![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/99402082/rectangle_large_type_2_6e4fec79300dc280fcff3c1fe14d48cc.jpeg?width=1200)
花田勝彦「臙脂の矜持」
青天の霹靂、といったら語弊はあるかもしれない。しかし、少なくとも花田勝彦監督の就任は遅かれ早かれ期待されていた…というのは事実ではないだろうか。
前任者であった相楽豊チーム戦略アドバイザーも残る中、しかし優勝から10年以上遠ざかりそして前回大会ではシード落ちしたかつての名門はどのようにして再び復活したのだろうか。
相楽豊アドバイザーの「遺産」とは
今回の結果につながったのも私の力というよりも前任者の相楽君が昨年、一昨年とスピード強化をしてきて、そのベースができていたから
前任監督であった相楽さんは監督としては2度のシード落ちこそ経験しているものの、元々は渡辺康幸さんと二人三脚で早稲田を立て直し、2010年度には三冠を達成した際の参謀としても知られている。
その時を含め17年間で14度のシード権獲得、というのは少なくとも競争が激しいといわれる箱根駅伝の中でも相当の安定感を誇るといってもいい。
しかし、名門と呼ばれ瀬古利彦さんや佐藤敦之さん、大迫傑選手といった名選手を輩出してきた名門としてはこの間の優勝1度というのはいささかオールドファンには納得できかねる結果だったのだろう。
ただ、その中でも太田智樹選手や太田直希選手、中谷雄飛選手に井川龍人くんといったポテンシャルの高い選手たちがトラックにおいて一定の結果を出しているという点で相楽さんはやはり評価されていいと思うのだ。
そうした、トラックにおけるスピードの強化。こうしたものは相楽さんがチームに残した最大の「遺産」だったのだ。
では、花田監督が付け加えていかなければならないものとは何と考えているのだろう。
駅伝で求められていた「強さ」
速さの部分ではうまく指導ができていたと思うんですけど、箱根駅伝を含めて駅伝では周囲から求められる強さと言いますか......早稲田は期待度が高いので、そこに応える走りができていなかった
花田監督が就任当初語っていたことがこれだった。早稲田は良くも悪くも注目を浴びる伝統校でもある。それであるがゆえに、どうしても選手たちへのプレッシャーが増大してしまう。
それを受けて走ることができたのが竹澤健介さんであり、渡辺康幸さんだった。大迫選手はどこ吹く風というか、ぶれない自分の強さを持ってそれをはねのけていた印象があった。
おそらくだが、花田さんが今学生たちに求めているのは大迫選手のような自分自身を強く持つということなのではないか。上武大学という箱根駅伝に出場したことのない大学を箱根へと導き、GMOという実業団で新設されたチームでニューイヤー駅伝出場まで漕ぎつかせた彼が多くの選手を見てきたからこそ。
そこにこそ「強さ」を求めているのではないか。ただ、花田監督のコメント自体は極めて冷静そのものだ。
早稲田はまだ優勝を狙いますと言えるチームではないと思います
そんな一朝一夕で変わるものではないと信じているからこそ、冷静にチーム強化へとつなげていくことを心掛けている様子だ。
「臙脂の名門」という矜持を見せられるか
確かに、井川龍人くんが卒業して来季へとつながる今、早稲田はシード獲得が最低ラインの目標と言っていい。
優勝を狙うにはいささか程遠い印象がある。だが、それでも決してファイティングポーズをしていないわけではないのだ。
周囲が早稲田はひょっとしたら3位以内にくるかもねって言われるような状況を作っていきたい
この言葉には「油断したら倒すぞ」という明確な相手への威嚇があり、そして必ず勝つという強い意志が秘められているように感じられる。実際にまだまだ大きく伸びていくであろう選手たちが多くいるし、この1年で「負けるチームではない」ということは分かったはずだ。
何よりも見る目が変わった。
青学の原監督も駒澤の大八木監督も。「そのうち早稲田が来るな」と声をかけたのはそれだけ早稲田に可能性があるということだ。強いランナーを揃え、そして100回か101回の箱根路で…。
臙脂にWのユニフォームを身に纏った選手が先頭を走っている姿を見せるために。
花田勝彦監督を始めとした早稲田は来季へと向け、今牙を研いでいる。