こだわりが上手く語れない 【つくり手であること】
手元の辞書にはこうあります。
こだわり 【拘り】
他人はどう評価しようが、その人にとっては意義のあることだと考え、その物事に深い思い入れをすること。
おそらく、何においてもこだわりがない、なんて人はいないと思いますが、わたしは最近、自分のこだわりこそ上手く語れないなぁ、と思ったりすることがあります。
昨今エビデンスなる概念が幅を利かせ、なんとなく、感覚的なものへの信頼が失われているように思うのです。でも私のこだわりは感覚的で、且つ、好みの問題も大きいよな、と。
結局のところ、それが好きだから、もしくは、快適だから、おいしいから、似合うから、体にいいから、といったこと。お片付けのこんまり風に言えば、ときめく、という感覚に近いのが私にとっての「こだわり」のように思っています。故に言葉化が悩ましい。
こだわりのチーズケーキにときめいた
ときめくといえば、最近ものすごくおいしいチーズケーキを食べる機会がありました。
ありがたいことに家族や友人・知人に食の生産者が多く、仕事でも食のつくり手に会うことが多いことから、ウチでは野菜もお米も相当おいしい素材を食べている一方で、おやつにはそれほどこだわりがありません。
たまに自分でつくるときこそ無添加ですが、割とどこでも買える安価なスイーツを「うまいうまい」と喜んだりします。
がしかし、最近いただいたこれは、数多の専門家がこだわりにこだわり抜いた、こだわりの塊のようなチーズケーキ。これを食べたとき、「こだわりってこういう時に使う言葉だな」と実感しました。
作ったことがある方はご存知だと思いますが、レアチーズケーキは通常、クリームチーズと、同量ほどの生クリームが主な材料で、溶かしバターで固めたクッキー生地の上に、ゼラチンで形を保つ程度に柔らかく冷やし固めたケーキです。
濃厚なチーズの風味と、爽やかな後味、ねっとり感ある口当たりや、適度に加えられたお砂糖の甘み、そしてサクッとほぐれるクッキーの歯ごたえ。「ケーキといったらまずレアチーズ!」というくらいお好きな人も少なくないでしょう。私もこういう定番タイプのチーズケーキが好きです。
先日いただいたこのチーズケーキも、濃厚で、ねっとりしつつも爽やかで、しっとり&サクサクのクッキー生地が最高においしくて、直径14cmならホールごと食べれそう、とさえ思いました(まじです)でも理性で1度に1ピースと抑えて、「明日になればまた食べられる」と翌日のピースを楽しみに寝たほどおいしいチーズケーキでした。
このケーキのこだわりとは
では何がそれほどこのケーキの「こだわり」なのかと言えば、上に書いたクリームチーズ・生クリーム・バター・ゼラチンといった動物性食材を一切使っていないこと。さらには食品添加物も使われておらず、完全なヴィーガンのレアチーズケーキなのです。
私を含めてヴィーガンのレアチーズケーキを食べたことがある人は相当数いると思うので、これを読みながら「あんな感じかなぁ」と味を想像できる人もいるかもしれません。
ヴィーガンのチーズケーキを作ったことがある人なら、酒粕かな?甘酒かな?はたまた白味噌?と材料まで想像できたりするでしょう。(私もしました)が!このチーズケーキは、過去のそれらを一切忘れさせてくれるはずです。そのくらいおいしい。まじでももう、びっっっっっっくりしました。
私はこれまでわりと色んなヴィーガンのケーキを食べてきてるように自負してるのですが、心からおいしいなぁといただいたとしても、それでも"チーズケーキ"とは違うものだと感じる気持ちも否めずにいました。
私と同じように感じたことがある方や、少なくとも「うん、ヴィーガンケーキってこうだよね〜」とある種の納得感を自分に向けながらケーキを食べたことがある人、あるいは、おいしいヴィーガンスイーツと出会ったことがないという人にこそ、ぜひとも試してもらいたいケーキです。
もう少し詳細を
このケーキ、つくってくれたのはヴィーガンスイーツや植物性食品を世に届けるプラントベースブランドの「ビオクラ」社。ネットで注文すると、6ピースにカットされた冷凍の状態で届きます。
解凍は冷蔵庫に入れて約5時間。「ビニール袋から食べる分だけ取り出し、食べる5時間前に冷蔵庫に移動するのが良い」とのことでした。(常温解凍はお勧めされていません)
が、逆算の概念があまりない上にいつ食べたくなるかわからない私は独断で判断し、一度に全ピースを解凍しました(丁寧に教えてくださったのにすいません)
ケーキの高さ約4cmよりも高さのあるホーロー容器に移し入れて冷蔵庫へ。約6時間後に1ピースをいただき、超絶感動して、さらに翌日と翌々日にも味わい、二人家族なので3日掛けて完食。それでも最後まで風味が落ちることはなく、乾燥したりボソボソするようなこともなくて、ずっとおいしいままいただくことができました。
聞くとこのケーキ、納得いくクオリティにまで1年を要して開発されたとか。自社開発された豆乳クリームが使われていますが、大豆の味や香りは感じさせず、たっぷり入ったレモンゼストが爽やかな後味と、白ワインビネガーによってチーズの発酵感も演出。ゼラチンではなく寒天を使い、表面のナパージュも手作りされたアプリコットジャム、そしてバターの代わりの菜種油、それも圧搾されたものを使用、とこだわりまくりです。
(↓こういう時つい見ちゃうのが箱の裏。たくさんの原材料だけど、乳化剤も甘味料も香料も、植物油脂とかも一切入っていませんでした)
いやぁ〜、お見事。これ本当に、言われなかったらヴィーガンだと気づきませんて。
「商品名に「ヴィーガン」とか「ソイ」とか「チーズ風」といった名前をつけなかったのは、味への自信の表れです」
とはビオクラご担当者の言葉ですが、それ大正解!!と思いました。だってこれ本当にあのレアチーズケーキですもの...!
最後に今後の期待を
最後にちょっと意地悪な質問かもしれないと思いつつ環境配慮について尋ねると、この外箱はFSC認証を取っているとのことでした。梱包に使われていたエアクッションをプラスチックフリーにする予定は「今後の課題です」とのことですが、ここまでこだわっているところから、そう遠くないうちに実現くださることを期待しています。
ちなみに、次なるヴィーガンケーキの発表は「モンブラン」を予定されているそうで、このクオリティでモンブランとは!!と、すでに期待いっぱい。とっても楽しみです。
形になったプロの「こだわり」、早速またお願いしてみるつもりでいます。親に送ろうかな。
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映画監督松井久子が編集長となり、生き方、暮し、アート、映画、表現等について4人のプロが書くコラムと、映画づくり、ライティング、YOGA等の…
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