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ダンジョンハイカー シナリオの作り方

はじめに

本エントリーはダンジョンハイカーのルールとサンプルシナリオを読んだ人向けです。自分でダンジョンハイカーのシナリオを作るのにフレーバーテキストを書く自信がないため、才能ある方々ダンジョンハイカーを楽しめるようにダンジョンハイカーのシナリオの作り方のアイデアをまとめました。これは一例なのでお好きな形でダンジョンハイカーを楽しんでいただく機会となれば嬉しいです。
オーム社発売のオライリー・ジャパン発行の「自分だけのボードゲームを作ろう」は今回のようなメカニクスを意識したゲームを作る際に小学生でもわかる平易な表現でまとめてあって参考になりました。素晴らしい本を日本語訳してくれてありがとうございます。


ダンジョンハイカーのメカニクスについて

ダンジョンハイカーは六面体ダイスを使って手軽にダンジョン 攻略を楽しむゲームです。ダンジョン折り紙(6マスx6マスのフロアシート)とミニチュアを使って遊ぶことを想定して書かれています。

ダンジョンハイカーはゲームメカニクスとシナリオメカニクスの2つで構成されています。
ゲームメカニクスはゲームを遊ぶための仕組み、シナリオメカニクスはダンジョンを探索するお話を遊ぶための仕組みです。

ここではシナリオメカニクスについて説明をします。
便宜上、ダンジョン折り紙の折り紙の一枚紙の事を「フロア」と表記している時があります。
隣接するとは「上下左右」を意味します。

ダンジョンハイカーのシナリオメカニクスは下記の2つで構成されています。

1.ストーリーラインによるシナリオ性の提供
2.ローグライクなランダム性による偶然のドラマの提供

類似の仕組みとして「ローグライクハーフ」があります。興味がある方はローグライクハーフの作品をプレイする事をお勧めします。ダンジョンハイカーのゲームメカニクスでローグライクハーフのシナリオを遊んでみるのも良いでしょう。

ダンジョンハイカーとローグライクハーフの違いは下記の通り。
・プレイヤーがストーリーを選ぶ事が出来る時がある
・ストーリーのための固定イベントがない
・イベントクリア毎に経験値を入手し、シナリオ途中でも成長が可能

この違いが必要となったのは下記の理由からです。
・折本の1ページA7サイズに納める
・ダンジョン折り紙のレイアウトで出口が1~3と可変でプレイヤーがコントロール出来る事が少ないため、ストレスが多くなりすぎる事を回避するためプレイヤーが進路を選ぶ要素を加えたかった

こうした理由で専用のメカニクスを用意しましたが、他のシナリオを使ってダンジョンハイカーのゲームメカニクスで遊んでいただくのも良いと思います。

シナリオ作成をする時に覚えておいて欲しい事

ダンジョンハイカーのシナリオを作成する際は下記の事を考えて作成をしてください。

1.いきなりクライマックスの攻略に突入する可能性がある
・クライマックスの攻略に必須のアイテムをドラマチックに用意してください。
・ダンジョンハイカーでは侵入した直後に他のフロアに逃げる事が出来ます。いきなりクライマックスに挑まないで一旦逃げて他のフロアの攻略をする事を推奨してください。

2.終了条件を明確にしよう
・ミニチュアゲームでは相手を全員倒す必要があるのか、ないのかもシナリオによっては明確にする必要があります。宝箱を開けた時点でクリアで相手が生き残っていても戦闘は継続しないで終了とするのか、最後生き残るまでを終わりとするのかを明記しましょう。
・倒せないほど強い相手を出して、工夫してクリアするシナリオなのかどうかなどプレイヤーの行動の目安となる事が大切です。

3.仲間は3人、相手は最大4人を目安に考えよう
・ダンジョン折り紙は 6X6マスで壁があると 5X5マス程度の面積になるため、この人数程度の配置になる事を意識してください。
・ダンジョンハイカーでは「敵」ではなく、「相手」としています。これは必ずしも敵対する存在であるとは限らないためです。
・相手は出現したフロアの外には出ません。中に残ります。仲間たちを追いかけて他のフロアにも移動させたいシナリオの時はその旨を明記してください。
・仲間は誰か一人がフロアの外に出ると全員次のフロアに移動します。【いのち】が0になって倒れている仲間たちも一緒に移動します。成長しないと倒せない強敵を安心して配置できます(ダンジョン折り紙のレイアウト都合で逃げ道がない場合は仕方ないですね)。

4.シナリオ途中で成長しようとするプレイヤーの行動を配慮しよう
・ダンジョンハイカーは成長が必要だと思ったプレイヤーがクライマックスを回避して、ダンジョンを徘徊して成長させる事が出来ます。
・イベントは難易度が3種類あり、最初に開いた難易度にイベントアイテムが配置され、2番目、3番目の難易度は類似の敵が出てくるサブイベント扱いとなります。
・サブイベントは単なる戦闘イベントとするのも良いですが、なにかサイドストーリーがあっても良いでしょう。

5.目安として2つのフロアでクリアされる事を想定しょう
・ドラマチックでアイテムを入手、クライマックスでシナリオクリアの最短ルートは2フロアの攻略です。シナリオ途中で成長する場合は最短で4フロアです。
・ドラマチックとクライマックスの2つのイベントだけでもお話が成り立つことを意識し、簡潔なお話が相性が良さそうですが、必須アイテムとアイテムを使う攻略イベントを複数用意して12フロア全部の攻略を目指すシナリオを作るのも楽しそうです。

