ラノベ#10
これまでのイスのあらすじ:背もたれがあり、座れるようになっている。
生物ではないのに足がある
だいたい、重たい。
8年は使う。
子供が居たらだいたいシール貼られる(ガムのオマケのん)
大人になってから裏側は滅多に見ないが、子供の頃は不思議と裏側をよく見た。
椅子が倒れる事を含むアクシデントに良いアクシデントは無い。
【魔王様は倒されたい#10】
「、、、、?? 鍋の、、、フタ、、??」
足元でカランカランと乾いた音を立て、弧を描きながら転がる蓋を見ながら呆然としている私に聞き慣れない男の声が響く。
『よしっ!!魔王の弱点の、鍋のフタが命中したぞ!!!!』
ガッツポーズを取りながら、黄金の鎧を纏った勇者風のいでたちの男が叫んでいる。
(どうして、、??鍋のフタは既に弱点では無いけど、、でも、どうして前魔王の弱点を知ってるんだ??私達が挑戦した時も、ネットのどこにも攻略に関する記載はされてなかったハズなのに!)
声の主のステータス画面を確認すると、
[職業:勇者 名前: 【♰ ルシフェル♰】]
となっていた。
この名前、もしかしてコイツら、前魔王の【† 死黒聖天†】さん率いる超厨二病ギルドのメンバーなのでは無いか??
超厨二病ギルドのメンバーは、名前がだいたい厨二っぽいのですぐに分かる。
【† 死黒聖天†】さんみたいに、自分の名前を“【】”と、妙な形の十字架で囲いがち。
他の4人のメンバーも見てみる。
[職業:剣士 名前:童子切安綱]
おるおる!!日本刀の名前つけるヤツ!!
[職業:魔術師 名前:デギュスタシオン]
響きは厨二っぽいけど、デギュスタシオンて「試食」て意味やぞ?
[職業:剣士 名前:雪姉(無言申請お断り・フレLV16以下は切り捨て)]
おるおる!名前の後ろに自分のルール書くヤツ!、、、こいつ、フレンドに求めるレベル低いな!16で良いんや。
[職業:剣士 名前:暴力 殺(ぼうりき あやめ)]
、、、コイツはちょっとオモロいな。
あと、剣士多いね。
なんて思っていると、“ソレ、防御力あるの?”と疑問を抱かせるような、鋼鉄で出来た赤いビキニを着ている剣士の雪姉(無言申請お断り・フレLV16以下は切り捨て)が勇者に言う。
『ねぇ?ホント??鍋のフタが弱点なんて、にわかには信じられないんだけど??』
【♰ ルシフェル♰】『大丈夫さ!唯一、魔王を攻略した【† 死黒聖天†】さんがネットに載せてくれた攻略法が本当なら、これで魔王はほぼノックアウトだ!!』
童子切安綱『でもよ、その情報、ホントなのかよ??
なにせ今までゲーム内でも掲示板でも音信不通で、死んだんじゃ無いか?とも囁かれていた
【† 死黒聖天†】さんだぜ?
そんな人が、今さら急にネットの掲示板に現れて魔王の攻略法を掲げるなんて、なーんか変なんだよなぁ。
なぁ、そのカキコミしたヤツ、偽物なんじゃねぇ?』
デギュスタシオン『まず、自転車を降りて言え』
童子切安綱『いや、だって、魔王城2階には駐輪場あるって聞いたから自転車で来たのに、駐輪場無いんやもん。無人のカジノあるだけなんやもん。。』
デギュスタシオン『あの無人カジノのせいで、ノワールの16にコインをベットして、回らないルーレットを眺め続ける無駄な2時間を過ごしたのよね。。』
暴力 殺(ぼうりき あやめ)『それだけじゃ無いわよ!
駐輪場が無いどころか、出てくるのは経験値効率が良いモンスターばっかって書いてたのに雑魚モンスターばっかだし、
宝箱には滅多にお目にかかれないレア装備が入ってるって聞いて期待してたのに全部目薬、、、
こんなに目薬ばっか要らないわよ!
全部情報が間違えてるわよ!!』
デギュスタシオン『確かに!空気清浄機もそんなに無かったし、ガッカリよ!!
