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三日坊主日記 vol.167 『異物』

マンションの上階からうちのベランダに変なものがぶら下がっている。


タネを明かすと、上階の住人がエアコンの設置工事をしていて、なぜか室外機から出た水を流すホースがうちのベランダへ垂れているのである。いやいやいや、下へ垂らさずに自分のベランダ内で完結しろよ。と思うのだが、これしきのことで苦情を言いに行く訳にもいかないんで、我慢するしかない。だけど、こんな天気のいい日はうちのベランダには洗濯物が干してあるのだ。洗濯物を汚してくれようものなら、どう落とし前をつけてくれるんだろうか。


こういう異物は、原因が分かっていてもよい気がしない。例えば、この細長いものがカメラだったらどうだろう。胃カメラのようにクネクネと遠隔操作で動き、自由に見たいものを見る。他人の部屋の中を隣人が勝手に覗いているとしたら、気持ち悪いでは済まされない。隙間や通気口を通って部屋の中にまで入ってきたらどうだろう。プライバシーも何もあったもんじゃない。まあ、うちには年頃の娘がいないので、見られて困るものはないんだけどね。


じゃあこの異物からなんらかの攻撃を受けたらどうだろう。例えば隙間から殺傷能力の高い毒ガスを撒かれたり、拳銃のようなもので撃たれたり。いや、そうじゃなくても不愉快な音楽が大音量で鳴ったり、上階の夫婦喧嘩(あるいは愛の囁きなんかも)を聞かされるだけでも十分ストレスである。


逆に良いことはないだろうか。幸運を孕んだ柔らかい空気のようなものが噴出されるとか、神のお告げが聞こえるとか。そんな訳ないし、良いことを考えても話しが面白くなりそうにないな、うん。


とにかく、こんなちょっとした異物が日常に割り込んできただけで、違和感があるしストレスでもある。これがもっと大きな力だったり、命を脅かされたり、自分たちではどうしようもできないことだったりしたら、どれほどの苦痛なのだろうか。


世界中の人が平和に暮らせますように。





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