三日坊主日記 vol.102 『紋を受け継ぐ十一代目 豊竹若太夫』
友人の奥さんが写真展(個展)を開いている。
義太夫節の太夫、十一代目 豊竹若太夫(豊竹呂太夫 改め)を追いかけた写真展だ。義太夫節の太夫というのは、いわゆる文楽の声の人。登場人物のセリフや気持ち、場所の描写や状況説明まで、三味線の伴奏と共に基本全てひとりで語る。
文楽といえば人形が注目されがちだけど、元々は人形芝居と、浄瑠璃(物語を語るように演奏する芸能)と別々のものだったのが、16世紀末にふたつが出会い、人形浄瑠璃として上映されるようになったそうだ。義太夫節も浄瑠璃のひとつで、その中の若太夫という大名跡を57年ぶりに襲名した方を撮っている。
この写真家はママさん写真家でアマチュアなんだけど、趣味で写真を撮っている割には何度も個展を開いて精力的に活動している。今回も自分からこの十一代目豊竹若太夫(豊竹呂太夫 改め)師匠に撮らせて欲しいとお願いし、延べ30日間も密着したそうだ。
そこまでして撮りたいと思った理由を幾つか聞いた中で、彼女自身も、そして僕の印象にも残ったのが、この師匠恩年77歳にして、今が人生で一番稽古していると自ら仰っているというところ。
これまでもずっと稽古し通しの人生だったと思うのだが、喜寿にして大名跡を襲名し、今が一番稽古していると言い切るエネルギー。そしてこれからもっと精進して、なんなら人間国宝になろうかというそのモチベーション。本当に素晴らしいと思う。ご本人にお会いしたことはないが、写真からその気合いというか気持ちは十分に伝わってくる。いつまでもお元気で頑張っていただきたい。
この師匠も写真家も、ほんとうにパワフルだ。僕ははたして77歳まで頑張れるのか。肖りたい。というか負けていられないのだ。