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大羊春秋~羊務執筆者党史~(13)

この「大羊春秋」(だいようしゅんじゅう)とは、私 前多昭彦が主宰していた同人誌サークル「羊務執筆者党」(ようむしっぴつしゃとう・略称SSP)の活動を振り返る「回顧録」です。

GELBE SONNE 3〈後編〉

『GELBE SONNE 3』(ゲルベゾンネ ドライ)は波瀾の製作でした。
今考えると私は総数13頁と決して多くはないのですが、執筆開始が遅かったのと、私の画力の低さも相まって、原稿執筆がなかなかが捗らず非常に苦労したのです。
季節は6月から7月にかけての暑い頃でした。私の部屋にはエアコンが無く、それ故、執筆にかかるのはどうしても夜になりがちです。結果、生活のリズムが昼夜逆転気味になってしまい、日が昇った暑い時間帯に眠りに就くというしんどい日が続きました。
また当時、私は毎朝9時からのアルバイト生活でしたが、当然、出勤できず欠勤することがしばしばという有り様です。

そのため7月のある日、A見に電話をし今号の“夏コミ”合わせを断念したい旨を伝えました。しかし、A見は首を縦に振らず「それは絶対に後悔するから諦めない方が良い」と諭されました。

問題は印刷所です。
『四面楚歌 -第弌号-』以来利用している「しまや出版部」は、“面付け”(印刷された紙が製本時にページ順になる様に版下を組合せる作業)までこちらで行わなければなりません。私はこれが相変わらずできずI上頼みでした。
ところが私の原稿執筆の遅れから“面付け”作業をするスケジュールがもう取れません。さらに「しまや出版部」は締切が早いため、入稿が厳しい状況になっていました。
そこで私は締切日の遅さも然る事ながら、“面付け”も通常料金内で引受けてもらえる印刷所を電話をかけて探しました。
その結果、東京都千代田区の神田にある「日光企画」が見つかり、ここに入稿しました。

今号からB5判片面の読者アンケートを折り込むことにしました。
これは当時、読者からの反響が無いのを憂いた私の発案で、一から手紙を書くのは億劫でも、アンケートというフォーマットをこちらで用意すれば反響が増えるのではないかという考えからでした。
回収されたアンケートは亡失してしまったため詳細はもう分かりませんが、数通の寄せられたはずです。

今号のアンケートについては印象的なことがあります。
林原めぐみファンだという男性のDさんから回答をいただいたのですが、即売会でお会いした際かそれとも手紙でだったか、私がかつて在籍していた「高橋留美子総合F.C. U&R」の会員だと伺い非常に驚いたということがありました。

さて、初頒布は「コミックマーケット38」です。
【コミックマーケット38】
◎開催日:平成2(1990)年8月18日(土)・19日(日)
◎会場:千葉県千葉市「幕張メッセ」
◎配置場所:19日「D-11b」
◎売り子:A藤・M本・真慧多昭彦(筆者)
コミケ参加5回目で、ようやくチケットと同数の3名入場となりました。

搬入数は100部で頒布結果は47部でした。※印刷所からの直接搬入。

今、資料を読み返すと決して悪い数字ではないのですが、当日のスペースでは思うように売れずにジリジリしていたものです。
この表紙なら売れるはずだと自分が描いた表紙に自惚れていましたね。(笑)

「コミックマーケット38」では、カタログの「まんがレポート」の『その他』に私が描いた「SSP」の作品が載りました。現物が残っていないのが残念でなりません。

以後の頒布は次の通りです。

【コミックレヴォリューション8】
◎開催日:平成2(1990)年9月15日(土)
◎会場:東京都豊島区池袋「サンシャイン文化会館」
◎配置場所:雷神 L-25
◎売り子:A見・真慧多昭彦

搬入数は24部で頒布結果は21部でした。

A見の主宰サークル「制服くらぶ」との共同参加ですが、何故、共同参加となったのかは不明です。「SSP」にとり初めての「コミックマーケット」以外の同人誌即売会参加でした。

「コミックレヴォリューション」とは昭和62(1987)年1月に第1回が開催され、以来、春と秋に行われていたオールジャンル同人誌即売会です。平成17(2005)年4月24日(日)開催の「Comic Revolution37 FINAL」をもって終了しました。
「Wikipedia」に「コミックレヴォリューション」のページがあります。

【パソケット& For Boys大会】19冊
◎開催日:平成2(1990)年9月23日(日)
◎会場:東京都台東区柳橋「東京文具共和会館」
◎配置場所:A-51
◎売り子:M本・真慧多昭彦

搬入数は26部で頒布結果は19部でした。

「株式会社ユウメディア」が「スタジオYOU」のブランド名で開催していたイベントで、その名から察せられる通り同人ソフト専門の即売会です。この回は特別開催で同人誌もOKということで参加しました。

【コミックマーケット39】
◎開催日:平成2(1990)年12月23日(日)・24日(月)
◎会場:千葉県千葉市「幕張メッセ」
◎配置場所:24日「C-64b」
◎売り子:I上・M本・真慧多昭彦

搬入数は5部で頒布結果は5部でした(頒布終了)。

これは「SSP」独自の考え方かもしれませんが、この頃、同人誌の頒布は飽くまでも「コミックマーケット」をはじめとした同人誌即売会がメインで、通信頒布はそれを補うものと考えていました。
今回、記録を読み直して、本誌は通頒を一切行わず、4回の即売会参加で頒布終了となったことが分かり驚きです。
私が描いた拙い表紙でこの結果ですから嬉しく思います。

数年後、近所のアダルトもの専門の書店(神田神保町の芳賀書店のような店)に入った際、何故か大量の中古同人誌を売っており、面白半分で物色してみたら、その中に『GELBE SONNE 3』が1冊あった…… なんてことがありました。

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『3』はとにかく製作がしんどかったのが大変印象に残っています。
印刷所については日々憂鬱でならず、「日光企画」が見つかった際は心底からホッとしたものです。
現実的に可能かは別問題として、私が本誌程度の執筆量を維持していけたら、「SSP」の活動は全く違ったものになり、後年に私が抱いた迷いや後悔は無かったはずでしょう。
言わば「遊び」の同人誌活動でも主宰者、つまりナンバーワンが率先垂範しなければ、どのような組織でもうまくいきません。
その意味では質は別として、私の執筆量が多い今号は理想的な本と言えます。

本誌の目次。
とよまえ♡しょう子による挿絵。
真慧多による“締め”のエッセイ。

《第13回「GELBE SONNE 3〈後編〉」おわり》

※文中敬称略

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