見出し画像

大羊春秋~羊務執筆者党史~(10)

この「大羊春秋」(だいようしゅんじゅう)とは、私 前多昭彦が主宰していた同人誌サークル「羊務執筆者党」(ようむしっぴつしゃとう・略称SSP)の活動を振り返る「回顧録」です。

GELBE SONNE 2

『GELBE SONNE 1』を無事発行できたことに気を良くした私とI上は、当然ながら『GELBE SONNE 2』の発行を決め、製作に着手し発行となりました。

『GELBE SONNE 2』の表紙と裏表紙。

詳細は次の通り。
『GELBE SONNE 2』(ゲルベゾンネ ツヴァイ)
◎入稿日:平成元(1989)年11月29日(水) ※領収証の日付による。
◎発行日:平成元(1989)年12月24日(日)
◎印刷所:しまや出版部
◎B5判・44頁・本文用紙70kg・無線綴じ・100部印刷(見本誌9部)
◎頒価350円
◎表紙:ミラーコート・1色刷り
◎ジャンル:男性向
◎内容(ほぼ掲載順)
・表紙イラスト/真慧多昭彦
・表紙2カット/真慧多昭彦
・中表紙イラスト/七条乱雄斎 ※七条治臣の改名
・目次カット/真慧多昭彦
・オリジナル漫画「BORN IN THE NISHIAZABU」(12頁)七条乱雄斎
・オリジナルイラスト/吉野ケ里伊籍(3点)
・アニパロイラスト/七条乱雄斎(6点)
・「Sagen der Werker」(1頁)※編集後記に該当。
・オリジナル漫画「愛のオーバーフェンス」(16頁)七条乱雄斎
・表紙4イラスト/真慧多昭彦

A藤(ベーカー街221B)の厚意で今号でもタイトルなどに写植を使用しています。

表紙は「トップをねらえ!」(OVA・1988~1989発売・全6話)のタカヤ・ノリコ、裏表紙(表紙4)は同アニメのアマノ・カズミです。

七条乱雄斎によるアニパロイラストは「機動警察パトレイバー」などが題材となっています。

いつ頃、何故依頼したのか分かりませんが、おそらく『四面楚歌 -第弌号-』製作より前でしょう。当時、I上の手元には数点の男性向同人誌用オリジナルイラストが眠っており、今号でこれを使おうということになりました。

これに際し、執筆者名をどうするか問題になります。まさか本名は使えませんし、交流が途絶えた人のため、問い合わせてペンネームを決めてもらうこともできません。
そこで、まるで遺跡のように見つかったので、その頃話題になっていた吉野ヶ里遺跡を名にしようとなったのです。さらにI上の案で“遺跡”を『三国志』の登場人物“伊籍”(い・せき)に引っ掛けようということで、「吉野ヶ里伊籍」という名になりました。
原稿サイズがB5原寸で投稿サイズに合わないため、編集段階で加工して掲載しています。

今号の製作では波瀾がありました。
表紙・裏表紙を「トップをねらえ!」を題材にして描きましたが、当然ながら本文でも同アニメを題材としたイラストなどを描くつもりでした。
ところが私は11月にダウンしてしまい、その後も体調は治ったものの意気が上がらず、本文原稿が描けなかったのです。
さらに「第9回」で語りました「水谷優子公認F.C.アップルパイ」への参加も影響していました。

原稿の数が足らないのですから、これには二人とも困りました。
そこで七条乱雄斎による漫画が2篇掲載されるという“ウルトラC”を行った訳です。実は「愛のオーバーフェンス」という作品は、I上がとある出版社へ持込みのために描いたものです。残念ながら採用されなかったため、流用することができました。

「BORN IN THE NISHIAZABU」より。

初頒布は「コミックマーケット37」です。
【コミックマーケット37】
◎開催日:平成元(1989)年12月23日(土)・24日(日)
◎会場:千葉県千葉市「幕張メッセ」
◎配置場所:24日「N-76b」
◎売り子:I上・真慧多昭彦

搬入数は100部で頒布結果は53部でした。※印刷所からの直接搬入。

無名の「SSP」にしては好結果と言えるでしょう。
スパースではこの他に『GELBE SONNE 1』『BokyBoky』、「C本」の『NIPPON CHA!! CHA!! CHA!!』『RAMMA“C”BUCH』『Kyara』、A藤による点描イラストを収めた『POINTILLISM』が頒布されました。

