街底の創作のたまご
行きつけのクリニックで、かわいいピアスを見つけた。小さな三日月に、銀色のうさぎがぶら下がっている。
「デイサービスに通う利用者さんが作ったんです」
通りがかったスタッフが教えてくれた。
自分の耳にピアスホールが無いのが少し残念に思えた。
手作り小物出品の催しが行われると、参加希望者で溢れかえるらしい。ギラギラした熱気が苦手で足を運んでいないが、毎年盛況だと聞く。
自作のイラストや写真、詩や小説を一緒に並べる人もいるとか。
利益を出すだけではないが、対価が一番分かりやすい評価なのだろう。
文化の育まれない街、と吐き捨てられた場所で育った。
知らない大昔のその人たちが言う「文化」とは、絢爛豪華な歴史的建造物や、名だたる賞を受賞した巨匠のことだろうか。
いま、ここで、街という鍋の底でゆっくり煮込まれている創作のたまごたちには、どのような名前をつければ良いのか。