最難関中合格の秘訣 親の役割・塾の役割
(第28回)
Ⅴ.最難関中合格の秘訣
[6] 塾は人間形成に大きな影響を与える!
希学園ほど長時間ではなくても、塾は週に何日、何時間と過ごす場所です。それだけに塾で過ごす時間が子どもの人間形成にとって、いかに影響力があるかを考えておく必要があります。
塾はそもそも学校教育のアンチテーゼ(反対的理論)から生まれてきた背景を持っています。学校教育というのは上からの教育で、「教え」「授ける」教育です。すなわち、そこから導き出されるのは「画一」「平等」の思想です。しかし教育(educate=エデュケート)の語源をたどるならば、ラテン語の「educare=エデュケー」に行き当たります。「エデュケー」とは「導き出す」「引き出す」という意味です。子どもの能力をうまく引き出してやるのが本来の教育であり、塾の教育思想はそこにあります。だから塾選びの重要な要素は、合格させてくれる前に、わが子の能力・素質を引き出してくれるかどうかにあるのです。
「エデュケー」の思想に基づく塾で、毎日何時間かを過ごす意味合いは大きなものがあります。それが10~12歳の子どもの人間形成に多大な影響を及ぼすことも自然な成り行きです。「鉄は熱いうちに打て」のことわざのごとく、子どもの頃からきちんとした生活習慣、学習習慣を身に付ければ、それが大人になったときの仕事習慣にも繋がっていきます。また、子どもたちにとっても塾で過ごす時間はかけがえのないものです。このことに関して、私にはほろ苦い体験があります。
もう何十年も前の話です。中学受験が近付いて、学校でいじめにあった子どもや先生との折り合いが悪くなった子どもを3人預かったことがあります。毎日、朝の8時半から夜の10時、11時まで学習、食事、遊びを共にしました。学力的には3人とも灘中学に合格できる力を備えていました。事実、入試の点数は十分な合格点を取っていました。(灘中学校は全受験生に入学試験の個人別各科目の得点結果を窓口で渡しています)
ところが当時の入学試験を取り巻く社会的状況に厳しい目が向けられている社会情勢を反映された結果からでしょうか、登校日数不足(規定となるものはなかったし、当時学校からの通達等も一切ありませんでしたが)を理由に不合格になってしまったのです。未だに悔やみきれない出来事です。すべて私の総合的な受験指導力の不足から生じた痛恨の事件でした。しかし救いとなったのが、その後、別の中学校に入学し、東大を出て、今は社会のリーダーとして活躍している彼らが「あの頃はもの凄く一体感、充実感があった」と当時の生活を大きな財産として語ってくれることです。
それほど塾での「学習」のみならず「生活の一部」が大きな一体感を生んだことは今になっても忘れられない思い出になっています。