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【第12回】 アメリカ、イギリスにおけるエリート教育の根源

~その現地訪問によるインタビューを通じて2007~

※私が2007年にアメリカ、イギリスの学校を訪問してまとめたものです。訪問から月日が過ぎてはしまいましたが、希学園の根幹に通ずるものがここにあるので、各種データは当時のまま、文章部分に修正を加えています。

イギリス編 Oxted School
回答者:Mrs.Margaret Hawley

 Oxted Schoolでは、6th formerといわれる最高学年の生徒2名が校内を案内してくれました。生徒数2,000名を超える巨大校であるため、その敷地は英国公立校の中でも有数の広さを誇ります。

 校舎は、言語・科学技術・演劇・音楽など各専門ごとに分かれており、どの校舎も基本的な技術を学ぶためだけではなく、高い技術を学べるような機材・施設が備わっています。英国公立校では現在年間900万ポンドを政府から支給され、各学校が校長の責任で用途を決定できるのです。そのため、学校ごとに必要とされる施設を充実させることが出来るシステムになっているのです。

 そんな中、Oxted Schoolが最新の設備として紹介してくれたのが、Mobile engineeringcarと呼ばれる可動式教室です。これは、生徒達に多方面における専門的技術を習得させるために導入された最新のエンジニアリング教室です。大学進学だけが選択肢ではなく、専門職に進む事を考える生徒もいる公立校ならではの施設です。

 公立校では少ないHouse systemを取り入れている学校であるため、2,000名以上もいる生徒達が一丸となり、学校生活を学術面でも精神面でも充実させている様子が窺えます。

Oxted School前にて イングランドの10月末は晩秋というより初冬

■カリキュラムについて

Key Stage3(11歳~14歳)

 英語、数学、科学、フランス語、ドイツ語、演劇、地理学、歴史学、宗教教育、音楽、デザイン、テクノロジー、美術、陶芸、織物、食品技術、体育、情報技術、市民教育、ラテン語(13歳から)等、幅広く受講するチャンスを与えられている学年です。

 11歳で入学した時点では、能力混成クラスという形式でクラスが構成されます。しかし数学と現代言語のクラスに関しては能力に応じてクラスが決定されます。12歳では、すべての教科で個々の能力と必要性に応じて受講教科が決定されるのです。この形式が13歳まで続きます。

Key Stage4(14歳~16歳)

 英語、天文学、数学、科学、選択科目である現代言語、短期講座の宗教教育、情報技術からの試験が中心の学年です。生徒達はGCSE※1取得に向け、美術、デザイン、ビジネス児童発達学、テクノロジー、演劇、食品技術、地理学、ラテン語、音楽、体育、社会学の選択科目からクラスを受講します。短期講座も受講可能です。14歳の時点でカリキュラムガイドが明確にされます。

※1 一般中等教育修了証。1986年に英国で導入。大学受験のための標準テスト。テストは3科目、A~Eまで5段階の合格基準がある。

Sixth Form(16歳~18歳)

 義務教育修了後、GCSEを取るための学年(1~2年間)。この間にGCSE、A Level※2の試験を受けます。Sixth Formの生徒は個々の休憩室と勉強部屋を持ちます。また、ブリーフェクト(後輩の面倒をみる選ばれた優秀な学生)を任される他、学校の構成・運営などにおいて重要な役割を果たします。

※2 Advanced level。以下、AS level、GNVQ(英国の職業資格)と続く。

6th form棟

■House Systemについて

 イギリスの公立学校では採用している学校が少ないと言われている「House System」という「縦割り制」をこの学校では採用しています。全校生徒を学年ごとではなく縦割りで5つのグループに分け、学年の違う生徒間の隔たりをなくし、助けが必要な下級生が経験豊かな先輩への助言を求めやすい環境を作っています。そして、各生徒の独自性と学校への所属意識を高めているのです。

 また、House Systemを取り入れている学校が「いじめ」の問題が少ないとの結果も出ており、現在多くの学校で取り入れを検討されている制度でもあります。

 この制度を成功させるには、生徒に自分の所属しているHouseに対する誇りを持たせ、積極的にHouseの運営に参加したいと感じる事がもっとも重要です。そのため、各Houseでは以下のような取り組みが行われています。

①Houseごとに色の違うネクタイをつける。
 生徒間で同じHouseの生徒を認識しやすくするためです。

②週2回のHouse全員参加の集会を行い、近況や問題について話し合う。
 Houseの生徒間のより密なコミュニケーションを図るためです。

③House同士で様々なコンテストやスポーツの試合を行う。
 House間の結束を高めるためです。

④House新聞を発行する。
 生徒が作成するもので、近況やイベントについてのお知らせを掲載します。

⑤様々なイベントを実施する。
 キャンプやパーティなどのイベントを行う事で、お互いを知る機会となります。

⑥House同士の会議を月1回行う。
 Houseの代表と各学年の代表が集まり、House内や各学年で起こっている問題について話し合うのです。

⑦Houseを上手く運営していくため様々な役割を生徒に課す。
 House Captain(Houseのキャプテン)、Deputy Captain(Houseの副キャプテン)、などのほか、Pupil Mentorもあります。これは下級生で問題のある子を助けるボランティアです。自分の経験を活かして下級生を助けたいと思う生徒が多いのです。

 その他、Houseに対して大きな貢献をした10学年と11学年の15%~20%の生徒だけがもらえるHouse badgeというものがあります。これをもらうことは生徒にとっての誇りでもあるため、このbadgeが生徒のHouseへの貢献を促す原動力の一つにもなっているのです。House MasterとDeputy House Masterは、これらのイベントや会議を通しHouseを運営していく役目を担っています。生徒達が、上手くHouseに馴染む事や、勉強や精神面での問題などないかをみていく仕事も担っているのです。

 次回は校長への質問とその回答という形で、引き続きOxted Schoolについて紹介します。

授業風景(家庭科)


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