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ボストン美術館展@東京都美術館 和洋中の美術品・工芸品の展示

夏休み2日目は、上野の東京都美術館で開催されているボストン美術館展に行きました。お目当ては、平治物語絵巻、吉備大臣入唐絵巻の全巻(1~4)です。
ボストン美術館にはアメリカ駐在中に一度だけ行きました。当時はどうしてこんなにも日本の美術品がボストンにあるのだろうか、と思いましたが、フェノロサの活動がきっかけだと知りました。
フェノロサの活動については以下が参考になります。

東京大学を卒業した時に岡倉は17歳、教師のフェノロサもまだ27歳でした。この若い師弟は、一緒に旅し、そこで感動を共有し、日本美術の保存と復興という目標を見出し、大きな役割を果たしました。国や言語を超えた師弟のこの協働は、既に明治の最初期から東京大学の知がグローバルな視点で探求されていたことを示しているのです。そしてそれが日本の文化や社会の新たな形を創っていったという、東京大学草創期の様子を伝えてくれます。教える側にいたフェノロサも、教えられる側にいた岡倉たちも、日本で新たな価値と出会いそれを吸収しつつ、相互に触発しあいながら、新しい知を作っていったのでしょう。時代の偏見や一時の流行に流されず、ときにインパクトやショックを楽しみながら独自の生き方へと変えていく、その時代を生きた挑戦者のたくましさが感じられます。変化の時代に行われたこの知の創造と、そこでの師弟の関わりは、大学という場での学びの本質を物語るものだと私は思います。

岡倉は後に、ボストンに赴き、フェノロサの収集品などを収蔵するボストン美術館の東洋部長として、活躍しました。そして、日本や東洋美術の価値を欧米に積極的に伝えました。また、中国、インドにも赴いて「アジア」という理念を打ち出し、日本をアジアの中に位置づけながら、そのあるべき姿を徹底的に考えたのも岡倉です。彼の考察は、有名な『茶の本』や『東洋の理想』などの英文著作として、欧米で刊行されました。彼は日本や東洋における美と文化のあり方を広く世界に発信し、それを通じて平和を訴えようとしたことがわかります。


式辞・告辞集 平成30年度東京大学学部入学式 総長式辞

日本の歴史的な美術品を海外に流出させた、という見方もあるでしょうが、明治になり破棄されそうになっていた美術品を海外に疎開させた、とも言えるでしょう。

さて、展覧会。いつものように朝一のチケットを取ろうとしましたが、朝二のコマ(10:00)でした。平日ですがお盆休みのせいか、結構混んでいました。写真撮影は不可でした。
展示場に入って直ぐに、ナポレオンの戴冠式の絵画、エジプトの遺跡、中国の乾隆帝時代の衣装、短刀、を観てからお目当ての平治物語絵巻がありました。NHKの大河ドラマの影響もあるのでしょうか、じっくり観る人が多かったです。
上の階には、宗教画、エルグレコ、大日如来像、フランスの陶磁器、ブローチ、日本画、銀の水差し、を見て回りました。
その上の階には、お目当ての吉備大臣入唐絵巻があり、これは並んでじっくり鑑賞しました。日本にあれば国宝級と言われるだけのことはあります。4巻すべてを観ることができます。
見終わって反対側には、何故かギターが。その後は狩野山雪の屏風、増山雪斉の孔雀図、で終わりです。
というように、ボストン美術館所蔵の和洋中の絵画・工芸品の展覧会で、並べ方は「権力者」というキーワードはあるものの、ストーリー性に疑問を感じるものでした。
平治物語絵巻、吉備大臣入唐絵巻だけでも十分でした。ギターは何だったのかよく分かりません。

ひねくれた言い方をすれば、和洋中の美術品・工芸品のうちどれが自分の趣味嗜好に合うか確認ができました。
私は、西洋画(風景、宗教画)、絵巻物、です。西洋画でも人物画には関心が薄く、陶器や服飾品には興味さえ湧かない、と。

展覧会では作品を鑑賞しながらいろいろ思索するのですが、今回は上記のような展示物だったので頭が混乱してしまいました。そのため、やや欲求不満が残ったので、トーハクに行きました。2500円で年間メンバーになっているので、常設展には無料で入ることができます。西洋美術館もメンバーカードがあるので無料で入ることができましたが、平治物語絵巻・吉備大臣入唐絵巻を見てからはやはりトーハクです。

源氏物語図屏風

国宝の源氏物語の屏風の前に座っていると、平安文学を読んでいるような気持ちになります。源氏物語は日本美術の原点だと思います。

源氏物語を表した扇子

浮世絵の展示もありました。好きな広重の作品は1作品しかありませんでしたが、この展示もいい。新版画も好きですが、広重の構図は抜群です。


東京都美術館、トーハクと巡りましたが、今日の鑑賞としてはトーハクの方がメインになってしまいました。

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