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大羊春秋~羊務執筆者党史~ 第19回

この「大羊春秋」(だいようしゅんじゅう)とは、私 前多昭彦が主宰していた同人誌サークル「羊務執筆者党」(ようむしっぴつしゃとう・略称SSP)の活動を振り返る「回顧録」です。

GELBE SONNE 5〈前編〉

それが「コミックマーケット」を存続させるための、やむを得ない決定だったとは知らず、修正の件で「コミックマーケット準備会」に不満があった私達は、“コミケ”ではなく「コミックレヴォリューション」に向けて本を作ることにしました。
それが『GELBE SONNE 5』です。

『GELBE SONNE 5』の表紙と裏表紙。

詳細は次の通り。
『GELBE SONNE 5』(ゲルベゾンネ ヒュンフ)
◎入稿日:平成3(1991)年10月31日(木)  ※領収証の日付による。
◎発行日:平成3(1991)年11月17日(日)
◎B5判・36頁・本文用紙70kg・無線綴じ・200部印刷(見本誌12部)
◎頒価400円
◎表紙:ミラーコート・1色刷り
◎ジャンル:男性向
◎内容(ほぼ掲載順)
・表紙イラスト/七条乱雄斎
・表紙2カット/神家処奈他
・中表紙イラスト/青梅財団作画室
・目次カット/神家処奈他
・パロディ漫画「琴子ちゃんの放課後 -銀色のハーモニー-」(5頁)
AKUSYU 0.5 SECOND
・コラム「オタク的徒然草」(1頁)豊川宗憲
・アニパロイラスト/かないみか夫(2点)
・アニパロイラスト/神家処奈他(4点)
・アニパロイラスト/七条乱雄斎(5点)
・アニパロイラスト/江田島平八(2点)
・アニパロ漫画「絶対無敵ライジンオー『出現!スケベ邪悪獣』」(8頁)
  七条乱雄斎
・「Vorstellung der Schreiber und Redakteure」(2頁)※編集後記に該当。
・コラム「エロ漫画の興亡」(1頁)豊川宗憲
・表紙3カット/神家処奈他
・表紙4イラスト/七条乱雄斎

裏表紙に記されている独文はI上が考えた「SSP」のスローガンです。元ネタはドイツにあった政党のスローガンで、以後、『GELBE SONNE』の裏表紙と『SCHAFS NACHRICHTEN』に表示されることになります。

今号から新しい執筆者が加わりました。
◎青梅財団作画室
青梅財団の実妹で「SSP」初の女性参加者です。既に彼女はゲームジャンルのサークルで同人誌活動を行っていました。

◎神家処奈他
誌名はもう特定できませんが恐らく『四面楚歌-第弐号-』の通信頒布かと思われます、の申込み者だったのが縁で参加となりました。
後に彼は「木林山」という男性向ジャンルのサークルを立ち上げてコミックマーケットに参加するなど、独自にサークル活動を開始しました。また、「SSP」以外にも「あやしげ団」と「SOLEX」という同ジャンルのサークルにも寄稿するようになります。

◎江田島平八
彼については「第17回『コミックマーケット40』」で紹介しましたが、この時既に「帝国金融」という個人サークルを主宰し、「Schul-mädchen」という男性向のオリジナル誌を発行していました。

◎かないみか夫
とよまえ♡しょう子が改名したものです。俳優(声優)のかないみかのファンだったのでこのペンネームにしたようです。

今号から製作に“修正”という過程が加わりました。
これをどう施すか? というのが悩みの種でした。
従来通り描いて後から隠すのか、それとも最初から描くのを省いてしまうのか…… この問題についてはI上と私との間でよく話をしたものです。
結局、各執筆者の判断に任せ、必要な場合はこちらで修正を施すことにしました。

どういうキッカケだったのかは忘れてしまいましたが、『GELBE SONNE 3』と同様に何か特集をやろうということになり、I上と私とで話し合った結果「先生特集」にしようということになりました。しかし、これは各執筆者との調整がつかず、先生キャラを描いたのはI上だけだったため不発に終わったと言えます。

表紙のインクの色は、私の提案で発行日の季節を考慮し“オータムカラー”ということでブラウンにしました。良い色で気に入っています。

印刷所は「日光企画」を利用しました。男性向同人誌というのことで名を伏せて「東京開封府印刷」と奥付に記しています。

今号も「読者アンケート」を挟み込みました。この頃、まだ在庫を抱えていた『四面楚歌 -第弐号-』の通頒案内ペーパーである『SCHAFS NACHRICHTEN Vol.11』と合体した作りになっています。

さて、初頒布の「コミックレヴォリューション10」がやってきました。
【コミックレヴォリューション10】
◎開催日:平成3(1991)年11月17日(日)
◎会場:東京都豊島区池袋「サンシャイン文化センター ワールドインポートマート」
◎配置場所:「イーグルの間 Y-36A」
◎売り子:M本・真慧多昭彦(筆者)

印刷所からの直接搬入で200部持込み、101部という頒布結果でした。

記録を読み返して「あれ、こんなに出ていたのか」というのが現在の私の感想です。初頒布で3桁の結果は「SSP」初でした。
この時、スペースでのM本と私の詳しい様子は思い出せませんが、かなり機嫌が良かったのは憶えています。

しかし、頒布できたのは半分の部数です。
この後、通信頒布に取り組まなければなりません。

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かつて男性向同人誌の存在意義とも言える二大特徴は、商業誌ではまず見られない、アニメをはじめ既存のキャラクター題材としたパロディ、今日で言う二次創作の存在と、無修正であることでした。
ところが、平成3(1991)年2月の男性向同人誌摘発を受けて同人誌にも修正を義務付けられたのですから、これは車の左右の両輪のうち片方が失われた大きな損失で、大変失望したものでした。また、これによってこれからの男性向同人誌の行く末がどうなるのかという不安もありました。
そのような沈滞ムードの中での製作にもかかわらず、『GELBE SONNE 5』は良くできていると思っています。
この時にこうして本を作らなかったら、「SSP」の活動はここで終っていたかもしれません。

『GELBE SONNE 5』の中表紙。
「琴子ちゃんの放課後 -銀色のハーモニー-」より。

《第19回「GELBE SONNE 5〈前編〉」おわり》

※文中敬称略

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