私達、ニセモノの【† 死黒聖天†】のカキコミに騙されたのよ!かつがれたのよ!一杯食わされたのよ!ダシにされたのよ!騙されたのよ!』
童子切安綱『ニセモノ、、か、あるいは本物で、厨二病ギルドを除名された事に対する俺たちへのハライセ。だったり』
【♰ ルシフェル♰】『おいおい、みんなが見れる掲示板に書いてあったんだ。俺たちギルメンだけピンポイントで騙そうなんて無理だ。
それに、今までの情報は違ったかも知れないけど、まだ鍋のフタが弱点じゃ無いって決まった訳じゃ無いだろ?』
この目の前にいる勇者パーティーの会話で悟った。
推測するに、きっと3年も地獄の退屈を過ごした【† 死黒聖天†】さんは、それを解放した私に感謝してか不憫に思ってか、ネット掲示板に魔王の攻略法と魔王城に行くメリットなどを書いてくれたのだろう。
魔王の時は監視されていて、攻略に繋がる発言やカキコミは規制されてしまうが、晴れて魔王から解放されたのならネタバレし放題だ。
ここからは更に推測になるが、魔王討伐がカンタンだと明かす事によって、恩人である私以外にも、次の魔王、更にその次の魔王の刑期も短いサイクルで回そうとしていたのでは無いか?
ただ、誤算があるとすれば、私が不要なリフォームと弱点変更をした事だ。
このままでは、【† 死黒聖天†】さんが書き込んでくれた情報は全部ガセネタだったと糾弾されてしまう。
そして、誰も私を倒しに来てくれない。
そう瞬時に察した私は、
「いや!ちょっと待て!君たち!!
実は弱点は鍋のフタから、目薬に変わったんだ!!」
と言おうとした。
が、その瞬間、全身に電気が走った。
そうだった。魔王自身は現実世界でもゲーム内でもネタバレ厳禁・即ペナルティがあるんだった。
「ギィヤアァァァァァ!!!!」
私はペナルティ電撃に思わず叫んだ。
【♰ ルシフェル♰】『ほら見ろ!!!!鍋のフタが効いてるぞ!!!
やっぱり弱点だったんだ!!』
「違うんだ!鍋のフタで苦しんでるんじゃ無いんだ!ペナルティ電撃に苦しんでるんだ!」
そう咄嗟に言おうとしてしまい再び襲いかかるペナルティ電撃。
「ギィヤアァァァァァ!!!!!!」
デギュスタシオン『信じられない。。まさか、本当に鍋のフタで弱体化するなんて!』
(違うんだ!!何か手はないか、、??弱点が目薬に変わった事を伝える手段は、、???)
「目が、、、!目がァァ!!目がァアアアアアーア!!!」
気がつくと私は目を押さえ叫んでいた。
目が痛い人のフリをしたら、きっと優しい人なら目薬をくれると期待したのだ。
しかし、相手は勇者だった。
【♰ ルシフェル♰】『よしよし!!効いてるぞ効いてるぞ!!昔見た天空の城のナントカってアニメ映画のムスカも死ぬ直前あんなんやったもん!!』
私「違っ、、、!」
童子切安綱『ムスカて誰やソレ!』
【♰ ルシフェル♰】『ムスカ分からん?あれよ、ロムスカよ!ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ!!』
私「ムスカの古の名を覚えてるのに、なんで映画のタイトル忘れてんねん。古の名の中にラピュタって入ってるやろ」
童子切安綱『あぁ、ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタね!ムスカって言われたから一瞬誰?ってなったわ』
私「古の名しか知らんヤツ珍しいな!」
デギュスタシオン『あぁっ!!!
ちょっと待って!、、、ホンマや。。
この魔王城も浮いてて、天空の城よ!』
私「そんな伏線張った覚え無いわ!何の“ホンマや。。”やねん!
あれ?でも、確かに天空の城やし、ホンマや。。」
暴力 殺(ぼうりき あやめ)『じゃあ、攻めるなら今がチャンスって事じゃ無い!?』
童子切安綱『、、、、かもな!!!』
私「おまえは早く自転車から降りろ」
残念な事に、私が彼らの会話の合間に挟んでいたコメントは全て、“ギィヤアァァァァァ”の苦痛の叫びで声がガッズガスになっており、何一つ彼らには聞こえていなかった。
デギュスタシオン『暴力の言う通りよ!!みんな!準備はいい!?』
このままでは、まずい!!何も弱体化してない無敵状態なのに、彼らは私が瀕死だと勘違いしている!
、、そうだ!!
