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【第3回】 アメリカ、イギリスにおけるエリート教育の根源

~その現地訪問によるインタビューを通じて2007~

※私が2007年にアメリカ、イギリスの学校を訪問してまとめたものです。訪問から月日が過ぎてはしまいましたが、希学園の根幹に通ずるものがここにあるので、各種データは当時のまま、文章部分に修正を加えています。

アメリカ編 Loomis Chaffee School
回答者:Woody Hess / Chris Wejchert

コネチカット州の中心都市ハートフォードから少し離れたところにウィンザーという町があります。私はウィンザーの町はずれの道を進み学校の表示に従って瀟洒な戸建の家が点在する林を抜けました。突然大きく広がる緑の木立に囲まれた広大なキャンパスが見えてきました。ここが1633年創設のLoomis Chaffee Schoolです。

Loomis Chaffee School

この300エーカー(120ha)の広大なキャンパスに720名(寮生400名、自宅生320名)が学んでいます。男女比率はほぼ同数で、海外からの留学生は9%です。教員は全部で150名いて、そのうち123名が修士号または博士号を持っています。約半数の教員はLoomis Chaffeeで10年以上教えているベテラン教師です。
 選択科目(コース)は文系では英語、中国語、フランス語や芸術、コンピューター、歴史などの社会科学、音楽、舞台芸術など全部で200コース程あります。また、すべての学生は体育を必須とし、放課後には1つあるいは2つの種目を選択して練習にあけくれているとのことです。その施設も立派なものが多く点在し、スイミングスクール、体育館あるいはアイスホッケー場が2面や、スカッシュコートが8面もあります。その中には公式試合のできるものが数多く用意されています。また、寄贈者の名の由来によるKatharine Brush図書館には6万冊の蔵書が収められて、1500本のビデオや2000枚のCDなどと相まって充実した学習環境が整備されています。

■3割の生徒に奨学金
 この学校では銀行に1億ドルものお金があります。これは全て、卒業した人・通学している生徒の両親・卒業生の両親・友達などによって寄付されたお金です。これだけのお金があるから、生徒達が満足の行くような学習環境を作っていったりすることができるのです。
 学校の先生はそれぞれ独自の考え方を持っています。もちろん、マニュアルはありますが、各自教えたいように自由にいろいろな違った教材・本等を使ったりして、生徒達の興味や理解を深めていくよう努力しています(歴史の先生は何人かいるが、それぞれ教え方が違う)。生徒は1クラス12~13人と比較的少人数で、すべての生徒に目が届くようにしています。3割の生徒が奨学金を受けています。学校自体にお金があるため、中流家庭の生徒のためにも授業料等を出したりもしています。
 どうやって賢い生徒を見つけるのか?……受験申込書、SSATというテストの結果、生徒と両親の面接、スポーツ・音楽・芸術の点で優れているものがあるかというのを見ていき、見つけていく。大学へ入る際、何か一つでも優れているものがあればいいが、なければ全ての教科において平均以上の点数を取っていかないといけないので大変である。

学生寮

■寮生の生活
 寮生活をしている生徒が400名、通学生は320名います。寮生活をしている生徒の中からアイビーリーグに進学する生徒が多く、その理由として以下の数点があげられます。
1.他の国から来ている生徒と共に生活をすることによって、社会面・感情面でも成長していくことができます。
2.勉強の仕方。夜8時から9時45分まではquiet timeといって、勉強時間になります。この時間には生徒達は部屋のドアを開けて勉強することが義務づけられており、先生が見回りをします。9時45分から10時半まではsmall breakで休憩となっており、10時半から12時までまた勉強時間となります。基本的に土曜日以外の8時から勉強することが義務づけられています。学年が低い場合は、10時に寝る規則があるとのことです。要は、毎日の勉強時間が通学生と比べてはるかに多いということです。
3.毎晩廊下の掃除やゴミ捨てをして部屋をきれいにしてから勉強をします。8人グループになって生徒が寮全体を掃除するというルールもあるとのことです。これらのことから、自分のことは自分でというように自立心や独立心を強めていくのでしょう。
4.とにかくたくさんの宿題があります。分からないところがあれば、寮に住んでいる先生に質問することもでき、通学生では出来ないことが出来る利点もあります。通学生は親が家で勉強を教えたりもしますが、図書館で残って勉強したりする生徒が多く、通学するという点で時間を無駄に使ってしまっているとのことです。一方、寮生活している生徒の場合は、全てが寮から近いため時間を無駄に使うことがないのです。

Loomis Chaffee SchoolのWoody Hessさん(写真左)とChris Wejchertさん(写真右)


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