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あの頃、「体育祭」が嫌だったあなたへ

【日々はあっちゅーま】
#17,みどり組


私が通っていた埼玉県、飯能市の高校、自由の森学園は自由な校風だった為、制服は無く、服装は自由。


学バス降りて校舎に入ると、モード系とか、B-Boy系とか、ギャル男系とか、それぞれがそれぞれのファッションを楽しんでいて、まるで大学のキャンパスみたいな雰囲気がいつも漂っていた。

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一方その頃、ファッションはおろか、


そもそも服を着用すること自体に疑問を感じていた私は、


素足にパンツ一丁という、マハトマ・ガンジーよりも質素な出で立ちで授業を受け、学食を食べたりしていた。



自然、周りの注目の的になる。


起き抜けのネアンデルタール人のような格好で学園内をウロウロしていると、中学校舎の女子中学生集団からは。



「あっ、変態がいる〜」
「本当だ、変態さんだ〜」
「変態さ〜ん」


と、日に10人には変態呼ばわりされるのが日常だった。


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ある日、そんな私の「もろ肌」に目をつけた友人数名が、私の体にボディーペインティングをしようと言い出した。



さっそく、体育館裏に椅子を用意し、美術室から絵の具を拝借し、ペインティングスタート。


男数人がかりで、体のあちこちを筆でこちょこちょするものだから、堪えきれなくなって。


「わはははは!」
「ちょ、ちょっとタンマ!」



と小刻みにストップをかける。


すると、


「おい、ユーキ、しっかりしろよ!」
「こっちは真剣にやってんだよ!」


と、なぜか怒られる。



そんなに真剣に一体何を描いているのかと、気になって鏡を見るとびっくり。


全身みどり色に塗りたくられて、にの腕には爬虫類のようなしましまの模様が描いてある。



背中には丸字に「神マーク」




正真正銘、ただのピッコロ大魔王である。



「まーまー、ユーキ、ちょっとこれ付けてみて」

と、ピッコロさんのマントを渡されて着用すると、これがなかなか様になっている。



「ユーキ、いいよ!かっこいいよ」
「戦闘力高そう!」
「はやく、ネイルと同化しに行こうぜ!」



などと囃し立てられると、だんだんその気になってくるお調子者の私。


お昼休みに食堂の屋根によじ登り。




「わっはっはっは!人間どもよ、お前らの運命もここまでだ!」

「ポコペン、ポコペン…シンバル〜!」

(分からない子はドラゴンボール読んでね!)



などと、呆気にとられる生徒たちの前で、一人、ナメック星人ショーを披露し、そのまま学校の側に流れる名栗川に飛び込んで、バシャバシャと絵の具を洗い流す。



その頃は、まともに授業も受けずに、毎日そんなことばかりしていた。


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そんな高校2年生の春。
体育祭のシーズンが始まった。


高校1年から3年生まで、各クラスを色分けして、スポーツで得点を競い合うのである。



私の2年2組は。
赤・青・黄・黒、とある内の「黄色組」になった。






ところが、それがしっくりこない。


というか、ワクワクしない。




そもそも、クラスメイトとワイワイやる、というキャラでも無いし。


上から決められた色で頑張る。というスタンスも気に食わない。




今年の体育祭はサボろうかな〜。とぼんやり帰りの電車で考えていると。


突然、心の中のピッコロさんが語りかけてきた。


「ゆうき!ゆうき!聞こえるか!俺だ、ピッコロだ!お前は本当は、俺なんかよりもすごいパワーを秘めている!今こそ、眠れるパワーを見せる時が来たんだ!」


「はいっ!ピッコロさん!」



JR川越線の車内で一人ガッツポーズ。

ピッコロさんのおかげで、すごいアイデアを閃いてしまった。




そうだ、体育祭で、黄色組が嫌ならば。
新しい色を作ればいいじゃないか!



