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苦くない珈琲なんて、ないと思っていた。 白金台の路地裏にある珈琲屋さんで、私はそんな珈琲を知った。仕事の打ち合わせでお店を初めて訪れたのは、未知のウイルスによるステイホーム期間が明けた、2020年の夏のことだった。 商店街の紹介冊子を作る企画にメインライターとして参加することになった私。店長さんが商店街の広報担当とあって、自然とその珈琲屋さんが打ち合わせ場所として選ばれた。 うさぎの名前を冠したそのお店の扉を開けて、真っ先に目が合ったのは、学究肌の人特有の雰囲気を備えた
私には3歳になる娘がいる。彼女は家から3㎞ほどの幼稚園に通っているため、通園は幼稚園バスだ。 私は彼女を毎朝、同じ時間に指定のバス停まで送っていくのだが、その道すがら通り過ぎる顔ぶれはいつも違う。家を出る時間はほんの1、2分か数十秒違うだけなのに、不思議である。 きっとみんなが、それぞれ「あ、腕時計忘れた」とか(最近は「スマホ忘れた」のほうが多いだろうか)、テレビの占いの結果が気になったとか(自分の星座が最下位だとその分、長く足止めされる)、そんなありふれた事情で、少しず