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Bistik~オランダ由来?の謎のインドネシア料理〜

わたしがチャプチャイという中華料理由来のインドネシア料理をよく食べに行く店に、謎のメニューがあり気になってました。
この店は日本でいう町中華で、安い中華料理屋になります。
メニューは中華料理が大半でインドネシア料理も混じるという構成なんですが、Bistikというジャンルのメニューがあります。

真ん中の1番下

わたしは何だろうかと思い、ネットで調べてみると、中華料理ではなく西洋料理のように見える料理でした。元はビーフステーキと書いてあります。

なぜ中華料理屋にビーフステーキがあるのか?
これは食べてみるしかないと思い、注文してみました。

ビスティック(Bistik)の味

わたしは牛肉にすべきと思ったので、鶏や魚介やらあるなかで牛肉(Sapi)Bistekにしました。

見た目はビーフシチューのようです。そしてポテトが一切れおいてあります。

まずスプーンでスープをすくって飲んでみます。
トマトベースで、まったく辛くありません。赤色はトマトの色だと思います。
他に入っているのはおそらく玉ねぎ、にんにくです。
調味料はケチャップマニスという甘いソースを使っていると思います。
それと塩コショウですね。

ニンジン、マッシュルーム、セロリが入っていてもおかしくありませんが、インドネシアの場末のレストランで、そこまでやらないような気もします。

例えれば、デミグラスソースを使わないハヤシライスに近い味です。

牛肉は若干固めです。長時間煮込む料理ではないのでしょう。

あらためてBistikとは?

Beef Steakのオランダ語biefstukがインドネシア風の発音になった料理のようです。もともとはビーフステーキだったと思いますが、料理としてはかなり変化しています。
日本のビフテキがビーフステーキとほぼ変わらないのとは違います。

ちなみに日本のビフテキはフランス語の「bifteck」ビフテックから来ているそうです。
ステーキの語源はウィキペディアによれば、「串で刺した肉」を意味する古ノルド語「steik」で、「串焼きにする」を意味する「steikja」と、「炙り焼きにした」を意味する「stikna」に関連するとのこと。
古ノルド語は、北欧で大昔話されていた言葉です。
原始的な食べものだったんですね。全く知らなかったけど、言われてみればただ肉を焼くだけだから原始時代そのものです。

普通ビーフステーキと言えば塊肉を焼くイメージですが、インドネシアのビーフステーキは細切れ肉を使います。
また、ソースで煮込むシチュー系の料理になっています。

Bistik (read “bees” + “stick”) is basically Indonesian beef steak. It is originally a very popular dish in Solo, a city in Central Java, along with selat Solo (Solo salad). The name most likely evolves from Dutch biefstuk, and becomes bistik overtime. It also sounds like beefsteak, isn’t it? 😊

The dish itself is almost certainly a Dutch origin, given the long history of Dutch colonization of Indonesia. But if you go through the list of ingredients, you can tell that the flavor of this dish is completely Indonesian.

It is interesting to note that for Indonesians, bistik is not limited to beef steak. Any steak, from beef, chicken, fish, is called bistik. So a chicken steak is called bistik ayam and a fish steak is called bistik ikan. For beef, it’s just bistik, or bistik sapi.

https://dailycookingquest.com/bistik-indonesian-beef-steak.html

さらにおもしろいのは、ビーフステーキなのに、チキン(Ayam)や魚(Ikan)でもビスティックなんです。Bistik AyamとかBistik Ikanというメニューがあります。

おそらく調理方法をビステックというようになったんですね。

そして興味深いのは、ジャワ島の中部にあるソロという街ではぐくまれた料理というところです。
オランダ植民地時代に中心になった都市ではなく、むしろ日本でいう奈良にあたる古都です。
この街でインドネシア人の味覚に合うよう独自の進化を遂げ、他の都市ではなくなったビステックがソロだけで生き残ったのかもしれません。

フィリピンのBistek

英語の情報を調べていたら、フィリピンでもBistekがあることが分かりました。
フィリピンはオランダではなくスペインの植民地だったため、スペイン由来の食べ物となっています。

Bistek Tagalog is a classic Filipino dish made of thinly sliced beef braised in a mixture of citrus juice (more commonly, the local fruit, calamansi), soy sauce, onions, garlic, and pepper. A delicious medley of salty, tangy, and savory flavors, it's traditionally served with steamed rice.

Also known as beefsteak, it was adapted from the Spanish bistec encebollado to suit our local tastes and Indigenous ingredients. Other affordable proteins, such as pork steak, chicken bistek, and crispy chicken liver a la bistek, are now used in this cooking mode.

https://www.kawalingpinoy.com/bistek/

なんとフィリピンでもビーフ以外の肉、豚肉、鶏肉、鶏レバーまで全部Bistekになります。豚ビーフステーキって明らかに変なのですが、なぜなんだろうか。

作り方の動画です。タガログ語らしく何を言っているのか分かりません。

でもオランダ語よりスペイン語の方がBistekに近い
スペイン語でビーフステーキはel bistecというらしいのです。

スペイン語圏の南米にもBistecという牛肉料理があるようです。

わたしの仮説

Bistikはオランダ由来ということになっているが、オランダ語のビーフステーキと発音がかなり異なるため、フィリピンから伝わったのだろうと思われる。スペイン語のBistecとほぼ同じだから。

Bistecを訳すと①ビーフステーキ②ステーキとあり、ただステーキという意味にもなるらしい。
そこから、ビーフだけでなく、鶏でも豚でも魚でもBistekを使うようになったのだろう。
牛以外にもビステックを使うのは、フィリピンとインドネシアのみであることから、フィリピンから概念として入ってきたと考える方が自然。オランダ語から来たのであれば、牛以外に使わないはずだ。

フィリピン説に逆説的に作用する事実としては、インドネシアのビステックがソロで生まれたという歴史。
フィリピンと距離的に近く貿易も盛んだった場所としては、スラウェシ島のマナドやマカッサルだし、北モルッカ州のテルナテ、ティドレも近い。
ジャワ島であれば、スラバヤ、ジャカルタに広まるのが普通で、他に可能性としてあるのはスマラン、チルボンくらいだろう。

これらのいずれにもビステックが伝わらず、いきなりソロで始まるというのは不自然だ。
普通であれば、かならず海岸沿いの貿易都市を経由しなければ内陸部まで入ってこない。

なかなか不思議な料理で、妄想は膨らみます。

End


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