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その日から私は「みどり組」として、たった一人で体育祭の準備を進めることを決意した。




そうと決まれば、まずは仲間集めである。


「おい!みんな!俺、みどり組作ったから一緒にやろーぜ!」




「わはははは!なんだよみどり組って!?」
「え〜?みどり組〜?何それ〜!」



なかなか斬新なアイデアに、友達も興味津々である。
メンバーも5人ぐらい集まった。




「でも、みどり組ったって、何するよ〜」
「やっぱ、応援合戦じゃない?」
「リレーとか?」
「旗も必要だよね〜」




みんなで話し合い、分担を決めた。



女の子たちは、段ボールを切って緑に塗ったり。布に絵を描いたり。衣装や小道具を作ってくれた。


応援合戦の内容も決めた。
みどり組の緑色にちなんで、仮面ライダーがテーマ。

赤・青・黄・黒組にいじめられているヒロインを助け出す為にみんなで戦う。

というシンプルな筋書きにした。


残ったメンバーは、体育祭実行委員会にこっそり働きかけて、当日に動きやすいよう、ロビー活動を行う。


休み時間には応援合戦の練習。


その間、私はみどり組のメンバーを増やすべく、せっせと勧誘を行い、最終的にはみどり組は30人ぐらいの規模にまで膨れ上がった。


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そして体育祭当日


真っ青な晴天の下、グラウンドには白線が引かれ、入場門が設営された。
グラウンドの境界線にはロープが張られ、保護者達が見物している。


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司会「さぁ、いよいよ始まりました、体育祭!開会式のスタートです」


「赤組、青組、黄色組、黒組、入場行進。堂々と行進しています…」



BGMに合わせて団旗をひるがえし、行進する各色のチーム。



「ところが…、おおっと!なんだあれは!?」



「みどり組、みどり組だぁ!」


「なんと、みどり組の入場です!」




驚く事なかれ!


みどり組の優秀な諜報部員の活躍のおかげで、学食の食券を餌に、体育祭の司会を買収する事に成功したのだ!

 



「え?みどり組?何それ?」
「そんなのあったけ?」
「でも、今、司会が言ってたよ…」


呆気にとられる観客をよそに、緑色に塗りたくった段ボールやら、布やらを巻き付けた、奇怪な集団が行進している。


そしてグラウンドの隅に整列。


司会「みんな!体育祭盛り上がっているか〜っ!」



うおーーーっつ!



自主的に参加しているので、みどり組のところだけ、やたらにテンションが高い。


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かくして、みどり組の活躍(?)は始まった。


リレーに勝手に参加したり。
お昼休み中の空いたグラウンドで、応援合戦をしたり。


ビニールシートを広げ、お弁当を食べる家族を尻目に、グラウンドで仮面ライダーのテーマを流しながら戦う、みどり組の集団。


一体、何が彼らをそうさせているのか? 

かなりシュールな光景だったと思う。


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そして閉会式


司会「みなさん、いよいよ閉会式。得点の発表を始めます!」


「一体、どの色が優勝するのでしょうか!?」




ダラララララララ…ジャン!






「まずは赤組…380点!」



グラウンドの端に設営された大きな得点板に、得点の数字が掛けられていく。





「次は青組…420点!」







「黄色組…360点!」







「黒組…450点!」







ダラララララララ…

「そして、みどり組!」





と、ここで会場がざわつく。


「え?みどり組、あるの?」







司会「みどり組…」
















「5万点!!!」






グランドの隅に隠れていた諜報部員達が、段ボールに5万点とでっかく書いて、得点板の横で掲げている。



うおーーーっつ!!

その日一番の歓声が、(グラウンドの隅のみどり組の中でのみ)沸き起こった!



…もちろん、優勝は450点を獲得した黒組である。


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そんなかんなで、楽しかった高校2年生の体育祭は幕を閉じた。



いつも、何か面白い事を探して、バカばかりしていたその頃の私は、次の日にはまた新しい遊びを思い付いて、夢中で毎日を過ごしていたものである。



最後に一つ、体育祭が終わって変わった事といえば。



体育祭以後、学園をブラブラと歩いていると。
中学校舎の女子中学生集団から、



「あっ、みどり組の変態だ〜」
「本当だ、みどり組だ〜」
「変態さ〜ん」




と、変態呼ばわりされる数が、20人ぐらいに増えた事だろうか。



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(おしまい)



【おまけ】

ピッコロ

カレーを食べるピッコロ大魔王



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しごおわー




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