。もし11位という結果で責任を取ったということなのであれば残念でしかない。

いい意味でドライな一面もある彼なので、そうした部分では何かしらまた陸上に携わるのかもしれない。ただ、この悔しい経験を生かした大志田秀次さん率いる東京国際大学を見たかった。そう思うと、彼の退任が残念でならない気持ちにまたさせてしまう。

実に惜しいことをしたと思っている。彼にとっても、そして東京国際大学にとっても、だ。

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