私「あ“、、、ほら、、あれ見て、、Q、、R!!」
ガッサガサの声で壁を指差し、彼らに伝えた。
デギュスタシオン『何??Q、、Rって言ったの??』
雪姉(無言申請お断り・フレLV16以下は切り捨て)『確かに、壁の白のタイルと黒のタイル、QRコードみたいになってるわ!!』
童子切安綱『お前、めちゃくちゃ久々に喋ったな!!』
【♰ ルシフェル♰】『まぁまぁ、何か意味があるのかも?QRコードを読み込んでみよう。』
彼らは壁に向かってカメラを向けた。
発注したQRコードは読み込めば、次の文字が表示される。
❇︎
・クイズ・
《タヌキがこんな文章を書いたよ。なんて書いてあるのかな?》
タタタタタタタタタタタタじゃくてんタタタタタタタタタタタタはタタタタタタタタタタタタめぐすりタタタタタタタタタタタタ99個なげることですタタタタタタタタタタタタタタタタタ。タタタタタタタ
ヒント1:宝箱には何が入っていたかな?
ヒント2:宝箱は上から見たら、ある形になっていたよ。
ヒント3:もう、そういう事だよ。
❇︎
このクイズを説けば、誰でも弱点が目薬99個投げると分かるハズ!!
デギュスタシオン『、、読み込めたわ!!
、、ステーキ肉の画像がたくさん出てきたわ!』
童子切安綱『かわいそうに。。気でもフれたんだな。』
私「なっなにぃーーーーー???」
読み込んでみた。確かに、めちゃくちゃステーキ肉の画像がたくさん出て来た。
(※実際に、前回のQRコードを読み込むと、ステーキ肉の画像がたくさん出てくるよ!就活がなかなか上手くいかない夜などに見てみよう!)
私「せ、、せ、、施工不良だー!!」
【♰ ルシフェル♰】『よし!魔王は弱点を突かれて混乱状態だ!!!今だ!攻撃をたたみかけるぞ!!!』
童子切安綱(以下、「安綱」で表記)『みんな、準備はいい?』
デギュスタシオン(以下、「シオン」で表記)『全く、誰に言ってんの?』
暴力 殺(ぼうりき あやめ)((以下、「前澤モトカノ」で表記)『よし!この一撃に、全てをかけるわ!!』
雪姉(無言申請お断り・フレLV16以下は切り捨て)(以下、「請お」で表記)『いつでも準備オッケーよ!!』
私「や、や、やめろーーーー!!!!!!!」
彼らを心配して発言した“やめろー!!”も、追い風と勘違いしている彼らには断末魔に聞こえてしまった。
【♰ ルシフェル♰】『くらえーーー!!!必殺!
メリル・ストリープ!!!!』
安綱『切り裂け!クリスプラットーーー!!!』
シオン『濁流の中で懺悔しな!オーランドブルーム!!』
請お『哭け!血を散らせ!ブラッドリークーパー!!!!』
前澤モトカノ『惜しい人を亡くしました!リバー!フェニックス!!!!』
どうしよう??全員、必殺技っぽく、演技に定評のあるハリウッドスターの名前をそれぞれ叫びながら突進して来る!!!!
そして、彼らは、向けた切先が私に届く前に私を覆うバリアによって、全ての衝撃が自身に跳ね返って
、倒れてしまった。。。。
古びた魔王城の王の間。
その広い空間に立っているのは勇者と魔王のみ。
立っていると言うには語弊がある。
勇者は、ようやく立っている。
勇者の仲間たち4人は既に倒れ
「逃げて、、、」と虫の息を吐き出す声で勇者に伝える。
広間の青い石柱に彫刻された無数の竜の彫刻が、口を開け無表情に2人の勝負の行方を見守っている。
ボロボロになった黄金の鎧をまとい、先の折れた剣を構え勇者が咆哮する。
「クソぉーー!!!こんなの反則じゃねぇか!!全部の魔法と物理攻撃が、ほとんど通用しないなんて!!!!
でもよ!!俺は!倒れた仲間たちの気持ちを、、この、一振りに込めるぜ!!!
ウオォー!!!!!!」
折れた剣を振りかぶる勇者。
迎え撃つのはドス黒い炎を纏った巨大な竜の形をした魔王。
私はこう思った
『あぁ。。マジでいらん事をした』
【続く】
あとがき:
勇者パーティーの名前を“(以下○○で表記)”にするタイミング遅すぎましたね。
あと、QRコードは、ホンマに黒い点の一つで大きく変わるんですね。
筆者も、自分の家族の可愛い猫の動画を表示される様にガムテープでQRコードを作りましたが、出来上がったQRコードを読み込んだら、なぜか棚が表示されました。
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