C向けプロダクトで大事なことは、Zenlyから学んだ
こんにちは、@macyamazaki_ です。
Zenly はフランス🇫🇷 発で、みなさんご存知アメリカを含む全世界でヒットしている位置情報シェアプロダクトです。
日本でも10代~20代のユーザーを中心に熱狂的に使われています。
しかし、残念なことにZenlyアプリはサービス終了すると親会社のSnap社が発表しました。
調べれば調べるほど、プロダクト開発では鉄則と呼ばれることを粘り強く実行して成功したことが分かります。
このnoteでは以下の英語のCEOインタビューやフランス語の動画/記事から学んだことをまとめていきます。
🎥 B2Secrets with Antoine Martin, CEO at Zenly ★ おすすめ動画 2時間
🎥 Zenly's Antoine Martin on Next-Level Location Sharing at Disrupt London 2016 20分
📜 Cut down turnaround times and drive support efficiencies : Zenly
🎥 [APPDAYS 2016] Zenly, our path to 2 billion users - Alexis Bonillo
個人的にもC向けプロダクトを考える上でお手本になると思っていまして、日本のスタートアップが、グローバル向けのプロダクトを作る上でも参考になる事例だと思います。
この記事で述べることのまとめ ↓
🍭 Zenlyとは
Zenlyはフランス🇫🇷 発のSNS + 位置情報共有アプリです。2014年にAntoine MartinとAlexis Bonilloが共同創業し、以来アプリのダウンロード数が5000万件を超えています。
2017年にスナップチャットを運営するSnap社に約300億円で買収され、Snapchat アプリ上に「スナップマップ (Snapmap)」という機能が生まれました。
Zenlyの前身プロダクト : Alert.Us
Zenly が生まれる前は、「Alert.Us」という位置情報サービスを4年間ずっと作っていました。この Alert.Us をピボットさせてZenlyが誕生しました。
Zenly は、「Alert.Us」という親がスマホでこどもの位置情報を確認できる、親子用のトラッキングアプリをピボットさせて誕生しました。
Alert.UsではZenlyにも繋がる2つの重要な機能をすでに実装していました。
❶ リアルタイム位置情報共有機能
当時、競合の位置情報シェアアプリは、現在位置の記録を毎回 "手動で" 行う必要がありとても面倒でした。
Alerty.Usは 自動で位置情報がアップデートされる仕組みを導入し、子供が毎回位置情報を手動で入力しなくても、親が確認できるようになりました。
❷ バッテリーを極度に消費しないアルゴリズム
位置情報をリアルタイムで共有すると、当然ながら端末のバッテリーの消耗が激しくなります
そこで約10人の専門家を集めて2年間かけて位置情報共有アルゴリズムの最適化を行いました。
Zenly MVPの作成 : "小さく試す"
開発期間1~2ヶ月で簡単なZenlyアプリをMVPとしてApp Storeに配信しました。そして仕事仲間や友達など身内だけを招待しました。
創業者たちが気づいた頃には、招待していないユーザーにまでアプリが自然と広がっていました!
