「レシートをご利用されますか?」が失礼すぎる盛りすぎ敬語になってしまう理由とは
お店のレジで店員が買い物客に尋ねる場面です。
よく聞かれる「レシートをご利用されますか」は、「ご」が盛りすぎです。
言ってみれば、誤用なのです。
なぜ、誤用なのか?
次の動画で解説しています。
続きを読むのが面倒な方は、動画でご覧ください。
いかがでしたか?
音が出ると困る方のために、以下に文章で解説しましょう。
(動画にはない内容も補足しています)
「レシートをご利用されますか?」が誤用である理由
「レシートをご利用されますか」は規範的には不適切です。
次の図をご覧ください。
「お/ご……する」は謙譲語の型であり、相手を敬う場面では使いません。
その後に「れる」をつけて「される」という尊敬語にしたところで、相手に敬意を表す言葉としては不適切です。
「レシートを利用しますか」を尊敬語にすると?
以上のことから、「レシートをご利用されますか」は不適切です。ただし、「ご」を取った「レシートを利用されますか」は適切な尊敬語です。
「レシートを利用されますか」
もしかしたら、最近よく聞く「ご利用されますか」は、もともと「利用されますか」と使われていたのかもしれません。
「レシートを利用されますか」であれば間違いではないのです。
「レル敬語」は往々にして受身の意味にとられかねないこともありますが、用法自体は合っています。
でも、それだと物足りないと考えて、「利用されますか」に「ご」を足したのかもしれませんね。結果として失礼すぎる誤用になってしまったわけです。
この「レシートをご利用されますか」も、そんな「丁寧に言いたい気持ち」を盛りすぎた結果の「盛りすぎ敬語」だと考えられます。
いたるところで使われるため、正しい表現かと勘違いしそうになりますが、規範的には正しくありません。
では、どう言えばいいのでしょうか。
次の言い方なら、問題ありません。
「レシートを(ご)利用なさいますか」(「(お/ご)……なさる」=尊敬語)
「レシートをご利用になりますか」(「お/ご……になる」=尊敬語)
特に「(お/ご)……なさる」は、便利です。
「持参する」「出発する」「卒業する」についても同様に使えます。
・利用する→ (ご)利用なさる
・持参する→ (ご)持参なさる
・出発なさる→ (ご)出発なさる
・卒業なさる→ (ご)卒業なさる