シネマクティフ東京支部の第32回東京国際映画祭ふりかえり その3
叫び声
ronpe 「じゃあ次は僕がいきます」
まる 「はい」
ronpe 「僕は一作挙げると、日本映画スプラッシュ部門『叫び声』です」
まる 「おー」
matsu 「ふーん」
ronpe 「matsuさん観てないと思うので説明していきますが」
matsu 「はい」
ronpe 「これは栃木が生んだ孤高の天才、渡辺紘文監督作です。渡辺監督は、主に音楽を担当している弟の雄司さんと映画制作集団 「大田原愚豚舎」を旗揚げ、栃木県大田原市で映画制作を続けています」
matsu 「へー」
ronpe 「その6作目が『叫び声』になります。『叫び声』は、けんす君、まるゆさんは観てましたよね?」
けん 「僕も観ました」
まる 「観ました」
けん 「僕が観た回がワールドプレミアでしたね(自慢げに)」
まる 「ふふふ(笑)」
ronpe 「そうですね。僕とまるゆさんが観た回が2回目の上映で」
matsu 「ちょっと聞いていいですか?日本映画スプラッシュ部門で日本映画だし、映画祭で観れなくてもけっこう一般上映で観れそうに思うんですけどそんなことはないんですか?」
ronpe 「それがねぇ、あまりやらないんですよ。。」
けん 「大田原愚豚舎はまず自主制作なんですよ。映画祭公開時はまだ一般公開の予定がなかったり。過去の作品も一般公開されていない作品がありますね」
ronpe 「2017年のTIFFで上映された『地球はお祭り騒ぎ』という作品とかは一般公開されてませんね」
matsu 「えー」
ronpe 「いまちょうどUPLINK吉祥寺で大田原愚豚舎作品の特集上映をやってて、そこで久々に上映させてますね」
matsu 「ふーん」
ronpe 「『叫び声』は6作目とさっき云いましたけど、2013年が『そして泥船はゆく』、2015年が『七日』、2016年が『プールサイドマン』、2017年が『地球はお祭り騒ぎ』、2018年が『普通は走り出す』、そして今年の『叫び声』という感じです。『普通は走り出す』のみMOOSIC LAB作品でTIFFで上映されていないんですけど、そのほかの作品はすべてTIFFで上映された作品です」
matsu 「あー過去に」
ronpe 「はい。2016年の『プールサイドマン』が作品賞を取ったこともあり、スプラッシュ部門の申し子的な存在と云われたりもしてます」
matsu 「なるほど」
ronpe 「僕は『七日』以外の過去作を観た状態で『叫び声』を観たので、
ある程度は大田原愚豚舎作品はこういうものだ、という認識があって新作を観たんですけど」
けん 「うんうんうん」
ronpe 「いくつか、これぞ渡辺紘文監督作!という要素があるんですけど、
画面がモノクロであったり、おなじみの場所が出てきたり、繰り返しであったり。その中の「繰り返し」という要素をすごく強調したのが『叫び声』という作品だった印象です」
matsu 「ふーん」
ronpe 「話としては豚舎で働くひとりの男の一週間を追う、だけの内容なんですけど、主人公を演じているのは渡辺紘文監督自身で、渡辺監督は他の自作にもよく登場していて、作品によってはものすごくおしゃべりな役を演じているんですけど」
matsu 「へー」
ronpe 「今回はまったくセリフなし。もう生活を、豚の世話を淡々と描いていて。そこに音楽と、豚のなきごえと、あと強烈な風の音なんか重なってきて。その映像と音のリズムがとても良かったです。上映後Q&Aで、司会の矢田部さんがタル・ベーラの名前を引き合いに出してましたが、まぁ『ニーチェの馬』だと思うんですけど、モノクロだし、なるほどって感じもあります」
まる 「ふーん」
ronpe 「大田原愚豚舎作品は、さっきも云いましたけど、TIFFと日程をあわせるようにUPLINK吉祥寺で特集上映がされていて、僕が先ほど1作だけ観れていない、と云っていた『七日』という作品をTIFFが終わってから観たんですよ。内容的には豚舎でなく牛舎になっただけで『七日』と『叫び声』はほぼ同じなんです」
matsu 「へー!」
ronpe 「ただですね、これは比べて観ればわかるんですけど、圧倒的に『叫び声』の完成度が高いんです」
けん 「ふーん」
ronpe 「『七日』の上映時間が110分だったのに対し、『叫び声』は75分。可能であれば『七日』を観てから『叫び声』を観たかった、というのが本音ですけど」
けん 「それは難易度の高い「可能であれば」ですね」
まる 「ふふふふ(笑)。しかも唯一観れてなかったやつがこれという」
ronpe 「でもこの見比べは面白かったです。これで長編は全部観れたし」
けん 「いいですねぇ。作家性が強烈ですしね。面白いですよね、連続で観れると」
matsu 「これだけ評価されてるのになんでもっと上映されないんですかね?」
けん 「これは僕がトークで聞いたんですけど、大田原愚豚舎作品はTIFFで上映されると毎回もれなく途中退場者がいるそうです」
matsu 「え?」
けん 「『七日』に関しては途中退場者が出すぎたという。。」
matsu 「ええ?そんなのあまり聞いたことないですけど」
ronpe 「『七日』上映時はすごかったらしいですね」
matsu 「それは映画がつまんなくてってことですかね?」
けん 「そう感じる観客もいるってことでしょうね」
matsu 「(映画の解説を見て)「何も起こらない七日間」て書いてありますね」
けん 「基本的に何も起こらないんですよ。でも映画の画面に出てないところもあるし、文法とかの使い方もあるし。他の映画では観たことないものがありますよ」
matsu 「へー」
けん 「比較対象がない感じがしますよね」
matsu 「すごいですね。賞もとるけど、つまんないという観客もいっぱいいるって」
けん 「僕は『叫び声』と『プールサイドマン』しか観てないですけど、『プールサイドマン』は抜群に面白かったですね」
matsu 「それはどういう面白さなんですかね?」
けん 「僕が極端なものが面白いと思っているんですけど。ざっくり云うと「静」と「動」。この2作の印象はけっこう違いますね」
ronpe 「あと『プールサイドマン』に関してはジャンルがスリラーの方向にふってあるので、観やすいというのはあるかもしれませんね」
matsu 「あー。でも寝ちゃいそうだな」
ronpe 「うん。『七日』と『叫び声』は「寝ちゃいそう」なやつだと思います」
matsu 「寝ちゃうなこれ(笑)」
ronpe 「寝て目が覚めても次の曜日になってるぐらいだと(笑)」
まる 「私もちょっと寝たと思う」
(続く)