現実に、逃避している。

私の中には、
夢ばかり見ている人格がある。
名は、夢子。
現実逃避してばかりの役立たず。
人生を食い潰す時間泥棒だ。

優等生キャラの自我派閥から嫌われ、
カーストは最下位。
クラスからも浮いている。

それが、私の精神世界の勢力図。

力関係は現実にも反映され、
優等生の自我は、最大勢力の派閥を築き、
クラスでも絶対的な権力を握るっている。

自我の独壇場。
それが、私の現実。

けれど、私が現実だと思っている世界は、
自我によってトリミングされた現実。

現実だけど、全てではない。
自我にとって都合よく書き換えられた現実の
一部を、全てだと思い込んでいる。

私の現実は、実際の現実の一部。

私が思う現実は、鏡の壁で覆われている。
鏡の向こうにある現実が、目に触れないように。

優等生だから、成績がいいから、
先生からの信頼が厚いから、
校則を守っているから、
カースト上位?

むしろ、
ウザがられているし、
小馬鹿にされているし、
利用されていませんか?

そんな空気を読もうとすらしない。
なにせ自我は、清廉潔白ですから。

そんな我が自我は、
風紀向上のため不届き者を従わせ、
反する者を追放しまくっている。

夢子はもちろん、
自我にとって都合の悪いキャラは、
派閥の外へ追いやられる。

派閥内は、イエスマンばかり。
権力に溺れない方が難しい。

常識的で、お行儀のいい、
わかりきった安全な世界。

自我が守りたいのは、安全。
都合の悪い私を追放することで、
死亡リスクは低くなる。

つまらなくても、窮屈でも、
命を落とすような選択は現れない。
「死亡」が存在しないRPG。

それが、自我の映像化する現実。
自我にとって、都合のいい世界。


認識しないことで、
いない者とすることで、
存在を無視することで、
価値観の合わない世界との干渉を断つ。

多少、干渉し合っても、
優等生キャラは、手札が多い。
派閥も、先生のエコ贔屓もある。
校則を持ち出すことも、
逆手にとって悪用することもできる。
ノートを貸して恩を売るのもアリ。

なにかと手出しされにくい立場を
確保し、権利と安全を確保している。

派閥を利用して、利権を守る。
派閥がなければ、身を守ることもできない?

自我って、ぼっちに耐えられないくらい
非力なのかな?

なら、逃げていたのは、どっちなんだろう?

現実逃避は、子鹿メンタルの夢子の得意技。

そう断じたのは、自我。
派閥に逃げ込んでいたのも、自我。

自我は、誰から逃げたんだろう?
自我が、夢子から逃げていたとしたら?

私は、自我がトリミングした世界しか見えないし、
現実だと思っている。

自我の視点からしたら、夢子から逃げる程に、
夢子の方が現実から遠ざかっているように見える。

それを、夢子の現実逃避と呼んでいる?

都合のいい現実に逃避していたのは、
自我かもしれない。

なら、夢子は逃げてはいないのかも。

いつだってクラスにいたし、
席だって変わっていない。

自我に目をつけられ、勝手に敵視され、
入るつもりもない派閥から追い出され、
やることなすことらダメ出しされ、
揚げ足取りの文句を言われるけれど、
ま、聞いてないよね。

ずっと自我の隣の席で、
あり得ない夢を見続けている。


夢子の夢をあり得ないと決めたのも、
夢見ることを役に立たないとしたのも、
自我だ。

自我にとって都合のいい世界は、
自我の安全が保障された小さな世界。

なら、都合の悪い夢子の世界は、
自我の世界を脅かす大きな敵。

だから、否認することで、力を奪った。

役に立たない?
自我にとっては、不要なだけ。

夢子の力は、想像力。
今、存在しないものを思い描くこと。
可能性を具現化する力。
無常の未来を築き続ける力。

今ないものを創造することは、
今あるものを破壊する力でもある。

素晴らしい未来は、
不要な過去を創り出す。

自我が夢子を認めないのは、
今ある世界が不要になるから。
自分の世界が作り替えられてしまうから。

これまでにないものが生み出され、
今あるものは、消えてゆく。

世界は、再構築され、
自我そのものが、変化する。


夢子は、「腐ったみかん」
感染したら、自我まで腐ってしまう。
だから、触れることさえ、許せない。

けれど、あくまで自我の視点。
腐っているようにしか見えなくても、
本当に腐るのかは、わからない。
腐っているかさえ、わからない。

夢子の目線なら、世界はどう見えるのだろう。

私の現実は、いつかその世界を映し出すことが
できるだろうか。

 fumori 


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