出雲駅伝2024感想「削りあい」
ということで國學院大學の優勝で終わった今年の出雲駅伝。当然駅伝序盤戦となるこのレースに勝った=箱根駅伝で勝てるという保証はないが、1つタイトルを取ったということが何よりも大きい。
久方ぶりになかったレース上の削りあいを見て行こう。
例年より暑い中行われた
例年よりも高い気温の中で難しいレース運びとなった今大会。しかし、時間の経過とともに日差しは落ち着き、後半は関東勢がらしさを見せる大会となった。
レースとして主導権を握っていたのはアイビーリーグ選抜。力のあるランナーが揃っているとはいえ、まさか入賞圏内に入るとは思わなかった。一見すると身体のフレームと筋肉の付き方的に長距離には向いているとは思えないが、中長距離になるこのレースでは相性も良かったのではないか。
そうした中で京都産業大学もあともう一刺し行ければと思われたが、そこが悔やまれるところだろうか。だが、エース格の選手は関東勢に負けないだけのポテンシャルを持っていることは証明された。
最終的に1位國學院、2位駒澤、3位青学となったわけだが、レース展開としてはすさまじい削りあいとなったような気がする。
2区ですべてを決したかった青山学院
1区の鶴川くんの区間賞から始まった青山学院だったが、本来レースプランとして「鶴川くんでタイムを稼いで一気に逃げる」がプランだったのだろう。しかし、2区に配置された野村くんを追いかけてきた創価の吉田響君によって早くもレースプランが崩されてしまう。
エースの黒田朝日くんが奮闘こそすれど、駒澤大学の山川拓馬くんの好走によって想像以上にタイムを稼ぐことが叶わず、4区と5区の駒澤との削りあいの中ですり減らされてしまったし、6区の太田くんもやや精彩を欠いていたように思った。
全日本では太田くんが競った展開にすることが何よりも肝要となるので、そこら辺を青学として修正していけるかどうかがカギとなるだろう。いずれにしても全日本と箱根と距離が伸びてくれば当然その分脅威になることは間違いない。
力負けも「戦える」ことを証明した駒澤
正直今年は駒澤大学も厳しいと踏んでいた。エース格の1人である佐藤圭汰くんの欠場、春先の不調も相まって力あるランナーたちが力を発揮できないまま駅伝シーズンに突入してしまうのでは。
そのような不安を3年生と2年生が払しょくしたと言ってもいいだろう。山川拓馬くんや伊藤蒼唯くんは当然ながら力のあるランナーだし、同級生の帰山侑大くんも粘りを見せるなど経験不足が気がかりだった選手たちの中できらりと光るものを見せてくれた。
優勝にどこまで近づけるかは疑問が残るものの、彼らは優勝をかけて戦えるチームであるということを今シーズンも証明してくれた。藤田敦史監督も難しいかじ取りを迫られるだろうが次は駒澤が得意としている全日本だけにぜひともやり返してほしいところだ。
篠原くんはロードレースの難しさをまざまざと感じたはず。しかし、彼が持っているスピードで間違いなくやり返してくれることを信じている。確実にランナーとして華奢な体が中距離を戦う選手の身体になってきているだけに、やり返してくれるのを期待したい。
絶対的大黒柱へとつなげた國學院
結果として國學院が今大会を制することとなったわけだが、序盤からしぶとく上位につけ、平林くんにつなげるまで決して垂れることなくしつこく上位を狙っていたことは見事だ。
青学は1区から実力者を投入する中で駅伝慣れしている選手たちが繋ぎ切ったのは、決して派手な戦いではなかったかもしれないが優勝できたのは何よりも大きい。
いい選手が居ながら勝ちきれないがイメージとしてあった國學院にとっても、次の全日本や箱根となって行く中で良い形で次につなげられるレースとなったように思える。
距離が伸びてくればその分だけミスのリスクも大きくなるだけに、前田監督はじめ各選手たちもまた明日からハードにトレーニングを積んでいくに違いない。
決してどの大学も油断ならない
前年箱根で優勝した青学も、2冠の駒澤も序盤から小さなミスを取りこぼすことなく積み重ねた結果としてタイム差などに反映されている。見た感じ各大学でそこまで力の差は感じない(と言っても頭1つ抜けているのは、青学・國學院なのに変わりはないが)。
例えば創価は留学生のムチーニくんが出場していたらどうなっていたか分からないし、1年生の山口くんをエース区間の3区を経験させることができたのは何よりも貴重だ。
城西も駅伝は甘くないことを痛感したと思うし、早稲田も決して順位としては悪くない。東洋と大東文化も1年生を多く起用できたことは一見「捨てゲーム」のように見せて秋が深まりお正月を迎える時期となったときに大きな化学反応を生み出すことだろう。
今年は相当細かな削りあいがどの大会でも見られることとなるだろう。ここを楽しむことができたなら、駅伝を楽しむことができるはずだ。