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【第1回】そもそも、なんで不眠症になったのか記憶をたどってみた。

会社を辞めて2年くらい経った頃だったと思う


前回書いたように、34歳くらいで不眠症になって、37歳で治そうと決意し、39歳で一応「治った」と言える状態になったわけですが、

そもそもどうして不眠症になったのだろう?

と考えてみると、その原因はイマイチはっきりしません。

でも、記憶をたどってみると、不眠症におちいった当時の私の中には「焦燥」と「多忙」がありました。

夜、ついつい考えごとをしてしまって寝つけない日が続いたのは、会社を辞めて独立してから2年ほどが経った春のこと。

娘が生まれて1歳になるまで大手出版社で書籍編集者をやっていましたが、会社員に向いていない自覚は十分すぎるほどありましたし、何しろまだ30過ぎでしたから「自分の力で何者かになりたい」という若々しい願望を抱いて独立したのでした。

さいわい、独立した翌月にはお仕事をいただき、その後も順調にお仕事は増えて、忙しい毎日を送っていました。収入も会社員をやっていた頃よりずいぶん増えました。

ところが、ある晩ふと、

「これが、本当に独立してやりたかったことなのか?」

と考え始めてしまったのです。

「会社を辞めて、2年も経つというのに、”自分らしい何か”を一つもやってないんじゃないか」当時のお仕事の大半は、知人経由で企業から持ち込まれるいわゆる「コンサル仕事」でした。つまらないお仕事というわけではなく、それなりに感謝も評価もされてはいましたが、「日銭のために自分の人生の時間を切り売りしている感じ」が心のどこかにあったのだと思います。

ベッドに入ると、必ずやってくる「問い」


「これが、本当に独立してやりたかったことなのか?」
「これで、自分の人生は本当にいいのか?」
「収入を減らしても、違う方向に舵を切らなくてはいけないのではないか?」

ある晩、一瞬ふっと自分の中に湧いてきた自分への問いは、その後も何度も何度も去来するようになりました。家族より早く起きた朝のひと時、ランチを食べてひと息ついている時、保育園のお迎えのために一人で車を運転している時ーーそんな緊張が解けたタイミングに、その「問い」は必ずやってくきます。

そして、忙しい一日を終え、ベッドに入り横になると、必ずその「問い」が浮かんできてしまう。やがて、ベッドに入る=「問い」がやってくる、という条件反射のような状態になりました。

「これが、本当に独立してやりたかったことなのか?」
「いや、違う」
「じゃあ、どうすればいいのか?」
「わからない」
「今、受けている仕事を辞めるか」
「いや、それは怖い」
「じゃあ、どうする?」
「わからない」
「このままじゃダメなことだけはわかる」
「じゃあ、どする?」

そんなふうに自問自答を繰り返しているうちに、目はどんどん冴えていき、頭は「焦燥」と、今晩も眠れないのではないかという「不安」でいっぱいになり、ほとんど眠れないうちに朝を迎える。

そんな日が、3日、1週間、10日と続いて、私はげっそりしていました。

頭がぼんやりして、まともに思考できなくなっても、「問い」はいつまでも容赦なくやってきます。そのうち、ベッドに入る→「問い」がやってくる→「眠れないかもしれない」と不安に襲われる、という一連の流れが、太い鎖のように完全に一体化してしまったようでした。

生きてる以上、避けられない「ぐるぐるの問い」


簡単には答えが出ない人生の問い、ああでもないこうでもないとぐるぐる考え続ける他ない問いーー「ぐるぐるの問い」とでも呼びましょう。

あれから年齢を重ねて40歳を過ぎた今でも、当時とはまた毛色の違う「ぐるぐるの問い」に捉われることはたまにあります。でも、今は上手に「頭のスイッチ」をOFFにする方法をある程度身につけたので、睡眠を妨げないよう夕方から朝にかけては「ぐるぐるの問い」を遠ざけられるようになりました。

「頭のスイッチをOFFにする方法」については、不眠症におちいってから治療が完了するまでの5年ほどの間に山のように試したので、効いたものも、効かなかったものも、またご紹介していきます。

生きている限り、「ぐるぐるの問い」から逃げることはできません。かつての私のように人生の希望に満ちた30代でも、「人生の折り返し」を意識し始める40代でも、それ以降でも、あるいは20代でも、10代でも、それぞれに難しい「ぐるぐるの問い」が待ち構えています。

何か明確なストレスがあったわけでもない。
身体の不調があったわけでもない。
ただ、ふと考え始めてしまっただけ。

たまたま囚われてしまった「ぐるぐるの問い」が、不眠症の一つの引き金になったのは確かです。「え、そんなことで?」と思われるかもしれませんが、きっと「始まり」はそんなものなのです。

ここから、つらいつらい「5年間」が始まってしまったわけですが、今から考えれば、初期に引き返せるポイントはたくさんありました。その「引き返し方」についても後で書いていきましょう。

次は「多忙と不眠症の関係」について書こうかな


不眠症におちった頃の私が抱えていた「焦燥」と「多忙」。

「焦燥」については今回書いた通りです。

次は「多忙」について書こうと思います。

「多忙」の正体とは何なのか?
「多忙」はなぜ不眠症のリスクを高めるのか? 
「多忙」の中でも不眠症の罠にかからないコツはあるのか?

 そんな話をしていくつもりです。

【補足】イラストについて:友人のデザイナーrinoちゃんが書いてくれた「どうしても眠れない目バキバキ猫(通称:めバキねこ)」。rinoちゃんが考えてくれたキャラ設定もちょっとずつご紹介。猫でよく寝るんですね。

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