
【BL二次小説】 勇者ヤストモの冒険⑭
荒「……」
地面に突き刺さったマスターソードを無言で眺める荒北。
石にされた福富達の足が元通りになる。
福「!」
東「足が!」
新「治った!」
ウ「ピーー!」
キングウサ吉も石化が解けたようで、新開に飛びついてきた。
新「ウサ吉!無事だったか!良かった!」
ウ「ピィピィ!」
抱き合う新開とキングウサ吉。
荒「……」
仲間達の方をゆっくり見やる荒北。
放心状態で、まだ実感がわかないようだ。
福「荒北!」
東「荒北!」
新「靖友!」
ウ「ピィ!」
仲間達が荒北に駆け寄る。
新「靖友ーーっ!」
荒北に抱き付く新開。
荒「痛てェ!痛い痛い!!」
飛び上がる荒北。
福「荒北は怪我だらけだ」
東「早く回復を」
新「あ……」
新開は慌ててウサギ達を呼び寄せた。
ウサギ達にモフモフされながら荒北は新開に尋ねた。
荒「新開……。なんで最初っからギガンテス出さなかったんだ」
東「そうだぞ。貴様はウサギしか使えないのだと思っていた」
福「あんなすごい技持ってたんじゃないか」
新「ああ、ギガンテスは……」
新開は少しはにかみながら言った。
新「怒りゲージがMAXになった時しか使えないんだ」
荒「……」
東「……」
福「……」
いつもヘラヘラして温厚な新開を怒らせたら一番怖いのだと解って全員が青くなった。
京都伏見山に立ち込めていた禍々しい雲が徐々に晴れていく。
祭壇に陳列されていた御神体達が次々と空に舞い上がり、それぞれの村へ帰って行く。
その光景は、まるで夜空に降り注ぐ流星のようだった。
新「綺麗だな」
空を見上げて新開が言う。
荒「……終わったんだな、本当に」
東「なんだ、貴様まだ実感してなかったのか」
福「オマエがトドメを刺したんだぞ」
荒「なんか……力抜けちまった」
新「おめさんが世界を救ったんだぜ。カッコ良かったよ靖友」
荒「よせやい」
体力が回復した荒北は、立ち上がって仲間達を見渡して言った。
荒「勇者といっても、オメー達仲間が居なかったら何も出来なかった。魔王を倒せたのはオメー達のおかげだ。危険な目に合わせてすまなかった。ホント、感謝してる」
新「靖友……」
福「勇者が何を謝っている」
東「そうだぞ。勇者はもっとドヤ顔していろ。オレのように」
照れ臭さそうに首の後ろを掻きながら続ける荒北。
荒「勇者の使命は終わったが……これからも仲間として……交流してくれるゥ?」
新「当たり前じゃないか靖友!」
福「生死を共にしたんだ。これ以上強い絆があるか」
東「オレ達は一生親友だ!たとえ別の世界線とやらがあったとしてもな!」
4人は誰からともなく手を出し合い、硬く握り合った。
荒「よっしゃ!ンじゃ帰っか!」
全員が立ち上がる。
荒「みんなウチの箱学村に寄ってくれ。ジジィがきっと盛大な宴の準備して待ってっからァ。なんならそのままウチの村に移住してくれて構わねェぜ」
新「それ乗った!」
バキュンポーズで答える新開。
福「箱学村か。なかなかそそる名前だ」
その気になっている福富。
東「可愛い村娘は多いのだろうな!それなら移住してやらんでもないぞ!」
完全に移住する気の東堂。
4人はロードに跨がり、京都伏見山を後にした ──。