6.難易度を上手く使ってみよう
・イベント共通の出来事と同様に難易度共通の出現する相手を用意するなどプレイヤーが選びたくなるキャラクターを配してシナリオに活かしてください。

ダンジョンハイカーのシナリオメカニクス について

シナリオ表とプレイヤーの選択

ダンジョンハイカーの基本シナリオメカニクスはイベント 4種類と難易度3種類で構成されます。

イベントの構成と経験値
・イントロダクション 経験値10 戦闘に慣れるためのイベント
・ギャザリング 経験値20 便利アイテムを入手
・ドラマチック 経験値30 クリアに必要なアイテムを入手
・クライマックス 経験値40 シナリオクリアのためのイベント

難易度の構成と経験値
・イージー 経験値  - 5 クリアし易い
・ミディアム 経験値 +-0 期待する難易度
・ハード 経験値 +10 成長が必要な難易度でも可

イベントの中身は難易度では変化しません
一度クリアしたイベントの異なる難易度の時は相手が出現するだけでアイテム等は出現しません。
再び出現させる場合はシナリオ中で定義してください。

この組み合わせで「シナリオ表」を作成します。

サンプルシナリオのシナリオ表(英語版より)

ダンジョンハイカーでは ダンジョン折り紙を1枚選んだらダイスをAとB に決めて振った数値でそのフロアで起きるイベントと難易度を決めます。決まったマスは埋めて、同じマスが再び選ばれた時は埋まったマスと隣接する埋まっていないマスをプレイヤーが選びます。隣接するマスが全て埋まっている時はその先の埋まっていないマスを選びます。

プレイ中の埋まっているシナリオ表の例

シナリオ表は上記のように飛び飛びになりがちです。攻略済みのイベント、Intro, Gathering、Dramatic の異なる難易度に挑むのは経験値目当てとなります。安全に経験値を稼ぐなら Intro/Easy を攻略して再びダイスを振ってイベントを選ぶ人もいるでしょう。

この表でダイスを振って “A 2, B 6 = Intro/Hard”  が再び出た場合は埋まったマスの周囲の太字のイベントをプレイヤーが自由に選ぶ事が出来ます。経験値の合計が70点ですから成長優先なら Gathering/Medium,  攻略優先なら Dramatic/Easy を選ぶ事が予想されます。

こうしたプレイヤーがイベントを選ぶ事が出来る点がダンジョンハイカーのシナリオメカニクスの特徴です。

ストーリーについて

サンプルシナリオでは紙面の関係で下記の設定のみでした。

サンプルシナリオ:力の宝箱を解放しろ

  • 村を襲っている相手の力の源が宝箱だと判った。開けて相手を弱体化しよう。

  • 宝箱を開けた時点で相手が逃げ出すのでシナリオ終了です。

  • 宝箱は鍵があれば攻撃 1で開ける事が出来ます。

  • 宝箱の配置は折り紙の中央付近を選びます。

  • このシナリオでは折り紙毎に【いのち】は最大値に戻る。

クライマックスの目的:村を襲っている相手の弱体化
クリア必須アイテム:宝箱の鍵
終了条件:宝箱を開けたら終了

シナリオの目的:ダンジョンハイカーを体験してもらう
・生存率高めとする
・簡易な相手で無双できる爽快さを用意する
・ソウルライクなデッドリーな体験が出来る可能性を入れる

を配慮して作成しました。

この狙い通りの内容になっている事を期待しています。

キャラクターについて

ダンジョンハイカーではプレイヤーが用意したキャラクターであそぶだけでなく、シナリオ側で目安となるキャラクターを用意する事を推奨します。

サンプルシナリオのキャラクターは下記のとおりです。ゲームメカニクスとも関連する事はここでは割愛します。

仲間(Fellows)
「戦士」  攻撃と守りのスペシャリスト
「盗賊」  相手のスキを突くスペシャリスト
「魔法使い」 魔法のスペシャリスト

相手(Opponent)
「弱い相手」 1~4体出現 弱いけど沢山出てくるやつ
「並の相手」 1~2体出現 仲間とおなじぐらい強いやつ
「強い相手 」 1~2体出現 とても強くて大変なやつ

合計で4体までの組み合わせでフロアに相手を用意する

難易度 Medium を基本にストーリーを考えて相手の出現数や強度を設定し、それを基準に Easy と Hard の相手の種類と人数を決めます。

サンプルは折本の A7 の紙面に入る分量でしたが、シナリオだけの折本を作って2面で1シナリオとして表紙、裏表紙、シナリオ1、シナリオ2、シナリオ3というセットを作っても楽しそうです。

終わりに

ダンジョンハイカーのシナリオメカニクスはいかがでしたでしょうか?
フロア単位で攻略する楽しさと、ランダムも含めて自分が選んだ選択して攻略した道筋が生まれる面白さ、まだ定まっていない難易度によるストーリー演出の隙間に興味をもってダンジョンハイカーをプレイして遊んでいただく機会となれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

今回、ちょっとしたキッカケで折本のミニチュアゲームを作ることになってとても楽しく作っています。「ダンジョン折り紙」という制約があるだけでも「必要は発明の母」よろしくどんどんアイデアが出てきましたので、ダンジョン折り紙を使ったオリジナルゲームが増える事も期待しております。

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