創作短編『浮気三昧された女房の話』④番外編「女友達は腐ったリンゴの香りがする」。。。🥺💘
朝のウォーキングで出会ったあの人とあんなにも上手くいっていたのに冬子のいつもの酒癖の悪さで二人の関係はぶち壊われた。
朝の6時を回ってもまだ当たりは真っ暗、それでも毎朝あの人と会うのは辛いけど会わない方がもっと辛いから冬子は寒さが刺さる朝も歩き続けた。
最近では会っても目を合わすことさえなくなった…
そんなある朝、見覚えのある顔が彼の横にあった。
万里江である。
なんで万里江が、、、
それも親しげになんで並んで歩いているの!
二人は冬子とは反対方向から道の反対側を歩いて来た。
万里江は冬子に気付き、微かなぎこちない笑みで冬子に手を振ってきた。
どういう心境なのだろう⁉️
冬子は一旦躊躇したが軽く手を振り返したが笑みは作れなかった。
そして視線をあの人に移すとあの人は前を見据えたままだった…
深い絶望の縁に落とされた瞬間だった。
そこから足が前に進まない。動けなくなった体が一瞬その場に硬直した。
振り返ることも出来ず、全身の力を振り絞って前へ一歩踏み出した。
数ヵ月前に冬子はあの人に夢中であの人のことを何度となく万里江に話していた。
万里江は感心無さげに私の話を聞いているのか聞いていないのかの生半可な返事をするだけだった。
それからひと月が過ぎた頃に、万里江があの人を見つけたので道の反対側にわざわざ渡り、あの人に自分から「おはようございます」と声をかけたという。
まずその行為に驚き、冬子はえらく傷付いた。
万里江は日頃からなんでも冬子の真似をし、服を買えば同じものを探し、同じ物がなければ似たものを探してきては冬子に報告した。
初めのうちはいいと思って真似するんだなぁと思っていたが度を越すとそれは不快以外の何物でもなかった。
いつの間に…
あんなに親しくなったのだろう。
渦巻く嫉妬は冬子の心を掻き乱すのであった。
万里江は冬子より2つ3つ若く、さぞや若い時は愛くるしい女性だったのだろうと思わせる片鱗がそのあどない顔に残り、どちからと言えば、凄い美人ではないが男性に好まれるタイプだろう。
軽いショートヘアの癖毛は愛らしさを際立たせていた…
さぞや満足しただろう…
冬子は話してはいけない相手だったと今頃気付いたのである。
冬子が誰にも取られなくないと思っていたあの人を知らぬ間に横取りされたのだから…
万里江は満足しただろう。冬子から一番大事なものを奪ったのだから、、
でも冬子は知っていた。万里江の飽き性な性格を…
万里江はあの人が好きだったのではなく私の物だから欲しただけ。
冬子は一瞬動けなかったが、大きく深呼吸をして前を見据えた。
なぜならそれが本来の冬子だから。
その後、冬子らしく新たな一歩を踏み出したのだった。。。
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