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米国史にみるトランプ主義の底流

トランプ政権発足を機に米国の歴史を見直そうと思い、図書館で本を借りた。「歴史は繰り返す」と言うが、今に通じる部分があるので、紹介しよう。
その本とは『シンプルな英語で話すアメリカ史』ジェームス・M・バーダマン著、株式会社ジャパンタイムズ発行。硲充、千田智美による日本語訳つき。

トランプ大統領は、カナダは米国の一部になるべきだ、と唱えたが、同じような動きが200年ほど前にあった。
19世紀初頭、ヨーロッパはナポレオン戦争の渦中にあり、英国海軍はナポレオン軍と戦っていた。兵員を増強するため英国海軍は米国の船をとらえた。米国の船員を英国海軍に組み入れようとしたのである。米国民は憤慨し、議会のタカ派は英国への宣戦布告を提唱した。
以下前掲書からの引用で、( )内は私の加筆です。

#####(宣戦布告の)動機は、1つにはアメリカの船員たちの連れ去りをやめさせるためだった。2つ目はさらに重要で、アメリカの領土拡大だった。タカ派は、イギリスの支配下にある領土であり、アメリカ北部と国境を接するカナダを奪いたいと思っていた#####

30年ほど前、ある米国民が私に向かって「カナダはアメリカの裏庭だ」と言い放った。このカナダを見下ろす発想が米国で広く共有され、トランプ大統領の発言につながったのではないだろうか。
1812年、米国は実際に英国に宣戦布告し、米英戦争が起きた。

時代は進んで、第一次世界大戦の終結後、米国のウィルソン大統領が主導して、国際連盟が創設された。しかし、米国議会が反対したため米国は国際連盟に加入せず、この非加入は米国の孤立主義を世界に印象づけた。以下引用です。

#####(国際連盟への非加入)は、アメリカで孤立主義が高まっていることの1つの兆候だった。戦後、孤立主義者たちは、アメリカが世界の他の国々が抱える問題から距離を置くことを望んだ。彼らは、まず自国の問題を解決すべきであり、他国の問題を解決するために時間とエネルギーを費やすべきではないと考えていた#####

トランプ大統領は「アメリカ・ファースト」を叫び、国連軽視の行動をとっている。これらと重なる記述である。
さらに第一次世界大戦後、新たな移民への反感、伝統的な価値観を重んじる雰囲気も高まった。

#####「移民排外主義」、あるいは「アメリカニズム」が高まり、「古株のアメリカ人」に重きが置かれた。これらの言葉は、「伝統的なアメリカの価値観」を維持することを示していた。クー・クラックス・クラン(KKK)などの移民排斥主義者たちは、英語を話さず異なった習慣を持ち、ヨーロッパ北部の出身ではない新しい移民に対し懐疑的になった。議会は、ヨーロッパ南部及び東部からの移民を制限する法律を可決した。こうした「国籍法」は、イタリア人、ギリシア人、スラブ人、ポーランド人、ユダヤ人に深刻な影響を与えた#####

第一次世界大戦後、しばしの平穏を経て、世界史は世界恐慌、第二次世界大戦へと波乱をたどった。
「歴史は繰り返さない」ことを願う。

イラストは ONWAイラスト より借用。

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