拙著『民衆 対 陸軍』の9~11章は次のような内容です。
第一次世界大戦の結果、ロシア、ドイツ、オーストリア、オスマンの四帝国が崩壊した。わが国は「残された帝国」となり、指導層は四帝国と同じ道を歩む事態を恐れた。その一方、米国主導のワシントン体制により、わが国は大陸進出の道を阻まれる。
ロシア革命は「民衆の台頭」を世界的に促し、わが国では皇太子狙撃事件が引き金となって第二次護憲運動が始まり、男子普通選挙が実現した。
普通選挙と同時期に治安維持法が定められ、この法律による弾圧で社会主義勢力が衰退する。普通選挙を支えとする「議会主義」、そして「軍国主義」の二つがわが国の主たる思潮として残された。
章節立ては以下。
9章 「残された帝国」とワシントン体制
第一次世界大戦により四つの帝国が崩壊 / わが国は「残された帝国」となった / ワシントン海軍軍縮条約による軍備抑制 / 九カ国条約による中国での行動抑制 / ワシントン海軍軍縮条約による軍艦の処分 / 軍人軽視の風潮が広まった
10章 社会主義の復活と革命の悪夢
ロシア革命により労働争議が増えた / 日本共産党の結成と皇太子狙撃事件 / 清浦「貴族院内閣」と政友会の分裂 / 共和制や社会主義は指導層にとり「悪夢」だった /
『細雪』にみる亡命ロシア人の困窮 / 普通選挙は山県らに「革命」を連想させた
11章 普通選挙と社会主義の退場
護憲三派による第二次護憲運動 / 男子普通選挙の実現 / ソ連との国交樹立が治安維持法を後押し / 多難だった加藤高明内閣と第一次若槻内閣 / 在郷軍人会を率いて田中義一内閣が誕生 / 宇垣一成によると政党は営利目的だった / 治安維持法により「社会主義」が退場