「コミックマーケット」はこの「37」から会場を「東京国際見本市会場」から、この年の10月9日(月)にオープンしたばかりの「幕張メッセ」(正式名は千葉県日本コンベンションセンター国際展示場)へ移りました。
当日はI上の運転する車でA見と私の3人で会場へ向かいましが、外は冬の冷たい雨だったのを憶えています。

当時、私は「クレイジーキャッツ」にハマっていたので、その歌をスペースで声に出して歌っていたところ、“みっともないからやめてくれ”という旨でI上に注意されたのを憶えています。(笑)
また隣(N-77a)の「団結小屋」が独特な雰囲気を持つ非常に個性的なサークルで圧倒されました。

帰りも冷たい雨の中でした。「幕張メッセ」はとにかく神奈川県からは遠く、往復に時間が掛かったのが印象に残っています。

平成2(1990)年1月のある日(10日だったか)、「羅美亜企画」という編集プロダクションから封書が届きます。ちなみにこの「羅美亜企画」、同名で同人誌を発行しサークルとしてコミケに参加していました。

中山天子という人による手紙は、「先のコミケ37で『GELBE SONNE 2』を購入したのだが、自らが担当している漫画誌でそれを紹介させてもらえないか」という旨でした。
勿論、一も二も無くこの申し出を承諾しました。
こちらから掲載を申し込むのではなく出版社サイドからの掲載依頼ですから、これは驚いたのと同時に非常に嬉しかったです。
掲載された光彩書房刊の成人向漫画雑誌『COMICアットーテキ1990年7月号』(A5判・無線綴じ)は献本ということで私の元へ送られてきましたが、現在でも大切に保管してあります。
掲載された誌面は「第26回誌上同人誌即売会」が歌い文句の「同人誌フィールド」というコーナーで、全部で5誌が紹介されています。

紹介文は私が書きました。
その文章を全文掲載します。

▼引用開始▼
「アットーテキ」誌上初登場の羊務執筆者党です。今回、我が党のゲルベゾンネ2を紹介させて戴く事になりました。さて、二篇掲載されているオリジナル漫画の内の一つ「BORN IN THE NISHIAZABU」は昨今の深刻な社会問題を鋭く浮き彫りにした作品…… なぁんてちょっとオーバーですが、まぁとにかく読んでみて下さい。猶、一号も僅かですが在庫がありますので、興味のある方はどうぞ。又、我が党では常時執筆者を募集しています。
▲引用終了▲

相変わらず気負った青臭い文章で、今読み返すとちょっと恥ずかしいですね。
ちなみに当時22歳でした。

『COMICアットーテキ1990年7月号』の表紙。

通信頒布の詳細は次の通り。

◎COMICアットーテキ1990年7月号=26冊
※光彩書房発行。A5判・平綴じの成人向漫画雑誌。

◎コミック コッペパンVOL.12=9冊
アミカル発行。B5判・中綴じで「スーパーコミック」7月号の増刊。
コーナー名は「同人誌キャッチアップ」。『GELBE SONNE 2』以外に7誌が掲載され、紹介文はコーナーの担当編集者が執筆している。この号をもって休刊。

◎コミック ドルフィンVOL.6=1冊
司書房発行。B5判・中綴じの成人向漫画雑誌(月刊)。掲載紙亡失により詳細不明。

実は上記の他にもう一つ通頒が記録されているのですが、掲載誌などは一切記されておらず、ただ「※通販価格369円✕10冊」(原文のまま)とあるだけです。全く覚えが無い謎の通頒です。

私が本文を描かなかったために、言わば“看板に偽りあり”の本になってしまい、これは当時かなり悔やんだものです。たいぶ弱まりましたがいまだにその思いはあります。
同人誌即売会ならともかく、内容がよく確認できない通信頒布で入手した人には申し訳無い気持ちでいっぱいでした。
表紙はさておき、結果として本文の執筆をほとんどI上が担当していることから、画風に統一感がありまとまりがあるのという点では評価できます。
表紙と裏表紙のイラストは我ながらよく描けていると思っていて気にっています。「SSP」で発表した私の作品はほとんど「pixiv」の私のアカウントにUPしていますが、この2点は評判が良い方です。

《第10回「GELBE SONNE 2」おわり》

※文中敬称略

ご意見・ご感想・ご質問がありましたらお気軽にコメント欄へお寄せください。