【BL二次小説】 続・喫茶チャリダー⑤
コンコン。
病院から社員寮へ帰ってきた福富は、新開の部屋を訪問した。
カチャ。
新「寿一」
ドアを開け福富を招き入れた新開は、腕の包帯を見て尋ねる。
新「どうしたんだその包帯」
福「たいしたことはない。それより……ム?」
新開の部屋の異変に気付く福富。
私物が段ボール箱に整理され、スッキリしている。
福「引っ越しか?」
新「寿一、オレ……」
新開は頭を掻きながら言った。
新「退職願出したんだ」
福「……なに?」
意味が解らない福富。
新「辞めるんだ、会社。……相談も無く急にごめん」
福「一体どういう……」
唖然とする福富に、新開は苦笑いしながら答える。
新「社長令嬢との結婚話を断ったんだ。会社に居られるわけないだろ?」
福「なん……だと?」
新「理由が理由だからさ。送別会も無し。まるで夜逃げだ。ははっ」
福富は新開の両肩をガシッと掴み、前後に揺さぶって声を荒らげた。
福「何をやってるんだオマエは!!」
新「靖友が好きなんだ!!」
福「なっ!!」
新開の告白に驚愕する福富。
新「好きなんだよ!!靖友が!!好きで好きでたまらないんだ!!」
福富の手を振りほどいて叫ぶ新開。
新「自分が選んだわけでもない人と誰が結婚なんかするかよ!!そんなことまでしなきゃいけねぇならチャリなんかもう乗らねーよ!!」
福「新開……オマエ……」
普段温厚な新開が、目の前でこんな怒り心頭な姿を見せるのは初めてで、面食らっている福富。
新「……ごめん寿一」
新開は深呼吸して落ち着こうとしている。
新「高校で初めて会った時からさ、好きなんだずっと。何度も何度も諦めようとしたけど無理でさ。……近くに喫茶店建った時は、嬉しかったぁ……」
福「……」
新開は悲しそうな笑顔で続ける。
新「けど……何回もプロポーズしてんのにさ。全然本気にしてくれなくてさ。しまいにゃもう店に来んなって言われたよ。……その上、無職になっただなんて……ははっ。フられて当然だよな」
福「オマエ達……」
新「でもさ……。オレが結婚したいのは、靖友だけなんだ。靖友じゃなきゃ嫌なんだ。靖友さえ居てくれたら、オレは何もいらないんだよ……」
泣きそうな顔で項垂れる新開。
福「……ハァ」
福富は首を横に振って溜め息をついた。
福「オマエ達は、なんてハタ迷惑なバカップルなんだ」
新「え?」
福富のセリフの意味がわからない新開。
福「こうなった以上、荒北との約束は無効だ。来い!新開」
福富は新開の腕を掴んで引っ張って行く。
新「寿一?どこ行くんだよ」
タクシーで救急病院へ着いた福富と新開。
福富は車中で全てを新開に話した。
新「靖友……」
しかし、荒北のベッドは空だった。
看護師の話では、勝手に点滴を抜いて帰ってしまったらしい。
福「ム……」
新「店に行ってみよう」
喫茶チャリダーへ着いたが、明かりはどこも消えている。
入口には“しばらく閉店します”という貼り紙があった。
裏口も鍵がかかっている。
福富は荒北のスマホに何度も電話をかけるが留守電のままだ。
新「靖友のビアンキが無い……」
福「まさか……アイツ、こんなに早く……?」
顔を見合せる二人。
福「空港だ!急げ!」
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