【第4回】 アメリカ、イギリスにおけるエリート教育の根源
~その現地訪問によるインタビューを通じて2007~
※私が2007年にアメリカ、イギリスの学校を訪問してまとめたものです。訪問から月日が過ぎてはしまいましたが、希学園の根幹に通ずるものがここにあるので、各種データは当時のまま、文章部分に修正を加えています。
アメリカ編 Taft School
回答者:Rusty Davis / Risa Sakuma
私が訪れたのは2007年11月中旬、Taft Schoolは試験が終了すればクリスマス休暇に入ろうとする頃でした。学校はとても美しい紅葉に囲まれた静かなたたずまいを見せていました。コネチカット州ウォータートーンという町の中にあり、学校の事務棟は英国風の伝統のある建物です。1890年第27代タフト大統領の兄弟によって創立されたTaft Schoolには、当時、男子291名、女子279名、合計570名の生徒が在籍していました。寮生は464名、自宅生が106名で、学年別では9学年105名、第10学年146名、第11学年154名、最高学年165名となっています。アメリカ国内33州から、海外から19カ国の学生が集まってきているとのことです。
学校訪問で校内を案内してくれたのは、佐久間さんという日本からの留学生でした。お母さんがTaft Schoolのことをいろいろ調べてTaft Schoolに決めたとのことです。因みに佐久間さんは、日本のインタースクールで学んだ後でTaftに入学しています。やはりボーディングスクールに入学するにあたっては英語がしっかりできていることが条件のようです。
学費は寮生が$35,000、自宅生が$26,000です。教員は全部で112名、平均年齢は42歳です。授業のクラスの平均人数は12人くらいで学科目は全部で207コースあり、広い構内に点在する篤志家から寄贈によって建てられ、整備された学習環境の下で学業に運動に励んでいます。
彼らの進学先はここ3年の統計では最高学年から28%がBrown,Columbia,Cornell,Dartmouth,Harvard,Princeton,University of Pennsylvania,Yale等のIvy Leagueに入学を許可されます。さらに23%の生徒がBoston college,Carnegie Mellon,Duke,Georgetown,Hamilton大学などに、さらに残りの49%が100以上の大学に進学しています。
■寮生活について
Taftには全部で13もの寮があります。3階建てで各寮には3人の職員が家族と一緒に住んでいます。それぞれの寮では年上の者が年下の者をボランティアで面倒を見るというシステムをとっていて、生徒同士の関係はもちろん、生徒と職員との関係も上手く築いていけているとのことです。第9学年・第10学年においては、2時間の勉強を課して、ドアは開けたまま勉強させ、職員がチェックしてまわるそうです。
寮生活をしている生徒は450人で通学生は120人です。90%もの生徒が自分のアドバイザーや職員を決めることができます。それらのアドバイザーは各個人の相談や勉強方法等なんでも相談に乗ってくれます。もちろん、全て各個人の事を把握してくれます。
50年前までは90%もの生徒がエール大学へ進学していました。最近は少なくなってきているようです。
毎年1400人もの入学申込書が学校に送られてきて、入学するのがとても難しくなっています。学年全員が良い学校へ進学することを希望しています。またTaftは香港と30年もの関係をもっており、香港からの留学生が一番多いとのことです。日本の生徒はわずか4人でした。
卒業生の多くは先生になっています。親の後を継ぐというよりも、親は親で子どもが自分でやりたいことをみつけられるような環境を作り、自立の道を促すためにこの学校に入れたがるそうです。そして、生徒自身に将来の職業を決めさせます。15年前までは、生徒が先生のファーストネームを呼ぶなど打ち解けた感じでしたが、最近では礼儀正しく、先生と生徒を分別するようになってきているとのことです。
生徒一人ひとりに責任を持たせて、良い関係を築いています。カウンセラーもおり、どういう人間に成長していったらいいかなど、より専門的なことに挑戦できるような環境も作っています。
Learning Centerと呼ばれるところがあり、ここには常に正職員が2人、パートが2人おり、生徒たちの質問や疑問点に答えます。
学校側としては寮生も通学生も同じように扱う努力をしていますが、ルールが違うため、通学生の方が平均的に賢い子が多いとのことです。寮生活をしている人と通学生の違いについて以下のことが言えます。
夜7時以降の行動が違います。通学生は10時半まで図書館や自習室に残って勉強をしますが、寮生は寮へ戻り、勉強したり、音楽を聴いたりしています。上の学年になると、ドアを開けたまま静かに勉強をすることが課せられます。
学校案内をしてくれた佐久間さんもそうだが、日本のインターを卒業してこちらに来る方が圧倒的に多いようです。Taftも日本人4人中4人ともがインター出身とのこと。やはり語学力が第一に要求されることがわかります。