頭が良くなるパンください
学生にとって夏は定期試験やら論文やら受験やらで何かと忙しい季節。この時期になると決まって思い出すことがある。
大学生の頃、食費を削ってCD代と書籍代を捻出するという生活を送っていた。バイトもしていたし、生活には困っていたわけではなかったけれど、尋常じゃない額のCD(ほとんどこれ)やら学術書やら専門誌などを買い漁っていたからだ。
誰かと一緒に食事をする時以外、昼ごはんは300円程度でそこそこカロリーがあるもの、と決めていた。
そんなある日、大学生協の売店で出会ってしまったのだ。卒業するまで私のキャンパスライフを支え続けてくれた素晴らしい相棒に。
運命の出会い
それを最初に手に取ったのは、必修科目のドイツ語基礎の定期試験を午後に控えたお昼時だった。絶対に落とせない試験だった。しかも先生がカッコいい。名前を覚えてもらうには、ここで良い成績を残すしかない。
ひと通り試験勉強はしたものの、拭い去れない一抹の不安。やはり最後の最後まで準備を怠ってはいけない。昼食といえども気を抜いてはいけない。そう思った私は、最後に食べ物のチカラを借りた。
博士っぽいイラストが書いてあって、中身は大きなぶどうパンのように見える。
そう、頭脳パンだ。
100円そこそこで手に入り、ボリュームがあって、何となく頭も良くなりそう。勝負前の私に最&高ではないか。
***
後日、キャンパスを歩いていたら、ドイツ語を発音する時の渋い声が素敵なイケメン先生から呼び止められた。
「この間の試験、よく勉強したね。」
「あ…はい…まぁ…」
全力で平静を装ったものの、羽が生えていたら飛んでいた。何よりイケメン先生が私を個体認識しているのだ。
ありがとう頭脳パン!!君のおかげだ!
これ以降、大事な試験やプレゼンの前に生協のパンコーナーに向かうことが私なりの勝利のルーティンになった。
っていうかそもそも頭脳パンって何
あの頃の頭脳パンはどこで手に入るんだろうとふと思い立ち、調べてみた。
http://ito-pan.jp/about-zunopan/lecture/history/
一部の大学生協では売られていたようだが、今でも入手できるのかは不確かだ。中年の脳にも効くのか試してみたかったのだが。
当時呪いにかかったように食べていた頭脳パンには一体何が含まれていたのか、思えば考えもしなかった。
頭脳パンには頭脳粉が含まれているらしい。うーん、今更ながら怪しい。
メーカー情報によると、頭脳粉とは単なる小麦粉ではなく、ビタミンB1を多く含む小麦粉だという。ビタミンB1は糖をエネルギーに変える手助けをしていて、疲労回復に効果がある。
つまり
「よく勉強して疲れた貴方をビタミンB1の力で癒してあげます。でも勉強しなさいよ!」
って訳だ。
時は経ち、試験こそ受ける機会は減ったけれど、それでも大事な仕事の前になると今でもふとあの味が恋しくなる。
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