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この世界は、理不尽という名の戦場だ。

そんな世の中を生き抜くために
私は自分を殺し続けた

波風が立つ度に
一人づつ死んでいった

最近、やけに静かだ
そういえば、
このところ戦闘もない

気づけば、誰もいなかった

戦争は終わっていた
倒すべき自分は、もういない
やっと望んだ平穏が手に入った

それから?
次は、なにをしよう?

何もなかった
平穏以外に望むものなどない

そして、思い出す
私が、人間ではなかったことを

私は、システムだ
心の平穏を守るために生み出された

現実と自分自身との折り合いをつけるために
現実に適合しない自分を処分するために

私は人生の主役ではなかった
疑ったことさえなかったけれど、
偽物だった。役割だった。

平穏な世界には、なにもない
ここは、現実ですらない

理不尽な現実も、この焼け野原も、
どちらも意識が作り上げた壮大な虚構

魔法は解けた
世界は消える

命を懸けて守り抜いた無人の戦場は、
その役割を終え、消滅する

もしかしたら、もう、
滅びているのかもしれない

誰もいないのなら、
誰も私を認識できない

既に独りですらないのかもしれない

誰もいない静かな戦場にて


戦いの最中、私は確かに彼女だった。

残像となった彼女は、
世界とともに滅びるつもりだろうか?

私が願ったのは、
彼女が戦わなくても
生きられる世界だった。

そんな世界観を心の中に創ろうと思う。
いつか、彼女と過ごせるように。

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