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TCGにおける勝者のゲームと敗者のゲーム

 私はなんでも見たものをカードゲームで考える人間だ。最近は投資の勉強をしていて、Winning the Loser's Gameを読んでいる。(下はアフィリンクではない。)いつものように思った。「これカードゲームと同じ話やんけ!!!」と。

 私の考える相手のレベルによるゲーム感の違いや、TCGのリスクリターンの考え方をうまく説明できそうな話が載っていたので、それを参考に本記事を書いている。

 勝者のゲームと敗者のゲームについて、投資家のチャールズ・エリスはテニスを例に説明している。アマチュアテニスは敗者のゲームだ。ゲームを終わらせるのは敗者であるという意味である。勝者のスマッシュで華麗にゲームが終わるのではなく、敗者のミスによりゲームが終わる。敗者のゲームに勝つには、リスクを取ってネットギリギリのスマッシュを撃ったりする必要はなく、安全に玉を返して相手がミスをするのを待っていればよい。対してプロテニスは勝者のゲームだ。熟練プレイヤーのミスは期待できず、選手の優れたプレイがゲームを決める。

敗者のゲームとしてのTCG

 TCGはどうか?ゲームの特徴として、比較的少ない選択肢から一つを選ぶことが挙げられる。MTGであればマリガン、どの順でカードを出すか、何を対象に呪文を使うか。

 とはいえ、5つしかない選択肢でも、二度あれば25択、3度あれば125択と指数で増える。うまくなるためにどうすればよいかという話題で「一貫性を持ったプレイ」という言葉を見ることが多い。もしあなたがデッキの構造を理解しゲーム全体の流れのイメージを持っていれば5択は5択でしかなく滅多に間違わない。

 しかし一貫したプレイ指針がなければ、ミス率はターン数に対して一気に全問正解する難易度が上がる。正答率99%の問題を5問連続で正解するのは95%だが、90%の問題では連続正答は59%、80%の問題では33%という具合である。

 80%で正解するプレイヤーは結構うまいほうだと思う。しかし、あなたがゲーム、あるいはマッチを通して1回ミスをするかどうかというレベルに達しているならば、80%のプレイヤーが相手のときはただ相手がミスをするのを待ってリスクを取らない行動を続けていればよい。あなたが勝者にならずとも相手はいずれ敗者になる。

 相手が100%ミスをしない、とまではいかなくとも、100%に近づくと急にミスは少なくなるので敗者のゲームでの勝利ができる見込みは急激に薄くなる。

 これが、「ランク戦では勝てるのにイベントでは勝てない」現象の正体であると考えている。スイスドローであれば相手はどんどん強くなっていくので、敗者のゲームから別の性質のゲームに変わるというわけだ。もし自分のリスクをひたすら削って相手のミスを待つようなプレイを意識的あるいは無意識的に習得していた場合、このゲーム感の変化についていけていない可能性があるだろう。

 例えば、一度相手の手札を0にしたが今はトップから引いた1枚以上の手札を持っているとして、あなたはフィニッシャーを出すかを考えているとしよう。通れば大きく有利になれるがカウンターされれば大きく不利になる。相手の手札が何枚までなら出すか。極端な例は相手の手札が1枚だろうがリスクがあるから出さないという選択である。敗者のゲームを想定しているので、トップデッキされた対処札で逆転される可能性を潰して、相手が安全にフィニッシャーを通させてくれる隙を見せるのを待つべきだという判断。

 極端な例はさておき、普通は一度手札をゼロにしたのだから勝ちに行くためにフィニッシャーを出すというケースも十分に考えて良い。さて、問題は相手の手札が何枚なら出すかだ。明確な答えの出る問題ではなく、トレードオフだ。1枚なら多分出す。2枚も出しそう。3枚は?4枚は?

 どこかでリスク、リターンの割合が入れ替わる分岐点がある。そしてその分岐点は想定するゲームによって異なる。ゲームを終わりに行かせなかった場合の勝率の評価を誤っていると、最適点の見極めを誤る。

 他にも、「平均勝率は48%だがドブンが強いデッキ」と「安定した勝率60%のデッキ」のどちらにより強く対策するかなど、ゲームの性質により最適点の異なるトレードオフは多く存在する。

TCGで勝者になる

 敗者のゲームのつもりでプレイしていたら平均勝率が上がったとしても強い相手には勝てるようにはならないから、イベント上位で当たる強い相手には勝てるようにならないぞ、というのがここまでの話。

 では敗者のゲームをできなくなったらどうなるか?華麗なプレイをして勝者のゲームになるのか。残念ながら滅多にならない。TCGのうまさはうまいプレイをすることよりも多くの場合ミスをしないことだ。たまに高度な読み合いや、普段しないようなカードの使い方などのファインプレーで勝つプレイヤーもいるが、稀。だいたい引いたカードを大きなミスなく出し合っていたら自然と勝敗が決まっている。

 限られた選択肢しかない場合には勝者のゲームが存在しえないが、無数の選択があればそこから勝者になる選択を取りうると考える。すると、ゲームが始まれば勝者になる選択はできないが、デッキ選択は勝者になりうる選択である。組うるデッキのパターンは無数にあり、有限な時間で試しきることはできない。プレイのうまさは多くの場合、完璧から引き算で決まる。一方でデッキ選択やデッキを作ることは完璧がわからない以上、下を埋めるよりも上に上げる方向で考える余地がある。

 以上、デッキビルダーとしてプロプレイヤーになった私のゲーム感とデッキを組むことへの考え方をベストセラーの力を借りて説明してみた。

まとめ

  • ゲームの勝敗を決定づけるのは勝者か敗者かでゲーム性が変わる

  • 相手が敗者になってくれないのであればトレードオフの最適点はリスクを取りリターンを求める方向にずらすべき

  • 勝者になりたければデッキを作ろう

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もりゆき
おもろいこと書くやんけ、ちょっと金投げたるわというあなたの気持ちが最大の報酬 今日という日に彩りをくれてありがとう