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【BL二次小説(R18)】 卒業旅行③
ドクンドクン……。
新「……」
東「……」
新開は真っ青になり目が泳いで冷や汗を垂らしている。
どう答えて良いかわからないまま沈黙していた。
その沈黙を肯定ととらえた東堂は話し出す。
東「……まぁ、フクは気付いておらんから安心しろ」
新「……」
東「実はな隼人……」
東堂は頭にバスタオルを被ったままソファーに座って息を吐いた。
東「オレも、居るのだよ。好きな男が」
新「靖友はダメだ!靖友は渡さないぞ!」
東「……」
新「……」
必死の形相の新開を見て、呆れて苦笑いする東堂。
東「違うわ馬鹿者。……巻ちゃんだ」
新「巻島くん……か」
ホッとする新開。
東堂は背もたれに頭を掛け、遠い目をする。
東「まだ告白はしておらん。だが巻ちゃんも気付いている筈だ」
新開はベッドの上にあぐらをかいた。
新「だったら……卒業旅行はアメリカじゃなくてイギリスにすれば良かったじゃないか。ついでに会いに行けたのに」
東「いや……」
東堂はフッと笑った。
東「勇気が無いのだよ。……フフフ、自信過剰なこのオレがな。自分の気持ちに気付いてから、臆病になってしまった」
新「尽八……」
東「以前はストーカーのように電話をかけまくっていたオレだが、意識するようになってからは頻度が減った」
新「ストーカーの自覚あったんだ」
東「隼人よ」
東堂は頭を起こし、新開を見やる。
東「貴様達が羨ましい。喧嘩したとて、傍に居られる。たとえ大学が離れ離れだろうと、国内だ」
新「……」
東「……イギリスは……遠い。……とても……」
新「尽八……」
東堂は天井を仰いで溜め息をつき、目を閉じた。
新「まさか、尽八と恋バナになるとはな」
東「フッ。旅先ではついつい口が軽くなるものだ」
苦笑する東堂。
東「貴様とはファンクラブの会員数を競ってきたライバルだったが……ハートを射止めたのはお互い予想外の相手だったな」
新「おめさんが勝手にライバル視してただけじゃないか。オレは最初から靖友しか目に入ってなかったよ。初めて出逢った時からね」
東「初めて出逢った時から……か。……オレもそうだったのかもしれんな……」
新「……チャリを続けていれば、またいくらでも巻島くんに会う機会はあるさ。まずは国際大会に出られるよう実力をつけようぜ」
東「そうだな……その通りだ隼人よ。巻ちゃんに会った時に恥ずかしくないレベルになっておかねばな」
東堂はソファーから立ち上がった。
東「ありがとう、隼人。聞いてもらって気が楽になった。……今まで誰にも話せなかったのだ」
新「オレで良ければいつでも聞いてやるよ」
新開は東堂にバキュンポーズをした。
東「隼人」
新「ん?」
バスタオルをハンガーに掛けながら東堂が言う。
東「明日は荒北と同じ部屋になれ。メンバーにカップルが居ると知ったからには別々にするなどあり得ん。幹事命令だ。わかったな」
新「……サンキュー尽八。けど、靖友がなんて言うか……」
うなだれる新開。
東「それは貴様が自分で説得しろ。そこまで面倒見きれるか」
新「……ははっ。頑張るよ」
それぞれの想いを吐き出し、1日目は終わった。