特に、友人間でのグループなどでの小さいコミュニティごとにプロダクトがバイラルしていったことが判明したのです。
ZenlyはこのMVPを通して最初の3ヶ月間でユーザーの「友達の居場所を知りたい」というシンプルなニーズに気づきました。
これをきっかけに、「ユーザーは身内であればプライバシーを気にせずアプリを使う」という新たな仮説を立て、検証することにしました。
後にこの仮説が、特に若者(13歳〜20歳)に当てはまることが判明し、Zenlyの利用者数が急増したとのこと 🚀
🍟 ユーザーの声を聞け
Zenlyでは、創業当時から毎週水曜日にマックなどの若者が集うファストフード店に行き、列の前に並ぶ若者のランチを奢る代わりに15分間だけ時間をくれないかとユーザーテストに誘っていました。
若者たちには主にオンボーディングの動作を確認してもらい、彼らのアプリに対する率直な感想を聞くのです。ユーザーテストは後から振り返られるよう必ず録画していたそうです。
このユーザーから生の声を聞く習慣のおかげで、常に若者の感性をプロダクトに取り入れることができているのです。
🧵 リテンションをみろ
Zenlyのプロダクトチームは、とにかくリテンションを大事にしていました。
その中でもオンボーディングが鍵を握っていると創業者のAntoine Martinは話しています。
そしてリテンションの結果的な指標として、毎週のDAU(デイリーアクティブユーザー)の成長率を6%以上 をグロースの目標と定めていました。
このKPIは創業期から変わらず数年間同じKPIとして定められていたそうです。
ユーザーインサイトを捉えた海外展開 & 日本・台湾での流行
🇺🇸 アメリカ参入
Zenlyがアメリカに展開する際、意図的にターゲット層を変えたことが成功の要因だと思います。
飲酒と運転ができる法定年齢(活動が活発になる年齢)に合わせて、
🇫🇷 フランス ・・・ 15歳以上の若者
🇺🇸 アメリカ ・・・ 20歳以上の若者
→ この様に、文化の違いを考慮する上での海外展開がプロダクトの利用率を更に高めました。
Zenlyはあえてアメリカでは高めの年齢層をターゲットにし、20歳~25歳が集まるようなミュージックイベントやコミュニティーにプロダクトを根づけました。
🇯🇵 日本での流行
フランスで流行したZenlyは、日本でも2018年ごろから大きなブームとなりました。その理由は以下の2つだそうです。
❶ 日本の住所は世界的に見て分かりにくい…
日本では、住所だけでどこかに辿り着こうとすると複雑で難しいペインが存在していました。
一方で、Zenlyでは住所を入力しなくてもアプリのマップ上にいる友達のピンへ歩いて行けば辿り着く というソリューションが刺さり日本での使用が広がりました。
❷ 日本の都市部の家は狭い → 外遊びが多くなる → 待ち合わせ需要増
特に都市部では家賃が高く、部屋や家のサイズが狭いのでティーン層の遊びは家の中ではなく、外遊びが主流になります。
外遊びの待ち合わせ需要が高いと、自然とZenlyが使われました。
一見エンタメプロダクトでありながら、ユーザーのペインを解決していたことが根強い人気を保ってきた理由だと思います。
そして日本でのPMFを実現する際に、日本語話者ではないZenly創業者がマックマクドナルドでユーザーインタビューするのは難しかったので、
Zenly CEO は日本人ユーザーの声をTwitterから拾い上げ、毎回ツイートを翻訳しながらユーザーインサイトを吸収していました。
🇹🇼 台湾でのバズは、日本人の留学生から生まれた
Zenlyは思わぬ理由で台湾で急激に普及しました。
発端としては、Zenlyヘビーユーザーの日本人の留学生たちが台湾へ交換留学をした際に、Zenlyを台湾の大学のクラス中に広めました。
その結果交換留学先の台湾の学校クラス全員にZenlyをインストールして、
その数週間後には大学全体がZenlyを利用し始め、😳
またその数週間後には台湾全土の大学生たちがほとんど利用し始めました 😳😳😳
それまでは台湾にはユーザーがほぼいなかったものの、Zenlyが既に流行っている国(日本)から来たユーザーによって自然とローカライズした脅威的な事例です。
☝🏻 所感
このように、ZenlyはC向けプロダクトの立ち上げ → PMF → 海外展開 まで1つのプロダクトから学ぶことができるので、非常に良質な学習コンテンツだと思っています。
プロダクトの作り方だけではなく、ZenlyはUIが洗練されておりアニメーションも盛り込んだ遊び心があるデザインが好きで、
「Push通知やオンボーディングをZenlyだとどんな体験に落とし込んでいるのか」のような問いを立ててアプリを何度も触ることがあって触るたびに学びがあるプロダクトでした。
個人的にはUS国外(🇫🇷 フランス発)からグローバルで成功した事例として研究しているプロダクトだったため、サービス終了は寂しいですし非常に残念です。
しかし、ここまで多くの学びをくれたプロダクト、Zenlyユーザー、Zenly開発チームに心から大感謝です 🙏